Club Luv+が終わるということ 『Club Luv+』というタイトルの中の発音しない記号『+』をなんて表現しよう。ポジティブ?ハッピー?ゴージャス?これまではそんな風な言葉で説明してきたような気がする。でも、今、この記号が伝えようとする心意気や鼻息をうまく言い表す一言が、どうしても思いつかない。20世紀最後の年となった今、この『+』を伝えるためには、いままでだれも見たことがない、目の覚めるような表現が必要だ。 Club Luv+(クラブラブ)は、ビジュアル表現を手段としてエイズについての啓発活動を行うエイズNGO、エイズ・ポスター・プロジェクト(APP)の主催で1994年に始まりまりました。その当時、エイズは社会的に大きな注目を集めていましたが、その多くはスキャンダラスな話題としての取り上げられ方でした。『必ず死ぬ不治の病』『ゲイの病気』『不道徳なセックスによる感染』。これが当時、一般的なエイズのイメージだったのです。 エイズについて、公の場で堂々と話をすることはためらわれることでした。なぜなら、それはエイズがセックスを媒介として感染する病気であることも大きな要因だったのです。エイズについて話をするには、具体的なセックスについて話すことを避けられません。それ故、エイズは家庭の団らんや教室や職場での話題からは敬遠され、エイズの真実、すなわち実際的な予防法や患者の困難な状況、理不尽な差別などは、無意識のうちに社会から隠蔽されていたのです。 そこで、APPは考えました。 とうとう、APPは思いつきました。 APPはエイズに関する啓発活動の中で、特にセックスに力点を置いて、様々な手段を使って情報を発信してきました。ポストカードやポスター、ワークショップや講演会、スライドショー。そしてClub Luv+もその一つとして、『エイズ・セックス・セクシュアリティ』をテーマにかかげ、パブリックな空間であるクラブMETROの中に『+』を乱射したのです。 人と人との境界、たとえばセクシュアリティや職業、社会的立場を簡単にのりこえることができるしかけとして、APPはクラブという『場』を選びました。パフォーマンスとトーク、音楽とダンス、そして『+』を共有する人たちによって、Club Luv+はMETROに実現したのです。 Club Luv+が活動してきた6年間に、METROを舞台に繰り広げられた『エイズ・セックス・セクシュアリティ』についての情報発信/交換は、有形無形の様々な成果を生み出しました。さまざまな人たちのネットワークや活動がClub Luv+を通じて始まり、そしてそれぞれの『+』を新たに展開していったのです。ある人達はClub Luv+のようなエイズベネフィットパーティーを開催し、またある人達は敢えてゲイ、あるいはセックスワーカーにターゲットを絞って、セクシュアルヘルス推進のためのプロジェクトを意欲的に進めています。 しかし、Club Luv+が成功し、大々的になるその一方で、自らが抱える矛盾も大きくなっていきました。Club Luv+から発信されるメッセージが、ステージの上から観客への『一方通行』となってしまうという現実。Club Luv+が標榜する"everybody welcome!な場"に大きな期待を求めてやってきた人たちの中には、エンパワメントを得られなかった人もいたという現実。これら矛盾はおそらくClub Luv+が始まった当初から存在してきたのだと思いますが、その矛盾さえも納得させるだけのパワーと説得力によって、Club Luv+はここまで前進を続けて来たのでした。 Club Luv+がどうして、活動を終えることになったのか。それはClub Luv+が抱えてきた矛盾さえも解決し、真実を見据えるための、ものすごい方法を見つけるため。わたしたちに必要な『エイズ・セックス・セクシュアリティ』についての情報や『+』を交換し、真に両方向的なコミュニケーションを実現する方法を見つけるため。あなたとわたしがつながってゆくためのよりよい方法を、再び模索しはじめるのは今。 Club Luv+に関わったたくさんの人々が、『+』では表現し尽くせない輝かしい未来の言葉『☆○△』をかかげて、新しいステージに踏み出す時が来たのです。 Club Luv+が終わる西暦2000年が、めくるめく次の時代に続いてゆくために。 2000年7月 MC hiroshi |
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