マンマ・ミーア!

演出=フィリダ・ロイド
訳詞=浅利慶太
作詞曲=ベニー・アンダーソン
      ビョルン・ウルヴァース

ルビ吉観劇記録=2002年11月(東京)
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【このミュージカルについて】
 全編アバの音楽だけを使ったミュージカル。数多いアバの曲の中から22曲を選び、並び替え、そしてひとつのミュージカルに仕立て上げている。驚くべきは歌詞のほとんどを変えずに、選ばれた22曲だけでひとつのストーリーをきっちり作っているところ。アバの曲が日本語に訳されて歌われるというのも、画期的。初演は1999年ロンドン。日本公演は電通四季劇場「海」の柿落とし。
【物語と感想】
 エーゲ海に浮かぶ小さな島。そこにある小さなホテル。オーナーはドナ。彼女が女手ひとつで育ててきたひとり娘ソフィは、結婚を間近に控えている。ソフィには結婚を機に、どうしてもはっきりさせておきたいことがあった。それは自分の父親が誰であるのか、という出生の秘密。過去のことを話したがらない母親に尋ねることも出来ず、ソフィはドナの古い日記を盗み見る。そして彼女は、自分の父親として考えられる3人の男の名前を見つけてしまう。サム、ハリー、ビル。
「この3人に会えば、きっと直感で誰が本当の父親かがわかるはず!」
「お父さんを見つけて、バージン・ロードを一緒に歩いてほしい!」
そう思ったソフィは、サムたちに結婚式の招待状を送るのであった。
 結婚式前日、島にはソフィの結婚を祝う者達が次々に現れる。まず現れたのはターニャとロージー。彼女たちはかつてドナと一緒にロックバンドを組んでいたメンバー。そしてソフィから招待状を受け取った父親候補の男たちも次々に到着。何も知らないドナは、娘の結婚式の前日という大事な日に、昔、関係のあった男たちが揃いも揃って現れたことに大パニック!落ち込むドナを慰めるターニャとロージー。その一方でソフィーは3人の男たちに接触し始める。やがてその内のひとりに父親である確信を持つのだが…。最終的にバージン・ロードでソフィをエスコートするのは誰?!

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 楽しいです!とにかく楽しいミュージカルです。しかし、そもそも俺はアバが好き。ここで使われる曲なども若い頃から何度も何度も聞いた曲ばかり。そういう意味では、純粋にミュージカルとしてどうなのかは正直わかりません。「楽しい!」と言ってのけるのも、アバの曲をライブで聞くことへの感動なのかもしれないし…。でもそんなことは置いといて、俺はこのミュージカルを今年イチバンの作品として位置付けましょう。
 懸念されていた訳詞問題。浅利さんは時々びっくりするくらいダサーい言葉を音楽に乗っけますが、俺は今回はさほど気になりませんでした。耳に馴染んだポップスに日本語詞を乗せいてくこと自体は、デンジャラスな作業だと思います。人々がその歌に持っているイメージを傷つけかねないですから。日本語に訳して歌ったら寒かった、とはよくある話ですよね。でも今回はミュージカル。ストーリー展開の中で歌われて行くので、日本語詞も自然に受け止めることが出来たように思います。
 歌に関することを除き、また俳優に関する感想は下に書くとして、『マンマ・ミーア』の素晴らしいところを挙げるとしたら、舞台美術にも感動しました。上手く伝えられませんが、セットに使われている塗料には何か仕掛けがあるのでしょうか?照明と相まって、とても不思議な発色をするのです。床の照明も楽しく、そして美しい。いたってシンプルなセットしか組んでいないのですが、ちゃんとエーゲ海の島という雰囲気がするのは、セットで場所を表すというよりも光や空気感でそれを伝えてるからでしょうか。俺はいたく感服しました。

