トルファンに遊ぶ

カシュガルからの行き先は、そのまま国境を越えてネパール方面に行くか、戻るかである。その他の地域はまだ解放されておらず、外国人は行けない(当時)いったんウルムチに戻ることにした。帰りは飛行機で1時間。3泊4日のバスの往路がウソのようだ!

ウルムチに落ちつくことなく、さっそく準備をする。バスで砂漠を走ること6時間でトルファンに着いた。6時間などいまや長い時間ではない。時間の感覚が大陸用に切り替わってしまったせいだ。

トルファンの光景

トルファンとは「くぼんだ土地」という意味だ。いわゆる盆地で、海抜はマイナス150メートル、中国で最も低いところ。1日の気温の較差が50度もある。真夏は烈火で、孫悟空の「火焔山」が燃えている。民家の家の前にはどこにもアヒルやカモが遊んでいる。これは町中に水路が縦横に走っているから。ここは紛れもなくオアシスであることがわかる。

サトウキビを売る人

手前のおっちゃんはどうでもいい。向こうに立てかけてある黒い竹のようなものがサトウキビ。空気が乾燥してるからのどがカラカラになる。30センチほどにカットしたものをいつも持ち歩いて、咬みしだきながら歩く。口の中にヒンヤリした甘い汁が拡がる。

歯医者さん
露天業の極めつけはこれ!歯医者さん。白い幕の赤い十字に哀愁がある。
ウルムチへのバスの切符

この切符には恨みがある。トルファンからウルムチへは5元(200円)で帰れる。終点はウルムチの駅。ところが途中エンジントラブルで立ち往生。時間が遅れた。街の外れにさしかかった頃には日も落ちて。そしてバスは突然止まってしまった。運転手がなにやら叫んでいる。乗客はぞろぞろと降りだした。何!ここで降りるのか!ここはどこ?仕方無しにみんなについて行く。一人右に折れ、一人左に折れしてだんだん人が減ってゆく。でも誰かについて行くしかない…夜の冷気が身体にしみ込む。寝るところがなければ凍死してしまう!意を決してその中の一人の軍服を着たおじさんに着いていくことにした。これは賭だ。最後はその人と二人だけになってしまった。「ウルムチ駅はどこですか」と私は訊いた。彼は黙ってまっすぐ指さした。どうやらこの人も同じ目的地のようだ。助かった!本気で死を感じていた。この時の心細さは言葉では表現できない!駅について猛烈にダッシュした。実はその晩出る、西安行きの電車の切符をすでに買ってあったのだ。

NEXT

前のページへ戻る