間違いだらけのミドリガメの育て方を斬る! -ミドリガメに愛を-

長年ミドリガメ(正式にはミシシッピーアカミミガメの仲間をいう)を育ててきて、7年前からはまたフレッシュな気持ちで何種類かの子ガメの飼育にも挑戦しています。そしてあらためてカメの飼育書をいろいろ読んで、そこに定説となっている飼育論があるのを知った。それは 30年以上も前から真実だと信じられている「ミドリガメの育て方」。おそらくこれを読んでいるあなたも一度は目にしたことがあると思われるのが下の図のようなもの。

これが典型的な子ガメの飼育図

これが果たして子ガメを育てる最善の方法なのか。理論上、また実際の飼育の現場から検証してみたいと思います。

ミドリガメについて

まずはミドリガメという生き物についての誤解を解いておくことにしましょう。結論からいうとこのカメはペットには向いていない思います。成長が早く、きれいな柄はすぐに消えてかわいくなくなる。動きが激しいので広い飼育スペースを必要とする。とてもプラケースで飼えるものなんかではない。最終的には一匹について90センチ水槽がひとつ必要です。当然冬の寒さで体力は低下し、冬眠もしくはヒーティングが必要となり、これには神経を使うことになる。そしてかなりの大きさ(25センチ以上、2キロ以上)に成長し、本来肉食性が強くどん欲なので気の荒い個体では飼い主にかみつく凶暴性を持ったカメ。自分よりも小さいもので動くものは何でもほとんど食べてしまう。

さてどうでしょう。あのかわいいミドリガメの印象が変わったでしょうか。安いからといって安易にミドリガメを飼うのはやめていただきたいという私の言葉の意味が分かりましたか?

まだ重要なことがあります。犬や猫、またその他の生き物と較べて寿命が長いのです。いや長すぎるのです。自分の半生をかけて育てなくてはなりません。あなたが40歳以上なら、カメの方が長生きするかも知れない。子供よりも、親よりも長いつきあいになるのです。そのことをよく考えてほしいものですね。

最善の環境をつくること

生き物を飼う限りは少しでも長生きさせてやりたいと思うはずです。値段は人間が付けたもの。本来命に値段が付けれるはずがありません。安いからといってすぐに死んでもかまわないなどと考えている人がいないことを信じます!

では具体的に上にあげた例の図はどこがいけないのでしょうか。それは環境の維持の難しさからです。カメという生き物は魚などに較べてよく食べ、よく糞をします。そして水をどんどん汚します。このような環境では1日で水は汚れてしまいます。気軽に買ってきた亀なのに、毎日の水換えをする心構えが果たして出来ているでしょうか。そこが最大の難点です。一般に水の量が少ないほどその質を維持することは困難です。図のような環境では当然水の量は少なく水質の悪化は免れません。

また上記の図のような環境では隠れ家がありません。飼う側からすればいつも見ることが出来ていいのですが、当のカメは非常に臆病で、大きなストレスになります。見られることに対してストレスを感じなくなるには長い年月が必要なんです。

結論として上のような環境では環境の悪化、ストレスによって10匹の内の選ばれた強い個体は生き残り、弱いものはたちどころに死んでしまうことになります。このようなアクアテラリウム(陸地と水場の両方があること)を快適に維持できるのははっきり言いまして上級者です。初心者には到底不可能といえます。


金魚を飼うのと同じでOK!

では子ガメに最適な環境とはどういうものでしょうか。私が考える最良の環境は下の図のようなものです。まず感じることは図が下手だと言うことですが、それはご勘弁下さい。子ガメは一匹では萎縮してしまってうまく育ちません。できれば3−4匹くらいを一緒に飼いましょう。そしてはじめから60センチ水槽を用います。この水槽は最も普及しているので、特価で買えば2000円くらいで手に入ります。そして水を水槽の7割くらいまでたっぷり入れます。そしてよくある上部フィルターを設置します。要するに金魚を飼うのと同じ環境です。水の深さを10センチほど下げるだけです。水槽の中には煉瓦を数個入れる。いくつかを積み木のように組み合わせ、その上に適当な平たい石をのせて水面から出るようにします。ここが身体を乾かす場所。加えて市販されている浮島(バスキングボーイ)を利用してもいい ですね。ここは完全に乾いていること。そして水中に煉瓦で隠れ家を造って下さい。子ガメは臆病なので隠れ家がいります。これによって、弱い個体も生き延びることが出来ます。ついでに十数匹程度のメダカを入れます。他に小型のエビ、イシマキ貝やタニシなども入れるとさらに良いでしょう。直射日光を当てるために、その部分は青天井にします。それ以外はガラスで蓋をし、全体の半分は風呂桶のふたなどで遮光すればいいでしょう。ウチでは水面は陸地と浮島で7−8割を占めています。

