【観劇記】 4年ぶりの『ミス・サイゴン』にソニンがキャスティングされたので見てきた。これまで見てきたソニンといえば、『スウィーニー・トッド』であったり『ペテン師と詐欺師』であったりと、どちらかといえば美しいソプラノを聞かせてくれる女優。しかし『ミス・サイゴン』では、美しいながらも時には荒々しく鬼気迫る歌声で、聞く者を圧倒。まさしく初演の本田美奈子を彷彿させる歌唱といえよう。ソニン演じるキムが我が子を守るために、幼馴染のトゥイを射殺するシーンは特に圧巻。「さわらないで この子を 残された生きがいよ」というキムの絶唱はメロディーの美しさも相まって、鳥肌モノだ。 今回のキャストで素晴らしかったのはソニンだけではない。クリス役の藤岡正明もひときわ光っていた。見るからにやんちゃそうだけど正義感の強そうな顔立ちは、俺がイメージするクリスにぴったり合っていて、見ていても心地よい。歌の上手さは『レ・ミゼラブル』で実証済みだが、今回も素晴らしかった。どこまでも響き渡る声は、クリスの苦悩を我々に痛いほどに伝えたと思う。そのほかエレン役のシルビア・グラブは、歌もさることながら演技面で特に秀逸。エレンの複雑な心持ちと悲しみを十分に伝えた。 『ミス・サイゴン』を見ると、舞台セットがホントに大掛かりだとあらためて思う。80年代後半から90年代初頭までは、こうしたスペクタクルなミュージカルが何本か誕生している。しかしこの10年ほどはそんな作品もあまりない。ミュージカルの舞台セットが大掛かりである必要はないけれど、たまにスペクタクルなセットを持つミュージカルが誕生してもいいなぁと思った。 |
『ミス・サイゴン』は2009年1月〜3月に福岡の博多座でも上演されます。A席16,000円(高っ!)、特B席12,500円、B席9,500円、C席5,000円だそうです。 |