![]() 【韓国人キャスト日本公演】 韓国初演は2004年のソウル。その後ソウルでの再演、再々演、および地方公演を経て、2006年に日本公演という運びになったようだ。日本公演は東京と大阪での日本語字幕付き上演。主人公のジキルとハイドをチョ・スンウとリュ・ジョンハンが、ルーシーはキム・ソニョンとイ・ヨンミがWキャストで務めている。 これを観る1週間前にソウルで韓国人キャストの『アイーダ』『壁抜け男』を観た。とにかく歌の上手さに感動した。そして韓国人キャストのミュージカルを、こうして日本で観ても感想は何も変わらない。歌がどう上手いのか具体的に伝えられないのがもどかしいが、とにかく迫力がある。凄みがあると言ってもいい。声量が豊かだとかテクニックが秀でているということだけでもなく、魂に響いてくる何かがあるのだ。 演出は日本と違う。ひとつ例を挙げると、ジキル博士からハイドが生まれるシーン。ジキル博士は開発した薬を自らに投薬するのだが、確か日本では液体を飲んでいた。しかし韓国版は注射なのである。ビクトリア時代のロンドンでどちらが一般的だったのかは知らないが、注射とはリアルである。注射をする時のゴム・バンド(?)までするのだから、妙に生々しい。こんなことから人の殺し方まで、ひとつひとつがストレートでリアルな印象というのが韓国版の演出に感じるところであった。そういうことが要因なのか、幕開けから終わりまで全体に暗くて生々しい雰囲気が漂っていたように思う。日本版でももちろんそういう雰囲気はあるのだが、韓国版に比べればオブラートに包んだ演出がされているように思えたのであった。 日本版と韓国版の大きな違いは主演の年齢にもある。ジキルにせよハイドにせよ、50歳を超えた鹿賀丈史が演じるのと、若々しいチョ・スンウが演じるのとでは、舞台全体の印象も変わる。長年研究を続けた博士…という点においては鹿賀丈史の方がぴったり来るのだが、結婚を控えている男という点においてはチョ・スンウの方が収まりが良い。 俳優はアンサンブルに至るまでレベルの高さを感じた。主演のチョ・スンウは若々しく魅力的。歌も上手く動きもキビキビとした気持ちよさがあった。しかしそうした若さも表裏一体で、ジキル博士のせつなさやハイドのおどろおどろさを表現するには少し物足らなさを感じた。エマはイ・ヘギョン。登場人物の中で唯一“光”とも言えるエマ役なのだが、ヘギョンは美しいソプラノをもって見事に表現していた。ルーシー役はイ・ヨンミで観た。この人の歌や芝居には凄みがあり、特に歌のソロ・パートでは鳥肌が立ったほどである。韓国語もわからない日本人の目頭を熱くさせるなんて、大した女優だなぁーと思わざるを得ない。 |