子ガメの水槽の模式図 書き忘れましたが底部に砂利を敷いて下さい ここに汚れを蓄えることが出来て水換えを減らすことが出来ます カメの精神安定にも良いように思います

上記のようにセッティングすれば、上部フィルターでの濾過、カメの餌の食べ残しはメダカなど他の生き物が食べてくれる、そして水が多いですから水質が安定します。気温による水温の変化も小さい。上部フィルターは出来れば水中モーター式を選んで下さい。普及型では水面が低いと水を吸いにくいときがありますし停電後に止まってしまいますので。上部のフィルターを適当に掃除すれば、水換えは週に1度か2週間に一度で済んで楽ですね。水換えを頻繁に行うと、子ガメをいじくり回すことになり、ストレス面からみてもよくありません。なお、都会では水道水そのものも現在最悪の状況ですが、これも宿命とあきらめて慣らしてしまうしかないでしょう。私のとこみたいに淀川の下流地域でも出来たのですから。


別のところにも書きましたが他の生き物との共生は別の意味もあります。つまり水の汚れのバロメーターです。水質が悪化するとまずエビが死にます。そして次にはメダカが死にます。ここまで来ればイエロー! 当のカメは案外平気な顔をしているかも知れませんが、悪臭漂う状況はいただけないですね。飼い主の品性にも関わってきますから砂利をかき回して水の全入れ替えをしましょう。こうしてカメの身代わりになってくれる小動物には感謝、感謝です。

場所と餌

置く場所ですが、出来る限り屋外をお勧めします。子ガメには太陽光が何よりも栄養です。体を乾かす場所には直射日光が当たるように場所を工夫して下さい。寒冷地は別として、冬も屋外で大丈夫です。ガラスでふたをしておくと真冬でもひなたぼっこをします。屋外だと気が向いたときにさっと水換え出来るのが利点。ポンプの水の出る方向を水槽の外に向けてやるだけで排水できます。えさはよく書いてあるように日に何度もやる必要はないでしょう。朝晩二回で十分です。下に厚めに砂利を強いてイトメ(イトミミズ)を住まわしておくとどうでしょう。お腹が空いたら手でかき分けて自力でハンティングするようです。市販のカメの餌(レプトミンなど)はよくできていますね。これだけやっていれば育ちます。食が細い子ガメは冷凍赤虫などで餌づけるといいでしょう。時に少量のささみとか刺身も。二歳くらいからは2日に一度の餌やりで十分ではないでしょうか。


老婆心ですが、愛情のあまりに凝りすぎた食餌はマイナスだと思います。嗜好にまかせて満腹にしてやれば大きくなるのははやいでしょうが、それは飼い主の満足感のみの話。非常の場合、例えば引っ越しや旅行などでカメを手元から放すこともあります。その時のことを考えて下さい。カメの知識のない人にあれこれ難しいことを頼むことは出来ませんね。とりあえず固形飼料ならそれだけでも育つようなシンプルな食生活が出来る方が、カメにとっては幸せなのではないかと考えます。


その他の注意点

子ガメは臆病ですからあまり干渉しないこと。目の前で餌を食べないからといってあせらないで!あなたがいなくなってから食べています。今回私が飼った子ガメなど2ヶ月も食べるところを見せてくれませんでした。でも隠れ家に隠れるそのスピードの速さで健康状態は分かりますね。心配なら夜、蛍光灯をうっすらつけて冷凍赤虫などをそっと入れてやって下さい。昼間ほど警戒しませんから食べるところを見せてくれるかも知れません。また、複数を飼育していて、個体の大きさに大差がついたら別に飼う方がいいです。子ガメは寝るときには、水面に鼻を出して寝ますから、水が多いと一晩中浮いているのがしんどそうにも見えます。ホースを固定する吸盤を水面の下5センチくらいのところにいくつかつけてやると、それを足場にします。


冬眠について

はじめの一年で身体は倍以上になって優に10センチは超えるでしょう。もう何でも食べるし安心と思ったらカメは突然この世を去っていきます。次のヤマは5年です。ここまでは冬場冬眠させずに越冬させるのが得策でしょう。小さいうちは体温調節も下手だし、五年を過ぎて飼い主がカメのボディランゲジもわかるようになれば冬眠も考える時期かと思います。もちろん冬眠をさせずに、ヒーターなどを利用して部屋の中で起こしておいて飼うこともできます。むしろこの方が、ペットとしての本来の飼い方なのかも知れませんね。ずっと一緒にいられるんですから。


