5.森の番人フンババとの戦い、香柏の獲得


ギルガメシュとエンキドゥの二人は、香柏の森の美しい眺めにしばし見入っていたが、やがて森に入り、香柏の伐採を始めた。するとほどなく、その音を聞きつけたフンババが駆けつけ、二人を一喝する。
「小童ども、なぜやってきたのだ。エンキドゥよ、なぜギルガメシュを我が前に連れてきたのか。よそ者である敵と共に立つというのか。ギルガメシュよ、わしはおまえの喉笛と項を噛み砕き、猛鳥に食わせてやろう」
フンババの顔がみるみる恐ろしく変化してゆく。ギルガメシュはそれを見て再び恐怖にとらわれた。エンキドゥは再び彼を鼓舞する。

二人は薬草を塗った斧と太刀を手に執った。エンキドゥはもう一度ギルガメシュに呼びかけた。

「一人では滑りやすい場所を歩けないが、
二人ならば、ひとりがその友を助け起こす。
三重の織布は誰もこれを断ち切れない。
三つ縒りの綱は切れない。
獅子も二頭の仔獅子には勝らない」

エンキドゥの言葉に力を取り戻したギルガメシュは、巨大なフンババに立ち向かった。二人は素早く飛び回りながら、フンババの頭に打撃を与える。二人の大地を蹴る衝撃によってヘルモンとレバノンの地が裂け、空は黒くなり、死が霧のように彼らに降り注いだ。戦いのさなか、ギルガメシュは太陽神シャマシュに加護を願う。その祈りに応じて、シャマシュ神は十三の激しい嵐を巻き起こしてフンババの顔面に投げつけた。フンババは視界を遮られ、進むことも退くことも出来なくなった。そこへギルガメシュのクリティカル・ヒットが決まり、フンババは崩れ落ちた。

フンババは息も絶え絶えに、自分は彼らのしもべになり、望むすべての木を与えるから助けて欲しいと嘆願する。だが、エンキドゥはギルガメシュに、フンババを捕縛して撃ち殺すように助言する。フンババは更に嘆願するが、エンキドゥは聞き入れない。フンババはエンキドゥを呪って言った。
「エンリル神よ、二人を老齢まで生かしたもうな。エンキドゥがその友ギルガメシュ以上に高齢を得ることがないように・・・」
ギルガメシュはついにエンキドゥの言葉を聞きいれ、フンババの項を撃った。続いてエンキドゥが心臓を撃った。ギルガメシュの二回目の打撃で、フンババの息は絶えた。エンキドゥはその首を金桶に押し込めた。

二人は森の奥深くへ入って行き、香柏を伐採した。そしてそれらをユーフラテス川に流して運び、エンリル神を崇拝するニップールの町へと運び込み、香柏で作った巨大な扉を奉納した。これは、香柏の森の番人フンババを殺したことによるエンリル神の怒りを鎮めるためである。なぜなら、彼がフンババをその任につかせたのだから。
その後、二人はウルクへ帰還した。ギルガメシュはフンババの頭を持って華々しく凱旋した。


*ギルガメシュを力づけるエンキドゥの言葉は欠損しているが、ヒッタイト語版と旧約聖書・コヘレト書(伝道の書)4:9〜12によりおぎなった。


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