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鹵獲した三段空母と巡洋艦は宇宙船ドックにあった。 それぞれ修理と地球型化工事が行われ、
航空母艦舞洲(まいしま)、巡洋艦津軽(つがる)として生まれ変わった。 波動エンジンを得て地球艦隊の攻撃力、速力が向上しているとはいえ、 どちらの艦も元がガミラス艦艇であるため、攻撃力、防御力、速力のすべてにおいて、 地球艦隊を上回っていた。 特に防御力では強固な艦殻を持ち、前衛としての活躍が期待される。 また、舞洲、津軽はワープ航法が可能で、 場合によっては2隻による小ワープでの緊急輸送と言う手段も取れる。 舞洲の獲得は地球艦隊に大きな戦力の向上ももたらした。 現在のブラックタイガーの運用は、戦闘に突入する前に外部波動エンジンユニットから離艦し、 攻撃完了後は戦闘が終了するまで戦闘宙域外で待機していなければならなかった。 つまり、1戦闘で1攻撃しか出来なかった。 空母である舞洲ならば、戦闘中の発着艦が可能で、 攻撃回数の増加、また整備能力も向上され、稼働率が飛躍的に向上する。 また、従来の搭載方法では重力下での運用は、発艦、着艦ともに不可能だったが、 舞洲に搭載されることにより可能となった。 舞洲、津軽が土方艦隊へ編入された事から、 正式な名称もないままに運用されてきた土方艦隊の編成ならびに呼称を変更することになった。 艦隊を第一艦隊とし、以下の戦隊からなるものとする。 第一戦隊 所属艦:戦艦三笠、駆逐艦葵、雷、潮、榎 第二戦隊 所属艦:巡洋艦五十鈴、駆逐艦照月 第一航空戦隊 所属艦:航空母艦舞洲、巡洋艦津軽 しかし、正式名称の第一艦隊と呼ぶ者はなく、従前同様、 艦隊司令長官の名を取って土方艦隊と呼ばれ続けることになる。 赤白黄色に彩られた舞洲、津軽は月軌道に進出、慣熟訓練が行われた。 中でも2隻のワープ実験は確実に習得したい航法だった。 「山南、火星で待っている。 ワープを成功させてくれ」 舞洲の艦橋に土方はいた。 山南は沖田、土方の後輩で、 宇宙戦士訓練学校の教官をしていた。 期待の新鋭艦の艦長には経験豊かな人材に任せたかった土方は、 自分の後任で宇宙戦士訓練学校の校長に就任する予定だった山南を舞洲艦長に抜擢した。 「お任せ下さい、校長… いや、司令でしたな、土方さん」 まだ記憶が訓練学校の方が色濃いため、つい土方を校長と呼んでしまったが、 そのお陰で2人の緊張がほぐれた。 期待の新鋭艦である舞洲と津軽はただの新鋭艦ではない。 ガミラスからの初の鹵獲艦だった。 地球型化工事をしたとは言え、その装備、設備とも不慣れで違和感のあるものであった。 その上ワープ航法はヤマト乗組員しか経験したことのないものである為、 いやが上にも緊張が高まってしまう。 軍人ではあるが、教育者としての側面が強い山南は、 もしかするとその緊張を見抜いて、あえて校長と声を掛けたのかも知れない。 「頼んだぞ、山南」 「はっ」 二人は互いに敬礼しあい、土方は艦橋を後にした。 待機していた百式探索艇に搭乗し、三笠に帰っていった。 月軌道から先行して土方艦隊の7隻が火星に向かう。 それまでの時間、舞洲、津軽はワープ準備に余念がなかった。 * * * * * 1日経過し、土方艦隊は火星へ到着していた。 ダイモスの軌道外で待機し、舞洲、津軽のワープアウトを待つ。 ヤマト以外の艦では行われたことはないが、ガミラス艦であった2隻では確実性が高い。 「艦長! ワープ前総点検が完了しました」 「うむ、土方司令に連絡し、ただちにワープを行う」 ガミラス様式の艦橋で地球型提督服に身を包む山南に、準備完了が報告された。 これまでの訓練で、ガミラス様式であっても体が自然に動けるようにしてきた。 計器類も地球語化されているし、地球語版マニュアルも作成してきた。 「土方司令。 