ボウイと映像

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京都に住んでいた頃,枝垂れ桜で有名な八坂神社の前にある祇園會舘で一度だけ映画をみた。その映画は「風が吹くとき」レイモンド・ブリッグス原作の反核アニメ映画で,このタイトルトラックをボウイが歌っている。ガラガラだったが,私の斜め後ろぐらいに座っていた場違いの営業マン風の二人が,ボウイの曲のなっているときに「この音楽がイマイチやなあ」などといっていた。私はそんな言葉とは無縁に大音響で聴ける限りある時間を森林浴のように楽しんでいた。

「スノーマン」もまた私のお気に入りのアニメだ。うれしいけど悲しい少年とスノーマンの夢の物語。音楽も美しい。この映画の冒頭でマフラーを持ったボウイが出てくる。映画館でもみたような記憶があるが、まるでこの話のようにフワフワしていてビデオだったのかどうだったのかよく思い出せない・・・「風が吹くとき」と重なってるかも知れない。

実話をもとにした「クリスチーネ・F」のなかの薬中毒の少女はボウイの大ファン。自分の部屋の壁にはポスターが所狭しと貼ってある。この映画の中でボウイはステージ上で感動的に「ステーション・トゥ・ステーション」を歌う。全編を通してボウイの曲がたくさんかかる実にうれしい映画だ。ドイツへ行ったときこのサウンドトラックを買ってきた。ヨーロッパではボウイは大スターなのが妙にうれしかった記憶がある。15年前の話だが・・・

焼酎がまだ市民権を得ていなかった頃、タカラのCMに彼が登場。なんと電車のぶら下がり広告になってしまった。これにはショウミ驚いた。このテーマに使われた「クリスタル・ジャパン」はインストルメンタル。題名とは裏腹に非常に重いサウンドでスピーカーのコーンが破れそうだった。ともあれかくの如きCMを企画した某氏に感謝する。この広告は今も大事にとってある!? オフでsumireさんが所持していたCMの映像を見せていただいた。いやー懐かしかった(99/07/20)

テレビの前でいままで一番興奮したことは間違いなくこの瞬間だった。折しもロックの世界でチャリティ,エイドものが全盛の頃,あるイギリスで行われたコンサートの最期のメインイベントで紹介されたビデオクリップは超企画モノでミック・ジャガーとの競演の「ダンシング・イン・ザ・ストリート」だった。パワーではサスガに圧倒されていたようだが、パフォーマンスとかっこよさではボウイの方が一枚上手だった。ロイヤルボックスの席が似合うのもやはりミックよりボウイの方だろう。

フレディ・マーキュリーの死は衝撃的だった。彼はクイーンの中心的メンバー。私にとってはレノンの死よりもはるかに重たかった。「アンダー・プレッシャー」はボウイとの共作でいわば遺品となってしまった曲。後に白人のラッパーがカバーして大ヒットさせた。彼の「追悼コンサート」のビデオをみた。ポール・ヤングや、ジョージ・マイケルが盛り上げ、舞台の最期を締めくるのがボウイだ。ステージにひざをついて祈るそのシーンは感動的。誰にも出来ない役をボウイはスマートにやってのける。

BBC放送の番組で「バール」に主役として出演したらしい。ヒゲもじゃでギターモドキの楽器を抱きしめた危ない男のようだ。最後は追いつめられて絶命するストーリー。アルバムは持っているが映像を見てみたい。

ボウイの映像の中でももっとも異色なのが間違いなくこれ。ビング・クロスビーと一緒に歌ったクリスマスソング「ピース・オン・アース」。老人を優しくいたわるようなボウイの仕草に感動する。伸びやかなボウイの声と暖かい低音のクロスビーの声が何とも言えず心地よいハーモニーになっている。この収録の数週間後、彼はこの世を去った。B面となった「Fantastic Voyage 素晴らしき航海」は彼の死をしてさらに心に響く。

