2月某日「そして私のある一日」 |
休みなく働き続けたある日の朝、外は雨だった。わけもなく気が滅入り、会社を休むことにした。ズル休みである。 休んだからといって特別にすることはない。一旦起きて着替えてしまったから二度寝する気分でもない。雨の中、外に出るのも億劫だ。とりあえず珈琲をゆっくり淹れてみた。 とりあえず部屋の掃除をしてみた。そしてシェーバーや電動ハブラシ、掃除機やデジカメやらをとりあえず充電してみた。とりあえずの連続で午前中は過ごしてみた。 雨が小降りに変わった昼過ぎ、近所の喫茶店に行った。俺しかいない静かな店でのんびりランチ。マスターと嫁は、録画していたのか、トリノのカーリングを食い入るようにみている。嫁が「カーリングってどういう意味なん?」と亭主に聞いた。亭主は「なんやろな。あの石が車みたいやから“カー”なんちゃうか」。嫁は「ふーん」と、自分が質問したことも忘れ興味なさげ。そして俺は『“カー”だけ説明して“リング”は無視かよっ』と心でツッコミ。もちろん“カーリング”という単語は、“カー”と“リング”で分割してはいけない。どうでもよいことだが。 部屋に戻ってからは、軽く昼寝をすることにした。しかし軽くのはずが、気がつけばすっかり夜。よくある話だ。軽い夕食を取った後、読書に耽る。ドラマが面白かったから買った、大石英司の『神はサイコロを振らない』という小説。10年前に死んだと思っていた人たちが、突然目の前に現れ…という物語だ。俺ならどうだろう。生きていたという現実に驚きはしても、きっとすぐに普通に付き合っていけるだろう。10年なんて長いようで短い。10年会っていない知人・友人なんて普通にいる。そんなことを考えていたら、何年も会っていない友人は元気にやっているのか?と気になった。 小説400頁のおかげで、すっかり日が変わっていた。何をしなくても一日は早く過ぎる。あと数時間後には朝だ。今日はこのまま起きていて、朝早くに出社しよう。今日も片付けなくてはいけない仕事が山積みだ。 一日休んだら、仕事に燃える自分も嫌いではないことに気がついた。 ![]() |
2月某日「等身大の私の日常」 |
ビルの外に出て、知り合いと出くわし「今日は暖かいですね」と挨拶を交わす真昼どき。フライング気味の春の気配は心を緩ますけれど、時の過ぎ行く速さに気持が戸惑う。 メールを三往復やり取りして、返事が突然途切れるのは仕方がない。他愛もない内容だったのだから。 あれこれ空想を膨らませながら目を走らせる旅のガイドブック。突然、行けるはずのない現実に気づきページを閉じる。仕方がない。 期待してオーダーした料理は思ったほどの味ではない。しかし残すほどでもなく淡々と口に運ぶ。レジで出る言葉は「ごちそうさまでした」。 土日は何をしていたか?などと実にくだらない会話をする月曜日。仕事が速く終わったのに、まっすぐ家に帰れない木曜日。聞きたかったCDを偶然見つけ喜んで手に取ってみたけれど、聞きたい曲は半分だけ。しばし考え、商品を元に戻し店を出る。 昼間の暖かさとは打って変わって寒さが身にしみる帰り道。明日の芝居は楽しみだ。明後日の会議は気が重い。 口にして嘆くこともなく、かと言って幸せでもない日々はなんだろう。 週末の天気は晴れだろうか。 ![]() |
2月某日「絵文字の威力」 |
メールの絵文字。それを使えるのは若い子だけに許された特権かと思っていたのも今は昔。今や四十女から届くメールにまで、ひとつやふたつ絵文字が混ざっていたりする。かく言う俺も時々使ってしまう。 ノンケ相手には絶対に使わないよう心がけているが、ゲイ相手だとつい手を出してしまう絵文字。俺などはメールにおいても他人様にツッコミを入れたりするのだが、文字だけで表現するとそれが大阪独特の“ツッコミ”とは受け取られず「なんて意地悪でキツイ人」と受け取られることが稀にある。俺が意地悪でキツイというのはあながち間違ってはいないような気もするが、メールの場合は違う。単に“ノリ”なのである。また時には可愛さアピール的に使って相手に嫌がらせをする場合もある。俺がヒヨコとかペンギンの絵を満載にしてメールを送れば、受け取った相手のドン引きしてる姿が目に浮かんで、これは結構楽しい。しかしいかなる場合であれ、オッサンと絵文字…痛い話である。俺から届くメールに絵文字が入っていた場合、本人は痛いこと承知で使っているゆえ指摘は無用。ここでお願いしておこう。 俺の痛々しい話はさておき、若い子から来る絵文字満載のメールは楽しい。単純にカワイイと思う。しかし「飛行機で行きます」と書いた上で「飛行機」という文字の隣にわざわざ飛行機の絵が入っていたりする理屈は、未だ不可解な俺。でも「“飛行機”って漢字、ちゃんと読めてますけど?!」なんてことは言いっこナシなんだろう。すべてはノリ。また上向きの矢印とか渦巻きだとか、それが何を意味するのかわからないというか考えようともせず今日に至っている絵文字もあるが、それも雰囲気モノということで良いのだろう。 可愛いならばすべてオッケーである。 絵文字…若者は使って楽しめ。オヤジは見て楽しめ。本日の結論デシタ☆←pretty? ![]() |
2月某日「名古屋オリジナル」 |
先日の名古屋出張の折、名古屋は初めてという後輩のために、何か名物を食べようという話になった。名古屋名物と言えば、味噌カツに味噌煮込み、名古屋コーチン、きしめん、おひつまぶし…。しかし味噌系のふたつは俺が苦手だし、きしめんとおひつまぶしは大阪でも食べられる。鶏が苦手だという後輩に名古屋コーチンは無理。 じゃあ、一体、何を食べればよいのか? そこでハタと思いついたのが「小倉トースト」なのである。名古屋在住の王子によると「幼い頃、食卓には必ず小倉の缶詰があった」と言うほど、名古屋人の朝食にはスタンダードなものらしい。 しかしどこで食べられるのだろう?帰りの新幹線の時刻も迫る中、調べるのも面倒なので駅の喫茶店を手当たり次第聞いて回ろうと入った一軒目。 「あのー、小倉トーストってメニューにあります?」 ウエイターのお兄さんは表情ひとつ変えずに 「ございまっすよー」 …あっさりビンゴ。なんだか値打ちもねぇーやと思わないでもないが、早速いただいてみた。その店はサンドイッチの形で出すようなんだが、挟まれているあんこの量が半端じゃない。もう、甘いのなんのって。でも確かにトーストと合っている。同じあんこでもアンパンとは全く別物で、不思議な味わいがある。珈琲との相性もよい。これはなかなかの発見。後輩は「これのどこが名古屋名物なんだかわからない」と不服感丸出しであったが、それも仕方ない。トーストにもあんこにも名古屋感がないし。しかし俺に言わせれば、この組み合わせこそが名古屋らしいと思うのである。皆さんも名古屋に行かれた折には是非。 ![]() |