http://www.aurora.dti.ne.jp/~mutsumi/study/20170306_ronso8960.html
2017-11-26Web掲載,2017-11-26最終更新
黒澤睦「親告罪・私人訴追犯罪・職権訴追犯罪としての著作権法違反(1)――TPPをめぐる著作権等侵害罪の一部非親告罪化の動きを踏まえたドイツ・スイス・オーストリア・リヒテンシュタインとの比較法制史的考察――」法律論叢第89巻第6号(明治大学法律研究所,2017年3月6日)89-156頁。
Mutsumi KUROSAWA, Straftaten im Zusammenhang mit Urheberrechtsverletzungen als Antragsdelikte, Privatklagedelikte und/oder Offizialdelikte!? (1): Eine rechtsvergleichende Betrachtung der Situation in Japan, Deutschland, der Schweiz, Österreich und Liechtenstein, The Meiji Law Review, Vol.89 No.6, 2017, The Institute of Law, Meiji University, pp. 89-156.
  1. 要旨・目次
  2. 全文ダウンロード

要旨・目次

要旨

 一で我が国の著作権法における親告罪規定の沿革と趣旨,二で我が国の著作権法における非親告罪化の動き概観した。三でドイツ法における条件付親告罪規定・私人訴追犯罪規定,四でスイス法における絶対的親告罪規定,五でオーストリア法における全面的な私人訴追犯罪規定,六でリヒテンシュタイン法における原則としての私人訴追犯罪規定を検討した。七でドイツ語圏の著作権法における親告罪規定創設の歴史的背景とその歴史的展開を探るとともに,八でドイツ語圏における著作権法違反の訴追に対する国際的影響を横断的に検討した上で,九で著作権等と刑事罰について刑事実体法と刑事手続法の両面から考察を行った。本論文は連載第1回で,一から三までを扱う。

