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【このミュージカルについて】 「ニッセイ名作劇場」の子供ミュージカルとして1987年に初演。翌88年以降は一般公演として今日まで600回以上も上演され続けている、劇団四季きっての人気演目。 赤川次郎が初めて書いた絵本『冒険配達ノート・夢から醒めた夢』が原作で、「人間は生きていることに意味がある」ということをストレートに教えてくれる作品。音楽は全編とも、「津軽海峡冬景色」「時の流れに身をまかせ」でおなじみの三木たかしが担当。 2000年には演出、振付、衣装、装置が一新され、今回の大阪公演はこのニューバージョンの初上演となる。1987年の初演以来主役を務めてきたのは保坂知寿。このニューバージョンからは樋口麻美が二代目として登場。 |
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【物語】 幽霊とか霊界とか超自然現象に興味津々の少女ピコは、本物の幽霊マコと出会ってしまう。マコは生前お母さんとふたり仲良く暮らしていたが、突然の交通事故で他界。以来悲しみにくれる生活を送り続けているお母さん。マコはそんな母親を励まし、そしてちゃんとサヨナラを言いたくて霊としてさまよっていた。そんな折、マコはピコに出会ったのだ。そして「1日だけ幽霊の自分と入れ替わって欲しい」と懇願する。 不安ながらもマコの気持ちを引き受けたピコは、霊界へと旅立つ。そこでピコは死ぬということ、生きるということ、愛や友情、夢や希望といった、現実の世界では見えにくくなってしまうことを学び、再び人間に戻るため下界に下りてくるのだが…。 |
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【感想】 なにせ霊界の話ですから、荒唐無稽といえば余りにも荒唐無稽な話。しかし単純にいい物語です。主だった登場人物(登場幽霊?)が、めっちゃ人間臭く表現されていて、そういう部分は大人の鑑賞に堪え得る作品だと思います。実はテーマも大人向けって気がします。ピコは2回、他人のために死を決心するんですが(つまり再び人間に戻らないという決心)、そのたびに幽霊たちが「命ある限り死ぬ理由などどこにもない」と諭すわけです。単純な話とはいえ、これがなかなか心に迫るものがありました。 と、まぁ、このミュージカルの本質は大人が見ても感動的なんですが、やはり如何せん絵本原作の作品。ストーリーの運びが単純すぎるのが、難と言えば難でしょうか。 もちろんミュージカルの場合、複雑でも見づらいのですが、もう少しひねりも欲しいところ。役者の演技も含みのない直球勝負。笑う、怒る、泣く…ストレートすぎです。逆にそこは子供の鑑賞に堪え得るようになってんでしょうなぁ。あと音楽は美しいメロディーが用意されていて心に染み入るんですが、歌詞が子供向けというか分かりやす過ぎて、俺は「寒っ!」という箇所が数箇所。振付の加藤敬二が2000年のリニューアルで登場させたダンスも、無理やり挿入した感が強く場に馴染んでいない。いかにも「ダンサーたちの見せ場を作ってみました」と言わんばかりで、突如と高レベルなダンスシーンが展開されるのは疑問。感情が途切れます。 いいミュージカルなんだけど、俺は何故か同じ上演期間に二度見たいと思いません。理由は以上のようなことでしょうか。見終えると確かな感動はもらえるものの、ミュージカルを観た!という満足感に少々欠けるというのが正直な感想です(期間中に主役交代があれば、観に行くかもしれませんが…)。「『夢から醒めた夢』って見といた方がいい?」と周りから質問されて、「見といた方がいいよ。あまりオススメできないけど」なんて答えて、「一体どっちよ?!」と言われちゃうんですが、ホントにそうしか言えない、俺の中でも特殊なミュージカルです。 |
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【ルビ吉の俳優雑感】 樋口麻美(ピコ)…俺が見た公演は大阪公演開幕後すぐだったんですが、樋口麻美は全くダメでした。台詞は噛むし歌では声が裏返るしで。ラート(体操の競技用具?で、大きな輪)も舞台袖近くでバランスを崩し倒れかける有様。演技も勢いばかりで荒い。 いいように解釈してあげれば、ここのところの樋口麻美は忙しすぎでしょう。『マンマ・ミーア!』『ライオンキング』と立て続けに出演しての大阪入り。彼女の実力がどれほどかは知りませんが、四季の主演クラスの女優であることを考えると、とても“持てる力”を出し切って舞台に立ってるとは思えませんでした。一公演をこなしただけ。主役なんだから、劇団も時間的な余裕を彼女に与えてあげるべきでは?と思ってしまいました。 木村花代(マコ)…マコ役は最初と最後だけの登場で演じる場数が少ない。堀内敬子も花岡久子も木村花代も、不思議と誰が演じてもまったく同じ。でも花ちゃんは歌の部分で頭ひとつ抜きん出てたと思うのは、俺の贔屓目か?!(笑) 早水小夜子(マコの母)…素晴らしい歌唱でした。娘を失った母親の悲壮感が、痛烈に伝わりました。 光枝明彦(デビル)…光枝さんの持ち役。デビルはいけずだけど最後はいい人。更に年取ったオカマキャラ。まったくおいしい役です(笑)。光枝さんはピッタリというか、この人以外に演じられないでしょう。それにしても渋い役やらバタくさい役、枯れた役まで本当に演技の幅が広い本物の役者ですね。 ついでに坂本剛(暴走族)…いい男ですぅ…ホレボレ☆ 以上!(笑) |