初心者のための天体望遠鏡の基礎

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 ここでは、初心者が、望遠鏡とはどのようなものであるかを理解して、自分の初めての望遠鏡を買うための参考として望遠鏡の基本を書きます。

光学的構造

 天体望遠鏡にはいろいろな形式がありますが、現在市販されている天体望遠鏡の一番基本となるのが、屈折(ケプラー式)と書いてあるものです(ずいぶん長いこと間違って「グレゴリー式」と書いてました。m(_ _)m )。青い凸レンズが対物レンズといい、目標の方向に向きます。緑色の凸レンズが接眼レンズといい、ここからのぞきます。
 対物レンズは、直径(口径という)が大きく、その焦点距離は口径の10倍以上あるのが、一般的です。接眼レンズはアイピースともいい、焦点距離は短いです。
 望遠鏡の倍率は、対物レンズと接眼レンズの焦点距離で決まり、
   倍率=対物レンズの焦点距離÷接眼レンズの焦点距離
という関係になります。つまり、焦点距離の短い接眼レンズを使えば、いくらでも倍率は上げることができるわけですが、倍率を上げたからといって、良く見えるようになるわけではありません。というのは、光の干渉の影響で、どこまで細かいものが見えるかということについては、対物レンズの口径で決まってしまいます。つまり、あまり倍率を上げすぎると、像がぼけるだけで、細かいものが見えるようになるわけではありません。だいたいの目安として、口径(単位mm)の2倍程度の倍率が実用的な最大の倍率です。つまり口径100mmの望遠鏡なら200倍ということになります。
 一方、倍率を下げると、見える映像は明るくなります。というわけで、星雲のような淡く広がったものを見るときは倍率を下げて見ると見やすいですが、これも、どこまでも下げられるわけではなく、口径(単位cm)の1.5倍くらいが倍率を下げられる限界です。これを有効最低倍率と言います。口径100mmの望遠鏡で15倍といったところでしょうか。

 屈折望遠鏡の対物レンズを凸レンズのかわりに凹面鏡としても、望遠鏡が成立します。ただ、屈折望遠鏡と事情が違うのは、赤で示した凹面鏡(主鏡という)の焦点のところで接眼レンズでのぞこうとすると、自分の頭が、天体の光をさえぎってしまうので、光を黄色で示した鏡(副鏡という)で、適当な位置に引き出してやらなければなりません。口径が人間よりはるかに巨大な天文台の大望遠鏡には、副鏡を使わずに、直接主鏡の焦点で観測するものもあります。この副鏡の形や置き方によって、反射望遠鏡はいくつかの形式にわかれますが、現在一般に市販されているのは2つに限られます。
 まず、平面鏡を45度に置いて、光を横に引き出すものが、ニュートン式というもので、構造が単純で、アマチュア向けに市販されている大部分はこれです。
 副鏡が凸面鏡で、光を主鏡中心の穴から主鏡の後ろに引き出すものをカセグレン式と言います。焦点距離の割に望遠鏡が小さくなるので、天文台の望遠鏡によく使われています。
 カセグレン式の副鏡が凹面鏡になったものがグレゴリー式です。他の形式では見える像が倒立像(上下左右逆さま)なのに、これだけは正立像(見たままの向き)になります。この形式は反射望遠鏡では一番古くに原理が考えられたものですが、同じ焦点距離のカセグレン式より長くなってしまうので、今では天体望遠鏡としては一般的には使用されません。

 反射鏡とレンズを組み合わせたものを総称してカタディオプトリク式と言いますが、アマチュア向けに市販されているのにシュミットカセグレン式とマクストフ式があります。いずれも外観は似ていて、カセグレン式望遠鏡の前(図では左)に補正レンズがあります。

マウンティング
 望遠鏡は光学的な部品だけで使えるものではありません。適当な架台に載せて目標の天体に向けて固定しなければなりません。このやりかたには大きく分けて経緯台赤道儀があります。

 経緯台とは、望遠鏡を水平方向に回転する軸と上下に回転する軸で固定したもので、初心者用の入門機として売られているのはたいていこれです。また、構造的に安定なので、向きをコンピュータ制御できるようになった現在では、天文台の巨大望遠鏡にも使用します。たとえば、国立天文台がハワイに作ったすばる望遠鏡などです。アマチュア向けの高級品にも、ミードのLX-200といった例があります。
 ただし、コンピュータ制御してあるものは、自動追尾してくれるからいいのですが、そうでない場合は、上下の軸と水平の軸を両方回して、天体の日周運動を追尾しなければなりません。この作業は低倍率ならまだいいのですが、高倍率では大変です。

 そこで、軸の一つを地球の自転軸と平行にしておき、この軸(極軸あるいは赤経軸)だけを動かすことで目標天体を追尾できるようにしたものがあります。これが赤道儀です。アマチュア向けに一般に市販されているものには、ドイツ式(左の図)とフォーク式(右の図)があります。極軸は赤で示してあります。
ドイツ式は極軸の先に直角にもうひとつの軸(赤緯軸:青で示す)をつけて、その片方に望遠鏡、もう片方にバランスウエイトをつけたものです。フォーク式は極軸の先を二股にしてそこに赤緯軸をつけて、その中心に望遠鏡をつけたもので、バランスウエイトはありません。フォーク式はアームが長くなるので、架台全体の剛性は低くなり、振動が発生しやすいです。

 写真はミードLX50-20ですが、これはシュミットカセグレン式の望遠鏡をフォーク式の架台に載せた例です。


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