桂林荘雑詠諸生に示す

<原文語釈>

*1桂林莊 作者が日田(ヒタ)に開いた塾の名。

*2休道 道は言と同じ。休は勿と同じ。言ってはならないという禁止の語。

*3同袍 袍は‘どてら’。どてらを貸し借りしあうほどの友人。

*4柴扉 粗末な戸。桂林荘の門をさす。

<解釈>

 言うのはやめなさい、よその土地での勉学にはいろいろとつらいことが多い、などとは。同じ袍(ドテラ)を着(キ)合うほどの友がいて、自然と互いに親しむようになるのだ。

<出典>

 江戸、広瀬淡窓(ヒロセタンソウ)(名は建 1782―1856)の「桂林荘雑詠諸生に示す」(桂林莊(*1)雜詠示諸生)と題する七言絶句。『遠思楼詩鈔』。

遠思楼詩鈔 えんしろうししょう

 江戸、広瀬淡窓(ヒロセタンソウ)(名は建(ケン) 1782―1856)の漢詩集。建にはまた遠思楼主人、青渓などの別号もある。学者、教育者、詩人として、弟旭荘とともに名高い。『遠思楼詩鈔』の名はその居宅遠思楼にちなんでいるという。(野地安伯)

<解説>

 作者が私塾桂林荘で学ぶ塾生に示して、彼らを励ました作。塾生たちが甘えを退けつつ、互いに励まし、いたわり合ってゆくようにという作者の姿勢がうたわれる。「同袍」には、学問に志して遠方の地からやってきた者同士のいたわりの思いがこめられている。桂林荘を囲む自然の厳しさは、塾における生活と学問の厳しさをも語っているとみることができるが、それとともに、友と学ぶ喜びもまた、この詩句の底に流れる感情の一つであるに違いない。(野地安伯)

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