これより舞洲、津軽はワープを行います」 「うむ、頼む」 モニター越しに報告し、月軌道上の舞洲から一航戦へ命令が下る。 「これより第一航空戦隊はワープを行う。 ワープ準備!」 山南の号令一下、舞洲、津軽の乗組員はにわかに色めき立つ。 航海班、機関科は準備に追われ、他班の要員はシートベルトで体を固定する。 ヤマトからワープについての情報は得られていない為、何が起きるのか、 どうなるのか、誰もわからない状況だった。 しかし、そのお陰で無駄な緊張や萎縮はなく、訓練通りに体は動いた。 「ワープ準備完了!」 航海長から報告を受けた山南が、静かに頷き命令を発する。 「ワープ開始!」 「3、2、1、ワープ!」 ガミラス型波動エンジンが唸りをあげ、瞬時に速力を押し上げる。 外から見ていたなら、一瞬にして2隻が姿を消してしまったように見えただろう。 瞬く間に秒速30万キロを超え、まさに時間と空間を跳躍するかのごとく突き進んでゆく。 一方、ダイモス沖で一航戦のワープアウトを待つ土方以下は、その時を固唾を飲んで待っていた。 予定なら艦隊の30宇宙キロ先にワープアウトする。 レーダー手がレーダーパネルを凝視するのは必然として、手の空いている者は窓の外を凝視し続ける。 さすがに30宇宙キロ先の艦を肉眼で視認するのは不可能と思われるが、 背景となる星々が舞洲、津軽と重なり見えなくなることにより、 ワープアウトを確認する事は可能かもしれない。 待ち続ける事、56秒。 ヤマトのワープテストでは1分掛かっている、残り4秒。 そして10秒経過…、30秒経過…、レーダーにもワープアウトの反応はない。 もしかすると、一航戦はどこかの異次元へ吹き飛ばされてしまったのでは? そんな不安がよぎり始めた2分30秒後、突然レーダーに2つの光点が現れる。 「12時の方向、距離30宇宙キロに大型艦2確認。 舞洲、津軽です」 湧き上がる歓声。 肉眼でも舞洲と津軽の物と思われる舷灯が確認できた。 人類は着々とワープ航法を、その航海史に刻み始めたのである。 一方、一航戦ではワープアウト後の確認作業に追われていた。 「各部署に告ぐ。 各部署は直ちに点検作業に入れ。 また、各員の体調の変化についても逐次報告せよ」 ワープが人体に与える影響については、何らデータがない。 イスカンダル人やガミラス人には問題がなくとも、地球人に影響がないとは言えないのだ。 ワープ直後は自己申告による体調の報告。 地球に帰還後に精密検査を行い、影響調査を行う。 この調査結果も、今後地球型波動エンジンを開発していく上でのデータになってゆく。 2隻が土方艦隊へ接近を開始し始めたのと同時に、舞洲から三笠に通信が入る。 「土方司令、舞洲、津軽はワープテストを完了致しました。 開始のご報告より若干開始時間が遅れましたが、ワープ自体は1分と掛からず完了し、 艦体の損傷、乗組員への影響も見られません」 「うむ、ご苦労だった。 直ちに合流し、タイタンへ向かう」 * * * * * 吉村隊、原田隊のブラックタイガー30機は舞洲に配置転換されていた。 舞洲では上甲板が着艦専用。 第一飛行甲板は原田隊12機の発艦用。 第二飛行甲板が吉村隊18機の発艦用、第三飛行甲板は資源輸送用格納庫として運用された。 各飛行甲板は重力制御され、上甲板は無重力運用とされた。 これは発艦滑走中に上段の飛行甲板に接触するのを防ぐ目的で、 上段の飛行甲板が途切れたところで無重力となる。 滑走中の甲板が途切れる時には重力が働いていないので、 下段の飛行甲板に上段の航空機が沈み込んで衝突することなく、多段甲板からの同時発艦を可能としている。 着艦は艦後方より接近し、相対速度を0とする。 その後、艦より着艦牽引ビームにて機体と接続されエレベータ上まで牽引、固定される。 この運用により多段同時発着艦が可能となり、戦闘行動中の弾薬補充、再出撃が可能となった。 