住宅の設計は手間がかかり大変ですが、その分得られる喜びも大きく、
この楽しさを一度知ってしまった設計者は、やみつきになってしまいます。
住宅の設計が好きで楽しいと思っている設計者と、
沢山の夢や思い入れを持っているお客さんとの、
良い関係が成立すると、、予想以上に素敵な建物になってゆきます。
設計の依頼を受けてから長いプロセスの中で、その様な楽しくて嬉しい経験を、
色々な形で体験してきました。いくつか思い出してみます。
独立して最初の住宅設計の依頼の時のことです。
初めての仕事ですし、わからないことも多く、一生懸命進めて行き、
竣工にいたり、お客様にゆっくりと見て頂く、日が訪れました。
お客様ご夫婦はとても喜んでくださり、何十回も「ありがとうございました」と
言って頂けました。
本当にうれしそうに、何度も何度も、ありがとうと言ってもらえ、
設計をして本当に良かったと、感じました。
独立したばかりで、将来もこの仕事を続けていけるか不安に思っていましたが、
この経験をして、一生続けていけると実感しました。
竣工にいたるまでには大変な苦労があります。
完成したときのお客様の喜びが伝わってくると、
竣工までの過程がどんなに大変であっても、全てが良い思い出になってゆきます。
また見学会を開催したときの事です。
竣工して引渡しまでの間に、建物をお借りして、見学会を開催しました。
見学者には設計事務所と工務店のスタッフで説明をしていましたが、
その時だけは、施主の方(ご主人)が近所の方をつれて来られて案内されていました。
普段の打合せのときは奥様が積極的に発言されていて、
ご主人はあまり発言されていませんでした。
普段は口数の少ないご主人が、私たちが説明するより、上手に説明してくれていました。
思い入れや、私も忘れていたような事までを、とても嬉しそうに、説明してくれました。
ご主人の住宅に対しての気持ちが、その説明から伝わってきて、嬉しかった事です。
引渡し直前の住宅の中を最終チェックをしながら見て廻っている時に
感じるのですが、引渡しをしたくなくなって来るのです。
設計を依頼されてから1年以上掛けてやっと出来上がったお家ですが、
引渡しをすると、私の手から離れてしまうので、さみしくなってしまうのです。
引渡し前に最終チェックと理由をつけて、一晩泊まる設計者もいると聞きます。
私は泊まった事は無いのですが、わかる気がします。
久しぶりに訪問してみると、素敵な小物が飾ってあったり、
予想以上に良い雰囲気になっていたり、思いもよらなかった上手な使い方をされていたり、
つい、帰りたくなくなってしまう事もあります。
少し明かりを暗くして、お酒をご馳走になっていたりすると
時間を忘れて、終電に遅れそうになっ事もあります。
お客様の夢をかなえるために、一緒に考えて創り上げていく
この仕事はとても楽しいものです。
その喜びを得るためには多くの苦労もありますが、
素敵なお家が完成すると全てが喜びに変わってゆきます。