バイク走行動画撮影vol.1

昨年ぐらいからバイク動画にちょっと興味が出てきていた。
とはいえ PC スペックも動画編集には物足りない物だったし、
そもそも所有のデジカメ自体が動画撮影性能の低い物だったので、
本格的に始める事は到底かなわなかった。

機種変更した携帯電話のムービー撮影性能がそこそこ良かったので、
試しにマスツーリングで撮影したものを編集し、SNS で公開したりしてみたりしてみたが、
バイク動画にはやはり走行シーンがないとつまらない。

そうこうしているうちに PC のほうはグレードアップして、動画編集に耐えるスペックになった。
となると新しい(動画)デジカメが欲しかったが、
バイク動画で評判の良い「 Xacti DMX-CG65」が
僕の願望に最安値が届く前に売切れてしまった事で意気消沈し、
しばらくバイク動画への熱も冷めてしまっていた。

だがそんな折りに「 EXILIM EX-Z100」が発売された。
H.264 動画が時間の制約なく(メディア・バッテリー容量には左右される)撮影できる機種では
初めて広角 28mm (相当)が搭載された機種である。
しかしその中途半端なスペックが仇となったのか人気がなく、
毎日毎日価格が下落していく(2008/5/12 現在)。
…このカメラは買い得かもしれない。
となると、デジカメをバイクに車載しての走行動画が俄然現実的に感じてきた。
というわけで、デジカメのバイクマウントに、いよいよトライしてみる事にしたのである。


デジカメのマウント方法について一番好ましく思うのはヘルメットマウントだが、
(グリップタイプでない)普通のコンパクトカメラタイプの場合はちょっと無理があるので
今回まずはバイクマウントを考える事にした。
だが僕の ZX-9R(F2) は SS であり、ステアリング周りにカメラを取り付ける自由度が非常に少ない。
取り付けたとしてもカウリングやハンドル周りのパーツに干渉してしまう。
F1 からカウルステーも小さくなってしまったのでマウントには使えないし、
カウルミラーと共締めは振動が酷くなる事が、普段の視認性の悪さから容易に想像できる。
左の側面メインフレームに設置されたステアリングダンパー用のネジ穴は魅力的だが、
突き出すステー長が長くなってしまうから、これもブレが酷くなりそうだ。
ヤフオク等で、タンクキャップのネジに共締めするカメラマウントステーが出品されているというし
吸盤式のカメラマウントも売られているが、ちょっと値段が高いしタンクバッグが使えなくなるのは痛い。

となると、トップブリッジの真ん中に空いている、ステアリングステムの貫通穴を使うしかないのである (検索ワード:三叉 三又 三つ又 三ッ又 トリプルツリー ステアリングネック ステムシャフト)。 試しに、走行中にその部分に触れてみる。と、驚くほどに振動が少ない。 タンクやカウリング各所に比べても、ダントツに振動がないのだ。 設置箇所はもうここに決まりだ。

デジカメの取り付けには雲台も使うつもりである。
カメラの角度さえビシッと決まれば、雲台なんか本当は剛性が下がる要素なので不要なのだが
そうそう都合よく角度が合うわけもないのでしょうがない。
だから実は、今回のこれは「雲台をバイクに取り付ける作業」なんである。
というわけで、ホームセンターに行って素材を仕入れてきた…
…いや本当はそんなにさくっと済まず、あーでもないこーでもないと3軒も回ったのだが。

これが揃えた素材である。 左上から寸切(ズンギリ)つまり全ネジのボルト、長ナット、 ユニオンパッキン、ナット、スプリングワッシャー、ワッシャー、ひとまわり大径のワッシャー、だ。

