第二外国語は何を選べばいいのか?

大学や高校の「第二外国語」。
一体、どの言語を選んだらいいのでしょう。

第二外国語は何を選ぶのがいいか,
「コスパ」だとか,「最強は」とか,「楽勝は」などと,いろいろ言われています.
選び方、おすすめを考えます




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■どの言語でも、きちんと取り組めば、それぞれの言語なりに絶対に面白いし、いろいろな意味で自分のためになります。

■面白さや楽しさといったものは、実際のところ、言語そのものより、〈学び方〉に根底から左右されます。また、その授業の〈先生〉にも大きく左右されますし、実は〈教科書〉にも大きく左右されます。

■言語と,〈学び方〉は自分で決められますが、先生や教科書は決められません。これがつらいところです。しかし、学習書は自分で選ぶことができます。要するに、出会う先生や決められた教科書にかかわらず、〈学び方〉と〈学習書〉は自分で選択し、楽しく、有意義に学んでいくことーーこれが、どの言語を選ぶにせよ,最も重要なことです。

■気持ちの余裕があれば、一度にではなく、今年はこれ、来年はこれ、といった具合に、いくつかの言語を学ぶのも、〈学び方〉さえきちんとしていれば、少ない努力で、大きな収穫があります。

■一番つまらない〈学び方〉は、「単位のために」でしょう。限りなく時間の無駄、というより、〈人生の無駄〉に近い時間になるでしょう。お勧めできません。これまでの学校生活で、「単位のため」「必須だったから」学んだ、あなたの嫌いな科目と、似たり寄ったりの、長い経過を辿ることになります。心と体の大変な浪費、大変な消耗です。「コスパ」最悪の〈学び方〉です。そんな人生の使い方は避けたいものですね。
■もし学校でどうしても何かを選択しなければならないという条件があるなら、どうせ学ばねばならない、その言語を学ぶことを、圧倒的に楽しく、意義のあるものにする、そうありたいものです。

■大学の授業の開講具合から見ると,現実的に選択肢に上ってくるのは、英語を除くと、中国語、スペイン語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、朝鮮語=韓国語くらいでしょう。ヒンディー語、アラビア語、ポルトガル語も話者の人口は多いのですが、授業が開設されている学校は少ないでしょう。残念ながら、ロシア語もあまり開設されなくなっています。これらの言語は世界に数千あると言われる言語のうち、話者の数の多い、大変巨大な言語です。
なお話者は少なくとも、国際語や族際語と言われるエスペラントは注目されますが、これも開設校は少ないでしょうね。エスペラントは、ヨーロッパの大きな言語のエッセンスを限りなく易しく学習しやすくしたような言語で、とても面白いものです。他の言語を学ぶ際にも、助けになります。もちろん実際にも使われています。

■ここであげた言語のうち、日本語圏の人々にとって関わりが深く、これからもさらに関わりが拡がるのは、何と言っても、朝鮮語=韓国語です。
さらに中国語も。独仏露語は、この点では事実上、ちょっと開きがあります。

■中国語と朝鮮語=韓国語は全くタイプの違う言語です。朝鮮語=韓国語は、日本語とことばの仕組みが非常に良く似ています。語順も日本語と細かなところまでそっくりです。ただ、発音と文字は全く異なります。
中国語の語順は漢文を考えていただければ、ある程度想像がつくでしょう。中国語の発音は、朝鮮語=韓国語とも、日本語とも、全く違います。

数千ある世界の言語の中で、ことばの仕組みが日本語と最も近しい言語は、朝鮮語=韓国語です。この点、日本語を知る方々が、朝鮮語=韓国語を学ぶと、日々が驚きの連続となるでしょう。言語自体に知的な楽しみがたくさんつまっているようなものです。

実際に〈話す〉機会が圧倒的に多いのは、まず朝鮮語=韓国語です。今でも1日に1万人が日本と韓国の間を往来しています。大都市を走る電車の中では朝鮮語=韓国語で内緒話はできません。それほど、朝鮮語=韓国語の話者は多いのです。大学にもよりますが、韓国や中国からの留学生は少なくないでしょう。その言語で「こんにちは」を覚えて、「こんにちは」と返事が返ってくる体験を、日本にいながら味わえる言語は、ほとんどありませんが、朝鮮語=韓国語はその貴重な言語です。「こんちには」ということばを覚えて、心と心を一瞬なりと通わせる体験ができる。これは考えてみると、素晴らしいことです。

