ビッグウイング


第二話

 第ニ話 オヤジ、負けんじゃねえぞ!(川口和久)
20:30着 宮崎発ANA618便
休憩中でも指示されれば、
笑顔で仕事に戻る吉川久美子。
何かホッとするような天下一品の笑顔だ。
そして、おせっかいだけは相変わらず疫病神?だった。

久美子が入社してから一週間が経とうとしていた時、
週に一度中身を点検する「ご意見箱」、
中身は突然増えていた。
責任者の栗山は、きっと久美子への苦情だと確信していた。
もしもご意見箱の中身が、ほとんど久美子への苦情だったなら、
とうとう来週からクビが決まると言う。

09:05発 台北行き C1 107便―――――
国際線のロビーにデビューした久美子。
パッと華やぐ笑顔で今日も頑張る。
「何か美味しい物が食べれる所はありますか?」
っと、14:00発搭乗予定、子供連れの男性が質問した。
しかし・・
子供はすねている。
そしてその子は走り出してしまった。
追いかけた久美子は、子供からあるボールを預かる。
お父さんに渡して欲しいとの事だった。
そしてその子供は行方不明になってしまった。

実はこのお父さんは、
日本で自由契約になり、
台北での最後の挑戦を試みている塩見選手だったのだ。

野球選手というのは、なかなか家に帰ってこれない職業である。
子供は反抗期でもあり、そんなお父さんに嫌気がさしていた。
時は刻々と14:00に近づいていく。
色んな事情を知った久美子は、
その子供を探しに探し出し、
自分のお母さんの話をした。
「親って凄いんだよ」
何かが解けた子供。素直さを取り戻した!
そして・・・
「オヤジ!ボロボロになってでも頑張ってこい!
俺とオフクロの事よりも、自分の事を心配しろ!
忘れ物だよ。ウィニングボール!」
と言ってボールを投げた。
キャッチする父。熱くなる父。
勇気と力を取り戻す父。
二人の絆は一段と深まった。

それを見ていたマネージャーの花村。
「そばにいるだけが愛ではなく、
どんなに離れていても愛を感じる事が
彼女本当の場所かもしれない」
塩見選手にあこがれている栗山も、
その親子を見て、久美子の姿を見て、
微笑んだ。

さぁ、来週も何をやらかして、
何を学ばせてくれるのか!?吉川久美子!

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