過酷な生命線、ヒーティング

特に野外の場合ですが、ヒーター1本がカメの命綱です。これは実に心細い! 熱帯魚の場合はヒーターがあまり傷みませんが、カメの場合にはそれを踏んづけたり、線を引っかけたり、また水も汚れるせいかヒーター自身の表面がボロボロになります。このような状況で不慮の事故が起こる可能性は消せません。そこでこの不安を少しでも解消するために、
ダブルヒーティングを考案しました。


やり方は簡単。規格よりもワット数の小さな(半分程度)ヒーターを買ってきて2本付けるだけ。これでどうなるかというと、片方のヒーターが壊れた場合、もう一本があるため閾値を超えるほどに温度が下がることを防ぐことが出来ます。また片方のサーモスタットが壊れた場合、一本では閾値を超えるほどに高温になることが防げます(もう片方はサーモが効いてOFFになる)。これで、カメの生命力からして1日2日はしのげますね。死ぬことはないはずです。

2本のうち1本は25度固定のサーモ付きヒーターにすれば設定が楽です。もう一方は15度くらいに設定しておくと日較差が出て良いと思います。1日のうちでも夜間冷却で水温は15度近くになるでしょうし、天気の良い昼間は日差しを浴びて25度くらいまで上がるでしょう。状況によってワット数を変えることでいろんな気温の折れ線グラフになると思います。

まとめ

わたしがこれを書いた理由ははじめに言ったように、不幸なミドリガメをこれ以上増やしたくないためです。強い個体だけがサバイバルで生き残るような飼い方より、なるべく多くの個体が元気に育って欲しい、そして興味本位でいたずらに買うのはやめて欲しい。十年生きたカメがいたとしてもそれは十年生きたんじゃない。十年かけて死んだんです。カメは不調を訴えるのが下手な生き物ですから、あなたの愛情だけが頼り。半生の友になりうるペットは他にはいません。ミドリガメに大きな愛を!


後記


子ガメと言ってもウチの亀も7年以上が経過してしまった。先日アクアショップでドロガメの子供を見て、大きく心が揺れました。ちっちゃくてかわいいですね。この亀はせいぜい15センチくらいまでしかなりませんからペットとしてはアカミミよりも向いているかも知れません。
(98/7/18)

子ガメを連続して事故でなくしてしまいました。防げるはずの事故が起きてしまうことは、飼い方のテクニック云々ではなくて愛情の問題です。忙しいとかと言うことは理由になりません。これを読んでいる方は、うまくカメが飼えるようになったら、次にはその愛情を長い年月、維持し続けることの難しさを考えて欲しいと思います。命はなくしてしまうともう元には戻りません。(2002/06/24)

その後子ガメは飼っていませんが、ザリガニが毎年冬に子をたくさん作ります。生命の誕生はすばらしいですね。夏に新しい血を入れますが、もう10年近く、引き継がれてきた命です。 その中の幸運な?一匹は熱帯魚の水槽で掃除番をします。ザリガニってきれいな生き物です。先代の当番役は途中で色がブルーになって宝石のようでした・・・熱帯魚に対抗したのですかね、、(2003/04/30)

ミントが子ガメだったのはもう40年も前のことです。 素人が書いたこのページも、予想以上にたくさんの方に読んで頂いているようです。その後も子ガメは飼っていませんが、いまも、このページに書いていることは間違っていないと思ってます。 小学生だった私がすでに50歳になってしまいました・・・ ほんとにミドリガメは長生きです! レプトミンと煮干し、この数年はほとんどこれだけで育ててます。 2011/09/17

ミドリガメについていちばんの疑問はズバリ寿命でしょう。さて、ちゃんとした飼育下での最長記録があるのでしょうか・・・。ミントを参考にするなら、41年は生きています。 ですから30年までと言うのは間違いです。40年くらいまでと言うのが間違いかどうかはもうちょっとしたら解ります(笑) 長生きしたからすべてが正解!ってことでもないとは思います。 たまたま私とミントのご縁が深かったってことでしょう。 彼女にはもっと長生きしてもらいたいです。 この世に未練があるとすれば、ミントを置いてゆけないってことがその一つになりますね。 2012/05/18


2012/05/18 改訂

 

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