■朝鮮語=韓国語は、米国にも210万人、中国にも250万ほど、カナダやロシアにもそれぞれ22万ほど、オーストラリアにも12万ほどといった具合に、かなりいろいろなところに話者が拡がっています。既に朝鮮半島だけの言語ではなくなっています。ロサンゼルスやバンクーバー、ニューヨークなどにはコリアタウンが形成されています。日本から留学に行って、米国、カナダ、ロシアなどで、韓国人の親しい友人ができたなどという人は、大学の授業でも、もうこれまで数限りなく出会っています。そして多くの在日朝鮮人・韓国人と呼ばれる人々も日本には共に生きています。

ドラマ、映画、音楽などでの朝鮮語=韓国語との出会いは、今後も拡大の一途をたどるでしょう。朝鮮語=韓国語圏がIT先進国であることも、この言語との出会いを加速します。怪しいサイトでは、朝鮮語=韓国語は使い物にならない、などと書いてあったりしますが、全く現実を見ていないわけですね。

■よく、大学の第二外国語なんかでは実用レベルになど達しないなどと、書いてあることもあります。ネット上にもそうした言説が少なくありません。こうした言説に、学び始める前から、洗脳されない方がよいでしょう。多くの外国語教育=外国語学習は確かにそうなのかもしれません。日本中で言語学習の累々たる犠牲者が日々作られているようなものとも言えます。もちろんそういう状況も目にしていますし、学ぶ方々の悲しみは、ひしひしと伝わってきます。

■ただ、絶対に間違ってはいけません。大学の第二外国語や第三外国語において、朝鮮語=韓国語がいわゆる実用レベルに達している人は、もう数限りなく,実際に見ています。韓国語能力試験の最上級とか、ハングル能力試験の準一級などといった水準の方もおられます。内容にもよりますが、字幕なしでドラマをそれなりに楽しめるとか。大学だけでもそれほどの力量を培って卒業なさる方々が、毎年、私が担当している大学だけでも、何人もおられるのですから。もちろん他の言語とて、ある程度の実用に叶う形までできるようになる人は、必ずいるのです。辞書を頼りに、ちょっとしたウェブサイトの記事を読むとか、詩を味わうとか、人と出会って、すっかり友達になれるくらいの会話力があるなど、です。要するに、きちんと取り組めば、言語ができるようになる可能性は、決して小さくありません。そして可能性は、これから学び始める全ての方に開かれています

■大切なことは、言語を学ぶ〈構え〉を作ることです。独学でもことは同じです。その言語をいかに学ぶのか。もし英語を学ぶ経験が、6年も学んだのに、はかばかしくないものであったら、学ぶ〈構え〉そのものを根底から変えなければいけないわけですね。言語を学ぶ悲しみを味わったのなら、学ぶ〈構え〉を、〈学び方〉と〈学習書〉を変えなければならない。人生を変えたければ、新たな選択をせねばなりません。
言語との出会いは、〈構え〉さえしっかりしていれば、人生をきっと豊かなものにしてくれます。多くの人々がそういう歓びを共にしてきたように。

■ここでは紙面に限りがあります。言語を学ぶ〈構え〉を作ること、その言語をいかに学ぶのか、こういったことについてさらに詳しくは、よろしければ、『韓国語をいかに学ぶか』(野間秀樹著, 平凡社新書, 2014年)をご覧いただければと存じます。朝鮮語=韓国語だけではなく、母語としての,あるいは非母語としての日本語も含めて,英語など様々な言語を学ぶためにも、きっと役に立つのではと思います。

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--そういったことを共に考える、〈希望の書〉でありたいという願いから、書いています。同書の紹介はこちらのページをどうぞ。朝鮮語=韓国語の推薦学習書については、こちらのページをどうぞ。

■皆さんのご健闘を、心よりお祈りします。選ぶことばは違っていても、学ぶことの貴さと志は繋がっています。共に,大いに、楽しく、学びましょう。いや、ことばって、素晴らしいものです。