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        さて、前編のド派手な男……どう言い代えても風魔小太郎以外の何者でもないですな。そのフウマくん、うげつさんのお許しを得て、ゲームの次元を超えて早速色んな女の子をナンパに出かけた訳なのであります。その一人目に、ホイメイちゃんをゲット!のつもりでありましょう。 
      「ホイメイちゃん、どっこかなぁ…」 
       等とウキウキしながら歩いていますと、カラになった大きなおかもちを持った、ショートヘアの、ちょっと気の強そうな可愛い女の子がトコトコと歩いてくる。 
      「お、あの娘だ!」 
       早速といわんばかりにフウマくんは女の子の方に歩みよってきた。 
      「よ、そこの可愛いおじょーさん!バイト?大変だね、手伝ってやろっかぁ?」 
      「………誰、貴方?」 
       何だこのハデな奴、と言う表情でホイメイちゃんは目の前の男を見た。 
      「え、俺?この俺様こそが、稀代の天才忍者、泣く娘も振り向く伊達役者、風魔小太郎様よ」 
       変な人だなぁ、と思い、ホイメイちゃんはあっさり 
      「別に、いらないわよ、帰りだし」 
      「ね、ちょっと時間あるなら俺とデートでもしない?」 
      「あたし、まだ仕事中」 
       そう言って去ろうとする。 
      「ね、せめてそこで飲茶でも…」 
       フウマくん、諦めない。 
      「まだ配達あるから…いい加減にしてくれないかしら」 
       語尾に少しづつ、怒気がこもってきた。ホイメイちゃん、そろそろイラついてきた様子。下手すると平手打ちが飛ぶかもしれないぞ…… 
      「あれ、ふーま…だよな。何やってんだろ?あ、ホイメイちゃん、ナンパしてる……やっぱし」 
       わざとらしく呆れた様に僕がそう言うと、李兄弟揃って僕が見ている方角を睨む様に見る。その先で、大きなおかもちを抱えたホイメイちゃんが真っ赤なド派手な男……どうみてもフウマ…にナンパされてる。 
      「ありゃー、ホイメイちゃん、困ってる……ホレ、香港の若き双龍くん達、良いのかな?街の平和を守るんじゃないのかい?」 
       ちょっとハッパをかけてみた。が、もうエンジンに火が付いている……必要なかった様だ。 
      「あ!あいつ…!」 
      「な、何だ?!ホイメイに…」 
       そろそろ本音が出てきたかな。 
      「哥哥、俺達は困った人を助けるべきだな……」 
      「迷うこたぁないぜ!ヤン!」 
       ユンが猛烈な勢いでダッシュ!1テンポ遅れてヤンも猛ダッシュ!……フフ…素直じゃない奴らめ。 
      「おい、てめぇ!」 
       異様な迄に怒気のこもった声でユンが叫ぶ。 
      「何だいいトコなんだから邪魔すんな」 
       振り向きもしない。 
      「おい、人の話を聞く時位、こっちを向けよ!」 
       ヤンの方も言葉に怒気がこもっている。 
      「あー、うるせえ!」 
       流石に苛立ってフウマが振り向いた。その先には帽子を被ったおさげの少年と、前髪の異様に長い少年とが尋常じゃない迄の闘気…否、殺気を放って立っていた。 
      「何だよ、お前ら」 
      「それは俺達の台詞だぜ…」 
       ユンは指を鳴らしながら間合いをつめる。 
      「彼女、迷惑してるだろ、これ以上手ぇ出すなよ…」 
       ユンとは対になる位置に、ヤンは移動する。 
      「誰をナンパしようが、俺様の勝手だ!邪魔すんじゃねぇぜ!」 
      「ホイメイにテぇ出すんじゃねぇ!」 
       二人が同時に叫ぶ。SAゲージも一瞬にしてMAXだ! 
      「何だと!この俺様を………」 
       フウマくんの台詞は、それ以上続かなかった。 
      「ハァーッ!」 
      「アイヤーッ!」 
       右から槍雷連撃、左から転身穿弓腿。しかも幻影陣状態からだからHit数3倍(実際のゲームじゃ出来ないけどね…) 
      「うわぁぁぁ〜〜〜〜……」 
       そのままフウマくんは遠いお空に飛んでった。これがロケット団なら「嫌なかんじぃ〜!」とでも言いながら飛んで行くんだろう…因みに、三悪なら「スカポンタ〜ン!」かな?(アニメ・ポケットモンスター及びヤッターマンを知らない方がいましたらすみません) 
      「はぁ〜〜……」 
      「ざまぁねぇぜ……」 
       二人共、目がイっちゃってました。大きく息をついて、振り向きもせずに開口一番。 
      「大丈夫だったか、ホイメイ」 
       茹でダコなので振り向けないユン。 
      「間一髪ってトコだな…」 
       こちらも熱湯のやかんなヤン。勿論顔は向けられない。 
      「べ、別に、あんな奴、あたしが平手打ちしてるわよ…」 
       ホイメイちゃんの頬は梅の花の様に赤い。 
      「………………」 
      「………………」 
      「………………」 
       暫く沈黙が続いている。その内、ユンが帽子を深く、顔が見えない様に被直してからり振り向く。 
      「ホラ、次は何処なんだ?大変なら俺達が手伝ってやるぜ」 
       そう言ってヤンの肩を叩く。ヤンは一瞬びっくりした様に小さく跳ねると前髪をばっさりと前にもって来て、表情を見えない様にすると振り向いて頷いた。 
      「べ…べつに……それより……」 
       ホイメイちゃんは、真っ赤な顔を更に上気させて叫ぶ様に言い切った。 
      「先刻は有難う、ね!」 
       3人とも会話がこれ以上成り立たない、ふと、ヤンは思い出した様に言いだす。 
      「あ、童夢が来てたんだ」 
      「そ、そおだ!童夢も呼んで、お前んトコで飯にするか!」 
       誤魔化すかの様に大声を張り上げるユン。でもちょっと表情はぎこちない。 
      「え、童夢来てるの?何処?」 
       ホイメイちゃんもテレを隠すかの様なよそよそしい言い方。 
      「あ、あれ、何処だっけ、童夢……」 
       誤魔化すかの様に僕を探す3人は、先刻からずーっと発せられていた…周囲の注目を一身に浴びる位奇怪な僕の笑い声にようやく気が付くのだった。 
      「きゃ〜〜〜っはははははははは!照れてる2!素直じゃないのぉ〜!おっかしぃ〜〜〜!」 
       そんな僕の方に突進しながらユンは叫ぶのだった。 
      「童夢〜〜〜〜!何が可笑しいんだぁ〜〜〜!」 
      「や、もぉ〜〜!たまんなぁ〜〜〜〜〜い!きゃっははははは!」 
      「笑うなぁ!童夢!」 
       ヤンが何を言っても、ユンがどういう態度をとっても、ホイメイちゃんが誤魔化しても、僕には全てが可笑しいのだった。
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