一つずつ説明していこう。
まず寸切だが、雲台のネジ穴、つまりカメラの三脚穴(小ネジ)に合わせた W1/4 インチ径の物だ。
貫通したステアリングステムを通って上下でネジ止めされるため、
当然貫通穴よりも長くないとならない。
ステアリングステムの貫通穴は272mm。
雲台にねじ込む分と、下部でナット止めする分を考えると 305mm がベストな長さと計算した。
しかし、東急ハンズをはじめいくつかの小売店では
W1/4 インチの寸切は 285mm の物しか置いていないのである。
これではステアリングステムの上下から顔を出すには出すが、
たった 13mm の余り、片方 6mm ずつでは雲台やナットを食いつかせるにはいかにも心許ない。
ネット上でもいろんな人が、寸切の長さがギリギリだと悲鳴を上げているが、
郊外型の大きいホームセンターに行くと、普通に長さ 1m の寸切が売られているのである。
これを、そのホームセンターでカットしてもらって 310mm にした。
あまり細かい指示は出したくなくて 5mm 多めにしたが、
フルボトムを考慮したらなるべく下部への突出量は少ない方がいいに決まっているので
ちゃんと予定通り 305mm にしたほうが良かったかもしれない。
なお、自分でも切断できたかもしれないが、ネジ山が潰れてボルトが入らなくなると困るので
ホームセンターでの切断とした。1 カット 20 円也。

長ナット(W1/4 インチ)はなんとなく思いつきで購入してみた。 W1/4 インチの寸切ボルトは直径約 6.3mm なわけだが、 ステムの貫通穴の径は 13mm なのでまだまだ余裕がある。 そこで、この長ナットをびっしりと嵌めてやれば剛性アップになるんじゃないかと思ったのだ。 272mm のステムの穴の中からはみ出さないように、 30mm の物を 9 個使用した。 ちなみに W1/4 インチのボルトに対するナットに使うスパナサイズは 10mm であるから、 相当太くなった。持った感じもしっかりしている。 ただ、重量もそこそこあるから、厳密に言えばハンドル操作感に多少は影響するだろう。

ステアリングステム下部で寸切ボルトを固定する部分に、 ゴムのパッキンをかましてあるのはなんとなくの気分だ。効果はたぶんないだろう。 スプリングワッシャーは脱落防止を期待して。もっとも、緩んだらトップブリッジ上のカメラがぐらつくはずなので すぐにそれとわかるはずだ。大径のワッシャーも本当は不要だが、 見た目のマトリョーシカっぽさを求めてそうする事にした。

ぐいぐい締め付ければおそらく問題ないはずなのだが、 ステアリングステムの貫通穴の中で寸切ボルトが少しでもぶれにくくするためと、 センター合わせのために、長ナットに布ガムテープを巻いて肉付けしてやる。 取り外す事を考えなければ、何かを…例えばバスコーク等を 充填するのがいいのかもしれないが、そこまでの覚悟はない。

さて雲台であるが、家に転がっている安物のスリックの物を使う事にした。
安物とはいえ、古い故にダイキャスト素材のわりとしっかりした物である。
フリーターン雲台なのでパン棒はひとつだけであるが、
このパン棒がタンク方向に突き出て非常に邪魔である。
そこでパン棒を変更する事にした。

元々のパン棒のネジもやはり W1/4 インチ径である。 そこでそのサイズのボルト(ボルト長は、パン棒がどのぐらい ねじ込んであるかを測定して 38mm の物にした)と、「ノブスター」なる物を買ってきた。 「ノブスター」とはボルトヘッドに嵌める「握り」というか「つまみ」というか、 こんないい物が売っているなんて知らなかったのだが実に素晴らしい物だ。 ちなみに前述の通り、W1/4 インチのボルトに使うなら、 10mm スパナのボルトヘッドなわけであるから、M6 ボルト用のノブスターを使う事になる。 そのままではネジの通る丸い穴が当然 6mm なので、 これを W1/4 インチに合わせて 6.3mm まで削って広げて使ってやった。

雲台に取り付けるとこんな感じである。コンパクトに、自由雲台並みになったと思う。 操作時の力の入れ具合には何の問題もない。 締め付けに、樹脂を 1 ステップ挟む事になるのだが、 締め上げ具合にも特に問題はない。

