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      序
        何時もの様に可愛いor美人の女の子をナンパし、決まってフラれる男・風魔小太郎。うげつさんのお許しが出てゲームという次元を超えてナンパに出てきたのであった。その時、香港にホイメイという可愛い女の子がいると聞いて、香港くんだりまでやってきたのだった。 
       
  
      「ホイメイちゃんっていったよな、よーし、早速探しますか……」 
       ド派手な真っ赤な装束の、真っ赤な頭の男が香港の雑多の中を歩いている。例え雑多の中とはいえ、やはり真っ赤な格好は目立つらしく、人々が中国雑技団の一人と間違えて指を差してたりもする。
      「うるっさいわねぇ!」 
      「ったく!いい加減にしろ!」 
      「………ったく……こいつら……」 
       街で知らぬ者は居ない、知らないとすれば、モグリだ、とも言える位有名な双子の李兄弟。今日もその兄の方が幼馴染みの女の子と言い争いをしている。そして頭を抱えつつ仲裁をするのは弟の方だ…が。 
      「ホイメイも、素直に頼めばいいのに……だから、俺が手伝ってやるよ」 
      「あたしは!ユンにもヤンにも頼んでなんかないの!」 
      「……ホイメイ、いくら俺でもその言い方は怒るぜ」 
       あぁ、展開は、更に険悪な雰囲気。しかし誰も止めないのは…止められない事も有るが、この3人が本当はとても仲良しだという事を分かっているからだ。ホイメイは大きなおかもちを抱えて歩き出そうとする。 
      「あたし一人で、行けるからほっといてよ!」 
       ……さて、何をもめていたのかといいますと、用はとても単純。ホイメイちゃんが何時もより大きなおかもちを抱え…それが中身が尋常じゃない位重くて大変でヨタヨタ歩いていたら、ユン、ホイメイちゃんをからかい、怒って行こうとしたら"冗談、俺が行ってやるよ"とおかもちを奪おうとして……素直じゃないホイメイちゃんは有難うって言えなかったんですな。 
      「せっかく人が親切に言ってやってんのに!だから可愛気ねぇ女は嫌だよ」 
      「別に可愛いってユンに言われたって嬉しくないわ!」 
       あーあ……僕が居たら仲裁できるかしら、この子たち…しかも今回はヤンまでもが追い打ちかけてるし。 
      「俺はやっぱり理花みたいな大人しい子がいいからな」 
      「俺、冬花」 
       ホイメイちゃんは顔を真っ赤にして思い切りユンとヤンを連続して平手打ち! 
      ぱぁん!ばしぃ! 
      「馬鹿!」 
       そのままおかもちを抱えてヨタヨタと歩き出すのであった。 
      「…ったく!ホイメイの何処が女なんだか…」 
       頬を抑えてユンがホイメイの去って行く方を見つめる。 
      「俺だって親切に言ってやってんのに…ホイメイは……」 
       ヤンも叩かれた頬を抑えている。 
      「まいど!昇龍軒です!」 
       ようやく配達先に辿り着いたホイメイちゃんが家の前で元気良く声を出す。すると、戸を開けて見知っている家族の父親が出てきた。彼は近所の知人を集めて麻雀をしている最中で、その昼食をも注文した訳である。よって、量が尋常じゃなかったのだった。 
      「おや、ホイメイちゃん、一人?」 
      「ええ、これ位……」 
       ホイメイちゃんの目が少しだけ赤いのを彼は見た。彼は意味有りげな顔をしてからかうように言った。 
      「俺はてっきり李んトコの双子に手伝わせるかと思ったのに、居なかったのかい?」 
      「これ位、居たって頼まないわよ!おじさん、それよりお勘定」 
       やけにムキになって言い切るので、男は彼女が李兄弟とまたしても言い争ったのだ、と納得した。 
      「はいはい、わかったよ、ホイメイちゃんも、もう少し素直になったほうがいいよ」 
       後ろから麻雀仲間がきて、おかもちの中の料理を引き取りにくる際 
      「ホイメイちゃんはいつもみたく笑ってたほうが可愛いよ」 
      「ふふ、ありがと、おじさん」 
      「李ントコのあいつらもこれ位言ってやりゃあ良いのになぁ」 
      「もう!ユンもヤンも関係ないでしょ!毎度あり!」 
       顔を真っ赤にして去っていくホイメイちゃんを見て、全てを分かりきってニヤニヤと笑うのだった。 
       念願の香港。早速ゲーセンに入り、向こうゲーマーのジャッキーにボロ雑巾の様にされ、台を代えたらパイに遊ばれ、更に台を移したら今度は晶さんに凄まじい連続技を食らいまくったので、悔しさの余りストIIIに乱入して竜巻バカの神龍ケンを幾度となくのした後、結局1コインEDを見て出てくると、李兄弟が何やらぶつぶつ文句を言っている。 
      「おや、ユンちゃんにヤンちゃん」 
       僕が声をかけると二人共僕の方を振り向いた。その左のほっぺたが揃って真っ赤。こりゃ何か有ったな。 
      「……よぉ、童夢」 
      「来てたのか」 
       何か、随分な言い方してくれる。でも、僕には理由がピンときた。 
      「何?二人共、まぁたホイメイちゃんと言い争ったんでしょ。しかも、ヤンまで一緒になって」 
       見事、図星。 
      「な………ななな……」 
      「何でわかんだよぉ!」 
       わからいでか。あんた達のやりそうなこった。 
      「フフフ…顔に書いてあるよん」 
       そう言うと、二人共慌てて顔を擦ってお互いを見つめる。 
      「書いてあるって……」 
      「しかし、いいの?もし、ホイメイちゃんが他の男に言い寄られたりしたらさぁ」 
       ちょっとハッパをかけてみた。 
      「あいつに声かける奴なんか、いねーよ」 
       ユンの顔は茹でダコ。 
      「もっと大人しかったら居るかもしれないけどさ」 
       ヤンの顔は熱湯のやかん。 
      …は、はぁ〜ん…二人共、本当はホイメイちゃんが好きな癖に、何て典型的な奴らめ。 
      「何言ってんの、ホイメイちゃん位可愛い娘、見逃す訳ないやん」 
       僕だって、ホイメイちゃん気に入ってんだし、そう付け加える。一瞬、二人の顔が強ばった…お、気にしてる2…そう思ってふと、道の向こうを見た時…… 
      「あ、ホイメイちゃんだ………れ?」
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