目次

はじめに
一 我が国の著作権法における親告罪規定
 1 著作権法における親告罪規定の沿革
 2 著作権法における親告罪規定の趣旨
  (一)1887年(明治20年)の「版権条例」における親告罪規定の趣旨
  (二)1893年(明治26年)の「版権法」における親告罪規定の趣旨
  (三)1899年(明治32年)旧著作権法における親告罪規定の趣旨
   (1)立法理由書
   (2)貴族院・衆議院での議論
   (3)法案起草者(水野錬太郎)の見解
   (4)いくつかの問題
  (四)1970年(昭和45年)現行著作権法における親告罪規定の趣旨
   (1)立法理由及び国会審議
   (2)法案起草担当者(加戸守行)の説明
    ① 親告罪規定の趣旨
    ② 非親告罪規定の趣旨(親告罪とされない趣旨)
   (3)著作権法における親告罪規定の趣旨をめぐるその他の学説等
    ① 親告罪とする趣旨
    ② 非親告罪とする趣旨
    ③ 問題の所在
二 我が国の著作権法における非親告罪化の動き
 1 TPP交渉以前の非親告罪化の動き
 2 TPP交渉と政府等の対応の流れ
 3 文化審議会著作権分科会・基本問題小委員会『環太平洋パートナーシップ(TPP)協定に伴う制度整備の在り方に関する報告書』
  (一)報告書の前提(12頁)
  (二)国際的な状況についての認識(13頁)
  (三)検討結果(13頁以下)
  (四)問題の所在
 4 TPP協定の内容――著作権等侵害罪の一部非親告罪化?
  (一)我が国の暫定仮訳及び訳文
  (二)英文協定書
  (三)訳語の問題か別の解釈の可能性か
 5 TPP協定に沿った著作権法における親告罪規定(案)とその問題
  (一)商業的規模と営業目的
  (二)親告罪規定による犯罪構成要件の細分化
三 ドイツ著作権法における原則的な条件付親告罪規定・私人訴追犯罪規定
 1 ドイツの刑事訴追制度
  (一)ドイツの刑事訴追制度
   (1)国家訴追主義
   (2)国家訴追主義の例外・修正
    ① 私人訴追制度〔Privatklage〕
    ② 公訴参加制度(被害者の刑事訴訟参加)〔Nebenklage〕
    ③ 親告罪(絶対的親告罪と条件付親告罪)〔Antragsdelikte〕
    ④ 授権犯罪〔Ermächtigungsdelikte〕
    ⑤ 参考――付帯私訴〔Adhäsionsverfahren〕
  (二)起訴法定主義とその修正
  (三)小括
 2 ドイツ著作権法における罰則の全体像
  (一)ドイツ著作権法における罰則の概観
  (二)ドイツ著作権法における罰則の特徴
 3 条件付親告罪規定の沿革――絶対的親告罪から条件付親告罪と非親告罪へ
 4 原則としての「条件付親告罪」(109条・106条~108条、108b条)
  (一)立法過程における条件付親告罪化・一部非親告罪化の趣旨
   (1)1985年著作権法等一部改正法の立法過程
   (2)関連各法における条件付親告罪化・一部非親告罪化
    ① 器物損壊の条件付親告罪化――1985年の第22次刑法一部改正法
    ②-1)旧不正競争防止法における条件付親告罪化・一部非親告罪化――1986年の第2次経済犯罪対策法
    ②-2)データ改ざん(刑法303a条)及びコンピューター妨害(刑法303b条)の条件付親告罪としての新設(刑法303c条)――1986年の第2次経済犯罪対策法
    ②-3)低価値事件のコンピューター詐欺(刑法263a条2項・263条4項・248a条)及びキャッシュカード・クレジットカード濫用(刑法266b条2項・248a条)の条件付親告罪としての新設――1986年の第2次経済犯罪対策法
    ③ 旧商標法改正・旧旧意匠法・特許法・実用新案法・半導体保護法・品種保護法による条件付親告罪化・一部非親告罪化――1990年の知的財産保護強化及び海賊品対策法
     (a)旧商標法
     (b)旧旧意匠法(現デザイン法)
     (c)特許法
     (d)実用新案法
     (e)半導体保護法
     (f)品種保護法
     (g)著作権法
     (h)共通の立法・改正理由
  (二)条件付親告罪規定の趣旨に関する現在の学説
 5 「業的な目的で」及び「業として」の意義――非親告罪としての業的著作権等侵害、条件付親告罪としての業的コピープロテクト回避等
  (一)「業として」の概念(108a条)
  (二)「業的な目的で」のコピープロテクト回避装置等の製造等(108b条2項)、「業として」のコピープロテクト回避(108b条3項)
 6 条件付親告罪における「刑事訴追に対する特別な公益」による例外的起訴――知的財産法違反に特化した準則(刑事訴追・過料手続指針261a条)
 7 私人訴追制度における例外的な検察官訴追――前提条件としての「公益」概念
  (一)「私人訴追」犯罪であることの意味
   (1)検察官訴追の条件としての「公益」(刑訴法376条)
   (2)私人訴追犯罪における「公益」認定の一般準則(刑事手続・過料手続指針86号)
   (3)著作権法等の知的財産法における「公益」認定に関する特別規定(刑事手続・過料手続指針261号)
  (二)私人訴追犯罪のための「調停前置主義」の不適用(刑訴法380条参照)
     〔以上、連載(1)法律論叢89巻6号(2017年3月)89-156頁〕
四 スイス著作権法における原則的な絶対的親告罪規定
五 オーストリア著作権法における全面的な私人訴追犯罪規定
六 リヒテンシュタイン著作権法における原則的な私人訴追犯罪規定
七 ドイツ語圏の著作権法における親告罪規定創設の歴史的背景及びその歴史的展開
八 ドイツ語圏における著作権法違反の訴追に対する国際的影響
九 著作権等と刑事罰をめぐる刑事法的観点からの考察
むすびにかえて

全文ダウンロード

 明治大学学術成果リポジトリから,[PDF版]連載(1)法律論叢89巻6号(2017年3月)89-156頁の全文をダウンロード できます。


http://www.aurora.dti.ne.jp/~mutsumi/study/20170306_ronso8960.html
Copyright (C) 2017, Mutsumi KUROSAWA, All rights reserved. mutsumi@aurora.dti.ne.jp