重力下での運用に比べたら格段に容易ではあるものの、 三段空母の特性や多段同時発着艦など特殊な運用になるので、舞洲投入後の航空隊は慣熟訓練に余念がなかった。 単機での発艦、着艦訓練。 単一甲板での複数機発艦、着艦。 多段同時発着艦と、航行中の多くの時間を割いていた。 吉村をはじめとするベテランから繰上げ卒業で配属された新兵まで、実戦の経験数は異なるものの、 先の土星空域会戦で全員が生還した。 その自信もあり練度も着々と上がり、精強な航空隊へと成長した。 「司令、タイタンに到着しました」 「うむ、これより物資の積込み作業に入る。 舞洲はタイタンへ降下後、タイタン重力圏での航空隊の飛行訓練を実施せよ」 第一戦隊が従来通りの積込みシーケンスをこなす中、第二戦隊は第一航空戦隊の津軽を伴い、 タイタンの一つ外側の衛星ヒペリオンの軌道を周回しながら警戒態勢を取った。 舞洲は土方艦隊最大の格納庫を有する為、タイタン滞在中は常にタイタンに着陸することになる。 「これより本艦はタイタンへ着陸する。 重力圏進入」 山南の指揮の下、舞洲はタイタンの赤道上をタイタンを左に見ながら進入する。 タイタンの重力を受け始める頃から右90度横転する。 採掘現場上空で停止し、垂直下降を始める。 「ギアダウン」 艦底より着陸脚が下りる。 徐々に高度を下げ着陸脚が接地、サスペンションがゆっくりと沈み込む。 各着陸脚で高さが調整され、飛行甲板は水平を確保される。 タイタンは地球に比べ、重力で約7分の1程度、大気は1.5倍。 単位表面あたりの大気量は地球の10倍となる。 そんな微弱な重力と濃い大気の中では操縦特性に大きく影響が出る為、 地球での訓練だけではタイタンを飛行することは難しい。 着陸床脇に整備された地上滑走路にブラックタイガーが着陸する。 「着陸時のノーズダイブが結構キツイな。 濃い大気でエアブレーキの効きがいいのかな?」 隊長の吉村自らタイタンでの発着訓練の先陣を切る。 ベテラン組は月や火星での航空機運用経験がある為、タイタンでの操縦特性にいち早く順応出来るからだ。 それでもブラックタイガーをタイタンで運用するのは初めてなので、特に着陸には神経を使う。 タイタンでの特性を十分に把握してから着艦訓練を行う予定になっている。 舞洲の重力下での運用は次の通りである。 発艦は多段交互発艦となる。 第二飛行甲板優先で、第一飛行甲板と交互に発艦する。 これは重力の影響で第一飛行甲板から飛び出した機体が沈み込み、 第二飛行甲板から発艦する機体との接触を防止する為である。 また、第一、第二飛行甲板とも電磁カタパルトを装備し、向かい風0の状態からでも発艦を可能としている。 着艦は艦後方より接近し、着艦牽引ビームにて進入コース、速度を誘導される。 機体が上甲板に接地したところで、艦尾より機体に向けてアレスティング・ビームを発射。 機体に接続され急制動させる。 アレスティング・ビームは左右舷側一対で1基。 計6基装備され、上甲板よりの滑落を防ぐ。 上甲板先端には滑落防止索も展開される。 しかし万が一を想定し、着艦時は第一飛行甲板は使用禁止となる。 それでも第二飛行甲板を使用することで、同時発着艦を可能としている。 「思いのほか着艦が楽だな。 地球で着艦訓練するより安全かもしれんな」 地上訓練から着艦訓練に入った吉村と原田が話し合う。 密度の濃い大気のお陰で揚力を維持しやすく、失速のリスクが軽減されていた。 ベテラン組の着艦訓練でデータを蓄積した舞洲の着艦制御の誘導も精度が上がり、 新人組も重力下での着艦を行えるほどになってきた。 航空隊の練度上昇は、そのまま土方艦隊の戦闘力上昇に繋がった。 輸送力の増強もあり、着々と戦力を増強する地球防衛軍。 地球のサバイバル戦は第2局面を迎えていくのだった。 |
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| 初出:2013/02/07 |