 さて、『マンマ・ミーア』といえば海パンもっこりシーン(笑)!思ってた以上にピッタリフィット系の海パンでした(但し、ボックス型)。一応は竿の形もわかりますが、亀頭のくびれまではわかりません(笑)。このシーンは一幕の中ほどで登場します。二幕でも同じ海パン姿はあるのですが、股間は堪能できない仕組みになってます。ただ二幕冒頭では、ビニール系素材の海パンを穿いた男たちが(女も)大挙して登場します。こちらはブラックライトを使っているため、やはりもっこり観賞はあまりできません。但しソフィーの近くにいる俳優のみ、角度によっては一部もっこりが露に…。是非、目を皿にして探してください(笑)。
【ルビ吉の気に入ったナンバー】
マンマ・ミーア…ドナが三人の男たちを見つけてうろたえる場面。ドナとしては、まさしくマンマ・ミーア!楽しい場面ですが、タイトル・ソングがつかみのようなシーンで登場してしまったのが意外でした。
チキチータ…落ち込むドナに、古くからの友人ターニャとロージーがそっと寄り添い、励まし元気付ける場面。暖かい友情が嫌味なく描かれていて、心が和みました。それにしても「チキチータ」という歌が、こういう歌詞だったとは初めて知りました。
ダンシング・クイーン…元気を取り戻したドナ。かつて自分たちがスターだった頃を思い出して、ドナ、ターニャ、ロージーは、久しぶりに3人で歌を歌いハジけます。アバ最大のヒット曲は、予想外に早いタイミングで登場します。もちろんカーテンコールでも歌われますよ。
スーパー・トゥルーパー…結婚式前日に行われる女性だけのパーティー。そこでドナたち3人は一夜限り、1曲限りのコンサートを開きます。俺がアバの歌で最も好きな1曲です。一幕の見せ場かもしれません。
アイ・ハブ・ア・ドリーム…最終場。新しい人生に向かって、ドナのもとから旅立っていくソフィーが歌います。「私には夢があるから、どんなことでもやっていける」といった内容でしょうか。『マンマ・ミーア』はソフィーのこの歌で幕を開け、この歌で幕を閉じます。

「お気に入りのナンバー」という括りで、歌をピックアップするのは難しい…。どの曲も好きだし、思い出があるし。というわけで、今でもシーンごと蘇る5曲をピックアップしてみました。
【ルビ吉の俳優雑感】
保坂知寿(ドナ)…もう見飽きたと思う一方で、ドナにはピッタリのキャスティングと言わざるを得ない。昔はスターで、今は小さなホテルを切り盛りしている“働くオバサン”。普通のオバサンよりは少しとんがっていて、でも娘に対しては母としての愛情をちゃんと持ち合わせ、また女を捨てている風もない。そんなドナの役どころを心情まで含めて、深く掘り下げているように思えました。主役の芝居がちゃんとしていればこそ、他愛ないストーリーでも我々に感動を与えるものなのです。
樋口麻美(ソフィ)…フレッシュな魅力はあります。歌も上手いし、ダンスもOKでしょう。でも芝居がとても平坦に思えました。感情が伝わらないから、ソフィーのキャラクターがあまり見えてこない。もともとそういう設定なんですかねぇ?今回見た限りでは、なんとか保坂さんの芝居に引っ張ってもらって、なんとかソフィを成立させていたようにしか見えませんでした。
森以鶴美(ターニャ)…コメディ・リリーフの役どころがターニャ。美味しい台詞もたくさん用意されてます。森さんは粗目のお色気役を演じたら天下一品!おそらく観客の多くが彼女の持ち味を好きになることでしょう。『コーラスライン』のシーラ同様のハマリ役になるのでは?注目ですよ。ターニャの役どころを知った今となっては、ダブル・キャストの前田美波里が森さんと同等の魅力あるターニャを演じられるのかが疑問に思えてきました。
青山弥生(ロージィ)
…在団歴が長いせいか、俺も色々な役でやよいサンを見てきましたが、今回はかなり珍しいレパートリーでは?どこからどう見ても単なるオバサン。こういう人、周りにもいるよねってくらい普通。また背丈の小ささが、普通のオバサン感に拍車をかけてます。『ライオン・キング』ではラフィキを、『オペラ座の怪人』ではメグ・ジリーを演じていることを思えば、彼女の芸域の広さには驚かされますね。
阿久津陽一郎(スカイ)…ソフィの婚約者。海パン姿を披露する役でもあります(笑)。俺はコイツの顔が好みじゃないので、スカイ役は断然、田邊真也クンで見たかった。今回、阿久津に関しては股間しか見なかったので、芝居やら歌やらダンスなどは印象なし!ごめーんね。
芝清道(サム)…ソフィーの父親候補その1。相変わらず辛気臭い雰囲気でした。その他の特記事項はナシ。なおこの役はトリプル・キャストで狩人のお兄ちゃん、荒川務が組まれてます。
八巻大(ハリー)…ソフィーの父親候補その2。八巻自体は印象なし。
野中万寿夫(ビル)…ソフィーの父親候補その3。存在感のある人だけど、特に何も。