これらを組み立てて、いよいよバイクに取り付けだ。ここまでの材料費はカット料合わせて 1096 円也。

バイクに取り付けるとこんな感じだ。 雲台とステム間にはクッション材は使わず、 リジットで密着している事になる。 取り付けに際しては、 ステアリングステムの下からの突き出しが、結構多目なのが気になった。 掛け値なしのフルボトムだと、フロントフェンダーを突き破るだろう。 まぁしかしツーリングでそこまではいくまい。 他にライディングする上で不具合となる事はなさそうである。 メインキーの操作に若干難があるが、バイクの乗り降りの時だけだからよしとする。


とりあえず、持っていた FinePix で動画を撮影してみた。 画角は 135 mmカメラ換算で 36 mm である。 古い、10 fps でしか撮れないカメラだが、撮ってみるとやはり楽しい。 これは会社帰りに撮った動画から切り出した画像だが、 いざやってみるといくつか問題点があった。
一つは「酔う」事。通勤の、あまり上品じゃない運転のせいもあって ステムに取り付けたカメラの視点がぐるんぐるんと振り回され、酔ってしまう。 まぁこれはツーリングならば、そういう運転じゃなくなるだろう。 もう一つは、スクリーンが汚いと非常によろしくないという事。 幸い、僕の 9R のスクリーンは結構いい状態をキープできているので、 拭き上げればこれも大丈夫だろう。
あとは夜の撮影だった事もあって問題を洗い出せなかったが、 この古い FinePix は、夜景がそこそこよく写ったと思う。ブレブレだけど。 1/1.7 型スーパー CCD 、F 2.8 と明るいレンズでの MotionJPGが 効いているのだろうか。


5月、信州ツーリングを前にして、我慢できなくなって EXILIM EX-Z100 を購入してしまった。 赤貧状態であったので、最安価格に近いネット通販で買ったのだが、 ぎりぎりまで悩んで買ったので配送されたのがツーリング本番ぎりぎりで、 テスト撮影が何もできないままの初出動である。


さすがにこのシステムでの撮影は初回というだけあって、いろいろと問題が発生した。
カメラの問題や、撮影テクニックの問題等もいろいろとあったが、
まずはマウント関係の問題から挙げていきたい。

剛性不足によるブレはほぼ全く無かったのだが、
無いと思ったトップブリッジの振動が
エンジン常用回転域のとある回転数で発生してしまう事がわかった。
=ブレるはずであるし、カメラへのダメージも少なからずあろう。
これはいかんと思ったのだが他にマウント方法もないし、
撮った動画を見ると、振動によるブレは僕には許容範囲の物と思われたので
この問題には目をつぶる事にした。

次に、雲台が少々小さかった。
上の画像を見てもらうとわかるが、メーターが大きく写り込んでしまう。
ではカメラを上向けにすればいいかというとそれでは空ばっかりになってしまうし、
そうなると測光の対象として空の比重が大きくなり、露出がアンダー傾向となる。
これは雲台をもっと大きな物に取り替える事でしか解決できないだろう。
映像の問題ではない部分でも、
スピードメーターが制限速度を 5 km/h でも(w)超えているのがわかってしまう場合に
(web 上に公開する場合には)炎上防止にモザイクをかけなくてはならないのが
とても、非常にめんどくさい。
サーキットなんかでレコーダーとして使って自分だけが見るのならいいのだろうけど。

あとは、
・1GBの SD カードでは全く足りなかった→4GB は必要だった
・液晶モニターでは動画の明るさが全くチェックできなかった→ヒストグラムを見ればよかった
・マルチ測光はよろしくなかった→スポット測光にすればよかった
・途中、前走車の写り方が小さく思えたのでやや望遠にシフトしたが、スピード感が損なわれた
という所だろうか。

・意外にも操作ボタン類がグローブをしたままでそこそこ操作できたところはよかった
・普通に走っている限り、ステムマウントによる、ハンドル操作にフレーミングが細かく追従する事は気にならなかった
・バッテリーに関しては購入したてという事もあってか、全く心配いらなかった



とりあえず第1回目としては「こんなもんだろう」という感じの走行動画撮影であった。
まだまだ世間に公開できるほどの物にはなっていないので、
問題点をクリアして−カメラの設定も見直して−次回に望みたいと思う。

次回に続く