http://www.aurora.dti.ne.jp/~mutsumi/study/sympo_26.html
2003-09-30公刊,2003-10-26Web掲載
黒澤睦「告訴権・親告罪に関する研究(院生研究室から)」SYMPOSION編集委員会編『シンポジオン(明治大学大学院広報紙)』第26号(明治大学大学院,2003年9月30日)5頁。

  1. 原文は縦書きです。

告訴権・親告罪に関する研究(院生研究室から)

法学研究科博士後期課程三年
法学部専任助手 黒澤 睦

 現在、私は山田道郎教授の指導の下、告訴権・親告罪に関する研究を行っている。
 告訴権に関する規定は、既に治罪法で現在の規定の原型ともいえるものが数多く置かれていた。その後、数度の改正で、主観的不可分、告訴期間、告訴取消の期限、不起訴理由の告知等の規定が加えられ、近時、一部の親告罪について告訴期間が撤廃された。
 従来は、訴訟条件である親告罪の告訴との比較で、非親告罪の告訴は捜査の端緒にすぎないとの説明がなされてきた。起訴・不起訴等の通知、不起訴理由の告知についても、検察官の活動の適正コントロールという公的な側面が強調されることが多かった。
 しかし、微罪処分が認められないことや、真相を知りたいという被害者の切実な思いを考慮するならば、被害者の観点を重視して、告訴事件には捜査義務を認め、告訴権を被害者の適正な捜査を求める権利と構成すべきである。
 親告罪とされるべきか否かは、現行法の下では、告訴権者の意思を尊重して国家による訴追を制限する「許容性」と「必要性」との合成により、政策的観点から決定される。
 (1)親告罪に適用される「首服」の趣旨には謝罪や損害回復の端緒を与えるという観点も含まれる、(2)告訴権者自らが刑事司法を回避して和解等を選ぶことができる、(3)罪種によっては宥和・和解思想が親告罪とされた趣旨のひとつであるというように、親告罪の理念は修復的司法の思想と多くの類似点を持っている。
 法学研究科では本年度から研究者養成型助手制度が導入された。良い研究環境を提供して学位取得を促進するとともに、教育補助業務を通して教育者としての基礎を習得させるというものである。幸いにして、私もその一人として採用していただいた。こうした良き環境を活かして、右に述べてきた研究テーマをさらに探究していきたいと思う。


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