【観劇記】
 いい年こいたオッサンが行くようなミュージカルじゃないのだけれど、アン役が十数年ぶり(?)に若返ったので、20代のお姉ちゃん二人を引き連れて京都劇場まで行ってみた。しかしお姉ちゃんと京都まで行ってしまったおかげで、帰りが夜遅くなり、飯をおごるのは仕方がないとしてタクシーで家まで送るハメになって散財。久しぶりに高額な観劇となった。

 と、それはさておき、ニュー・キャストによる『赤毛のアン』。アン役のバトンを野村玲子から受け取ったのは吉沢梨絵。アンはおそらく年齢的に15才くらい若返ったのではないだろうか?当時、野村玲子は40代ながらも頑張っていて、この人の実年齢を意識しなければ、自然にアンに見えていた。では役者の実年齢が若返って舞台はどうなったかというと、実はこれといった変化はなし。つまり吉沢アンは野村アンのまったくのコピーなのだ。むしろ声だけで言えば、野村さんの可愛い声に対して、吉沢梨絵の声がややハスキーな分、野村さんの方が子供らしいアンだったかもしれしない。まったく「野村玲子、恐るべし!」である。しかし2002年の公演では、野村さんはもう歌の方はかなり辛そうであったため、吉沢梨絵になってアン・パートの歌は生き生きと蘇った感じがする。

 ギルバートは新しく望月龍平に交替した。ギルバートは確かオトコマエ(正確にはステキな男の子)という設定のはずなのだが…という疑問。ダイアナはアンの親友という設定。こちらは五十嵐可絵が新しくキャスティングされた。2002年に見た秋本みな子はババァにしか見えず、アンの親友という振る舞いは「アタマがちょっと…な大人」として映り、辛かった。五十嵐可絵はそこを払拭してくれた。ステイシー先生は江寿多知恵。前回の五東由衣は可愛い大人の女の雰囲気を醸し出してたが、新しいステイシー先生にはどっしりとした貫禄が。もちろんそれは教育一筋のベテラン教師の風格で、アリであろう。

 新しい配役でこの作品の雰囲気も微妙に変化したが、作品が我々に与える印象は暖かく清清しいものに変わりはない。一緒に言ったOLふたりも、終演後一時間くらいは少女の心に戻っていた…ような気がする。一時間も過ぎたあたりからは、また元の俗世間の垢にまみれた女に戻っていたが。

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