コンタクト

演出=スーザン・ストローマン
脚本=ジョン・ワイドマン
振付=スーザン・ストローマン

ルビ吉観劇記録=2003年(大阪)、2007年(京都
【このミュージカルについて】
 歌もない(少しだけある)、台詞も少ない。ひたすらダンスだけで進行していくミュージカル。2000年3月にブロードウェイで開幕(昨年の9月にクローズしてます)。同年のトニー賞ベストミュージカル賞を受賞。
 音楽はオリジナルの公演でも、すべて録音されたテープ(?)が使われている。生演奏が入らないミュージカルは大阪などの地方では珍しくないが、オリジナルがそうなっているのは珍しい。その音楽はビゼーやグリークといったクラシックから、ビーチボーイズの「Do You Wanna Dance?」や、ジャズナンバーとしておなじみの「My Heart Stood Still」や「Sing Sing Sing」と幅広いアプローチ。
 三部構成となっていて、一部「SWINGING」と二部「DID YOU MOVE?」が一幕。三部「CONTACT」が二幕。各部にこのような英語題がついているが、実際には一部「ブランコの女」、二部「青いドレスの女」、三部「黄色いドレスの女」と言った方が通りがよい。もちろんこれら呼び名が、各部のヒロインを象徴していることは言うまでもない。
【物語と感想】
 ずっと観るべきか観ないべきか悩んだ結果、千秋楽前に慌てて駆け込み観劇しました。そして観た感想としては「もっと早くに観ておけば、2,3回は見たのに!」。
 ミュージカルとしてはかなり特殊な作品だけに、というか俺としては歌がないという部分がかなりマイナス・ポイントであったため、なかなか見る気がしなかったのです。しかし予想を裏切って、なかなか充実した作品でした。こんなミュージカルはそうそうないでしょうし、一度は触れておくのも悪くないと思います。

<SWINGING>
 フラゴナールの「ぶらんこ」という名画を説明するかのような、第一部「SWINGING」。絵画に描かれている女と二人の男はこういう関係だったんだ…!と教えてくれます。それにしても第一部からとても濃い。濃すぎる!だって森の中でブランコに乗りながらセックスするんですから…。「絶対にチ○コがマ○コに入っちゃってるよなぁー。亀○が子○にグイグイ当たってるよなぁー」と思わずにはいられない腰の動き。と言っても思わずにいられないのは多分俺だけで、他の1000名の客はそんなこと思ってなかったでしょうけど(笑)。ま、いずれにしても俺はいきなりここで惹きつけられたのでした(笑)。

<DID YOU MOVE?>
 舞台はブランコのある森から、ニューヨークのレストランに変わります。そこではマフィアの旦那と、彼に束縛された妻が食事をしています。パンがまずいとかなんとか言って席を立つ男。しかしこの男、席を立つとき妻に「絶対に席を動くな、他の男を見るな」と厳命します。…まぁ、なんとわかりやすい束縛!(笑) 束縛された妻は白日夢を見ます。近くにいる渋いウエイター長とあんなことや、こんなことや…。ま、やらしい!(笑)
 鳥などに求愛ダンスがあると聞きますが、ダンスで何かを表現するとなると、どうしてもセックスというテーマは外せないのですかね。俺的には一幕前半のブランコで、セックスは堪能したんですケド…。

<CONTACT>
 ミュージカル『コンタクト』のメイン・プログラムです。宣伝のビジュアルも殆どが黄色いドレスの女でしたね。物語の主人公マイケルは広告マン。いくつもの賞を受賞するヤリ手の男。しかしその輝かしい外面とは裏腹に、マイケルの心中は虚無感が広がっている。自殺を図るも失敗。死ぬことさえ出来ない彼は、町にあるスゥイングクラブに迷い込む。しかし踊りが苦手なマイケルは、カウンターで酒をあおるばかり。ほどなく現れたのは、黄色いドレスに身を包んだ女。颯爽と現れた女にクラブ中の男たちが言い寄るが、彼女の態度はにべもない。女は、言い寄っても来ない踊りもしないマイケルに気づくと、一歩一歩彼に近づいていく…。
 『コンタクト』を観た多くの人が、この第三部を評価します。もちろん俺も同感。これは見ごたえがあります。何がどういいのかというと、言葉では説明しにくいのですが、まずダンスが素人目にも迫力があるし、なんと言っても美しいのです。そしてストーリーのトリックも楽しい。美術面での展開もシンプルながらトリッキー。これはかなりオススメ出来ます。

【ルビ吉の気に入ったナンバー】
オリジナルの歌はありません。BGM的に既成の音楽が流れます。

【ルビ吉の俳優雑感】
下村尊則(マイケル・ワイリー)…第三部の主役マイケルは踊りが出来ない設定。そこに踊れる役者がキャスティングされてるのが面白いです。マイケルの日本版オリジナルは、四季きってのダンスの名手・加藤敬二さん。できれば加藤さんで見たかったなぁ…。下村さんは、疲れた男を表現するには余りにも顔立ちと存在感が派手でした。
坂田加奈子(黄色いドレスの女)…カッコイイ!うーん、それだけかな(笑)。この人が演じる黄色いドレスの女って、遠目で見ると雛形あきこに似ている…と思った。どうでもいいことか(笑)。
林下友美(青いドレスの女)…この女優の妙なオバハン感も相まって、白日夢でしか満たされない欲望がリアルに表現されてました。ダンスはさすがの美しさです。
明戸信吾(マフィアの夫、スゥイングクラブのバーテン)…どちらの役も似合ってないなぁ。マフィアの方は、妻の林下さんの方が背が高くてイマイチ迫力に欠けてたし、バーテンの方はジジくささが役に合ってないように思えた。でも一瞬だけ彼が歌うところがあって、その時の美声といったら!プロフで確認すると東京芸大の声楽科卒なんですね、この人。