「戦メリ」のなかで花を丸かじりして食べたボウイ。荘厳な音楽の中,首まで地面に埋められた彼の最期。その姿に最敬礼するサカモト。感動で胸が張り裂けそうになるシーンだった。髭を剃るパントマイムも絶好のファンサービス。撮影中にサカモトとボウイはいったいどんな会話をしたのだろうか。このタイトルトラックはヨーロッパでお昼を告げる教会の鐘の音にも使われたという。ある年、香港でクリスマスを迎えたときテレビでこの映画をやっていたのを覚えている。日本でなぜやらないのか。

私は残念ながら「エレファントマン」がどんな舞台だったのかを知らない。まれにみるインパクトある主人公を演じて退屈するはずはないのできっと素敵なステージだったことだろう。その映像がデジタル化される日を待ちたい。ジョン・ハート演じる映画の方も素晴らしかった。 モノクロの映像でありながら、舞台の美しさがカラー以上に伝わってくる演出。何よりその環境からは想像もし得ないメリック青年の純真な心は奇跡といえる。これほど心を揺さぶられた映画は他にない。 これまたオフ会でspacemanさんの秘蔵ビデオで一端を見ることが出来た。声の発生や身のこなし、ブロードウェイでの高い評価がはじめて理解できた。(99/07/20)

ジョージ・ルーカスの「ラビリンス 魔境の伝説」でも楽しませてくれた。ほとんど人間が出てこない映画だったけど,ジェニファー・コネリーの美しさも際だっていた。水晶玉を操る奇妙な大王役をやっていた。サントラ盤も半分はボウイの書き下ろし。聞き直してみるとこれがどれも素晴らしい出来だ。サントラというと一般には何か対象外という感じを受けるがここでは当てはまらない。バック・ボーカルにチャカ・カーンらを迎えた「アンダーグラウンド」そして心躍る「マジック・ダンス」、十分に独立したシングルとしての存在感がある

「アブソルート・ビギナーズ」で権力者の役を演じている。主役のカメラマンの若者が若い頃のボウイによく似ている気がした。夢を追い続ける10代の物語。またパット・メセニーグループとの共作「ディス・イズ・ノット・アメリカ」も映像がらみだが詳しいことは知らない。

「キャットピープル」はナスターシャ・キンスキーが豹に化ける妖艶なホラー映画。主題曲はジョルジオ・モロダー。いつもながらの彼の素晴らしいメロディをボウイが歌い上げる。ボウイの低音から高音にのびる歌声は,シンガーとしての実力を垣間見る瞬間だ。なおこの曲は後にアルバム「レッツ・ダンス」でボウイがアップテンポに書き換えて再登場する。

ローラはなぜ死んだのか・・・「ツイン・ピークス」はビデオで15本もあるテレビドラマ。美しい田舎の中で起こるオカルト殺人。奇才デビッド・リンチ監督作品。後に映画化されるが,その冒頭にボウイが役者として出演する。ちょっと狂気を帯びた感じで非常に心に残る魅惑的な音楽が包み込んでいるが音楽は担当していない。リンチ監督お気に入りの女性シンガーが出てくるが彼女のステージは実に素晴らしい。

「セブン」はブラッド・ピッド,モーガン・フリーマンの猟奇殺人作品。どぎついラストですごい反響のあった問題作。実はこの映画のラストタイトルにボウイの曲がかかる。「ハーツ・フィルシー・レッスン」それまで記憶の片隅にあった曲だが,それ以来繰り返して聴くうちにひどく気に入ってしまった。モーガン・フリーマンがいぶし銀のよい味を出している。ブラッド・ピッドのワイルドさとが好対照で見事にバランスがとれていた。96年のベストスクリーン。 

主なボウイの出演映画 「地球に落ちてきた男」1976年 「ジャスト・ア・ジゴロ」1978年 「ハンガー」1983年 「戦場のメリークリスマス」1983年 「ラビリンス」1986年 「ビギナーズ」1986年 「ツインピークス」1992年

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