向井荒太の動物日記
愛犬ロシナンテの災難



第二話


 第ニ話 
うさぎは寂しがり屋である。
大変弱く、相手をしてやらないと、死んでしまうと言われている。
しかしこれは、「触れ合いを大切にしよう」という教えでもある。

触れ合いが欲しいのは俺達だという周りの連中。
人間というのは常に発情期なのか。
今日もまた荒太の研修は始まる。

九官鳥のゴールドちゃんの飼い主がやってきた。
ゴールドちゃんが風邪だと言う。
確かに。ゴールドちゃんは、ゴホゴホとセキの声真似をしていた。
これは飼い主の言葉を覚えただけで、
鳥はセキはしないのである。
しかし、ゴールドちゃんは、ストレスがたまっていた。
荒太は「空に飛びたい?」とゴールドちゃんに声をかける。
そして・・
体育館でゴールドちゃんを飛ばす。
ゴールドちゃんの姿、
それはそれは自由を手にした楽しく美しい姿であった。

しかし・・・
飼い主が引き取りに来た後、
家で飼い主が離してしまった時、
ゴールドちゃんは大空に飛び立ってしまった。
そして、野良猫にやられてしまったのである。
怒る飼い主は、病院に訴える。
「人殺し!」と。


一方、チャッピーを亡くし、まだ悲しみが癒えない春奈。
自分を取り戻せずに、ほとんどペットロスにかかっていた。
どんな言葉にも敏感になってしまい、
時にはふさぎ込み、時には怒りを人にぶつけていた。
彼女にとってチャッピーは、
10歳の時に、お父さんから誕生日プレゼントとしてもらった
大切な家族、兄弟のようなものだったのだ。

荒太が学んだこと。
ペットは寿命が短いこと。
ペットが死んで、大半の人間は、自分自身が寂しくて泣く。
動物の場合は、自分の家族が死んだとき、
まず素直に泣く。そして自分自身をすぐに取り戻し、
また新しい道を歩き出す。
人間も、ペットの死を、自分や人のせいにせず、
素直に悲しめばよい。死を認めること。死を受け止めること。
それだけでよい。
悲しみから逃げず、ペットとの思い出を大切にし、
そして一歩を踏み出す。乗り越えていくのだ。

鳥は空を飛ぶから鳥なのだ。
大切なのは、犬は皆が皆雪が好きなわけではない。
丸くならない猫もいる。
泳げない犬もいるし、
犬掻きといっても、本当は、必死に助けを求めている姿なのである。
飼い主よ!気づけ!
本当のことを! 本物を気づけ!

ゴールドちゃんは、一度でも大空を飛ぶことができた。
野良猫にやられてしまったが、とても色んな事を知れた。
チャッピーも、飼い主の春奈に見取られて死んだ。
とても温かかったと思う。

幸せとは何か。そして、自分よりも寿命が短いペット。
寿命が自分よりも長くない分、よかったのかもしれない。
飼い主次第で、ペットの人生も決まる。

そして荒太は・・
獣医にとって、ペットと付き合うということは、
飼い主ともつきあうという事も学んでいくであろう。


前に戻る