10月某日「人の魅力」 |
京都に向かう列車で、通路側に座っていた俺の横に突然キャリーバッグが転がってきた。とりあえず俺の所で止めようとしばらく手で押さえていることしばし。やがて持ち主らしき青年が、何事もなかったように無言で持ち去った。スーツ姿が美しい、イマドキのリーマンであった。彼の甘くさわやかなコロンの香りが、不快に鼻に残った。 同じ日の、人が溢れる夕方の京都駅。大阪に向かう列車を待っていたら、背後から 「心配するな。兄ちゃんが席取ったるから」の声。そんな頼もしい台詞の主をひと目見ようと振り向くと、小デブで素朴な感じの青年がいた。年はハタチくらいだろうか。横には 障害を持った妹らしき女の子がいた。ホームに入ってきた列車のドアが開き、人がなだれ込む。さっきの台詞があまりにも泣かせるから、俺は自分の順番分だけ“兄ちゃん”に 先を譲った。結局兄妹も俺も座れず、立つこと30分。列車は大阪駅に着いた。降り際に“兄ちゃん”は、俺の顔を見て小さく頭を下げて消えていった。俺は心の中で彼の労を ねぎらった。 礼儀正しいとか大げさな話ではない。ちょっとしたことが何より大切なのだ。人の魅力はそんなことで上がりも下がりもする。教えられる一日であった。 ![]() |
10月某日「まるで文章のテーマパークやぁ」 |
お気に入りのブログを見つけ、そしてそこからリンクで辿っていき、今では5,6件のブログを読ませてもらっている。ゲイの個人ホームページはどんどん廃れていくなか、ブログはまだまだ活況という感じだ。 かつて個人ホームページが賑わいを見せていた頃、俺もかなりの“お気に入り”を登録していた。でもその頃はビジュアル重視の傾向があり、デザインが秀でているとか管理人がカッコいいとかそんな価値観でお気に入りに登録していた。しかしブログというのはデザインは似たり寄ったりで、管理人のルックスもうかがい知れないことが多い。お気に入りとして登録する俺の基準はテーマであったり文章力だったり。こうして駄文を綴る者としては勉強にもなる。 お気に入りのひとつは俺よりも年上の方が書いておられるもので、淡々と生活を綴ったもの。暮らしぶりがオッサンくさくもなく若ぶることもなくスマート。生活観としては目指すところである。また別のお気に入りは30代前半の方が書かれているものだが、その方は日常のささやかなことを気に留めて、かなり繊細な心を持ち合わせていることがわかる。本来は神経質ながらも加齢と共にどんどん厚かましくなっている俺には、共感させられたり忘れていた感情を思い出させてくれること多々。 友人のブログをのぞくことも定例。その友人はあまりにも遠くに住んでいて滅多に会えないが、このブログがあるから彼の日常の変化がわかる。俺は何かにつけ彼の視点が好きで、ブログではそれがいかんなく発揮されている。ブログを読むようになって、ますます彼を好きになった。 話は少しズレるが、プログには“エロブログ(エログ?)”なるものがある。セックス関連の体験などを赤裸々に描写していて、結構生々しい。さながらエロ小説と言っていいだろう。しかしその文章にはクリエイティブなセンスを感じる。セックスの描写は声にならない声だとか、獣の雄たけびとも言えそうな台詞(?)、粘着質な音…およそ文字では表現しづらい様相を描写しなくてはならない。 「ぐぉーーーーっ」とか「んっ・・・ぷはぁ〜」、「あっ・・・・・」「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ」 「き・・・もちイイ」「ヌチャ」と書き出したらキリがないのだが、小さい「ぁ」とか「っ」とか「−」とか「・・・」などを駆使すれば、ここまで官能的な表現が可能なのだと教えてくれた。 もっとも教えてもらったところで使う機会がないのは残念だが。 ![]() |