2.両雄激突!


神殿娼婦シャムハトは、ウルクへの道中、エンキドゥに着物を着せた。羊飼いたちの家に宿をとった時、彼らは口々にエンキドゥの勇姿を誉めた。そしてエンキドゥにパンやビールを出してもてなすが、エンキドゥは初めて目にするそれらの食事に面食らい、しげしげと見つめた。彼はそれまで、野獣の乳しか飲んだことはなかったのだ。シャムハトの勧めにより、彼はパンを食べ、クルンヌ・ビールを飲んだ。彼は大いに満足し、ビールを七壷も飲み干した。
エンキドゥはここに滞在中、羊飼いを脅かす狼やライオンを撃退してやった。

ウルクへ向かう途中、彼らは一人の男に出会う。何やら急いでいるようだった。ウルクで花嫁選びが行われるので、舅の家に手伝いとして向かうところとのこと。彼はエンキドゥに、ギルガメシュが新婚の花嫁に対する初夜権を行使していると告げる。これを聞いたエンキドゥは青ざめ、憤慨した。

エンキドゥは彼と共にウルクへと到着した。大勢の人々が、彼の周りに集まってきた。彼らは口々にエンキドゥの雄々しい姿を誉め、ギルガメシュと競う者がやってきた、と喜んだ。
エンキドゥは、男の舅の家に通ずる通りに立ちはだかり、ギルガメシュを待ち構えた。
夜になり、ギルガメシュがやってきた。エンキドゥは彼に対して歩みを進め、二人はついに「国の広場」で出会った。エンキドゥはギルガメシュが進めないように門を足でふさいだ。ギルガメシュは、夢により対抗者が来ることは知っていたが、まさかこのお楽しみの夜に来るとは思っていなかった。甘い?一夜を邪魔されたギルガメシュは怒ってエンキドゥにつかみかかった。エンキドゥは反撃した。二人の激しい闘いにより、建物の敷居が震え、壁が揺れて裂け、戸は壊れて落ちた。二人は長い間闘ったが、ついに決着はつかなかった。怒りをおさめ、くびすを返そうとしたギルガメシュに、エンキドゥは彼をたたえる言葉を贈った。二人は抱き合い、接吻し、友情を結んだ。二人は互いに語り合い、共に飲食し、行動した。二人は神殿娼婦シャムハトのもとを訪れ、感謝を捧げた。
こうして、闘いを通して二人は無二の親友となった。ギルガメシュはそれからは行いを改め、名君となったようだ。ここらへんがいかにもジャンプ的。

ある日、ギルガメシュはエンキドゥに、香柏の森の怪物フンババを撃ち殺し、香柏を切り倒して運び帰ろうと持ち掛ける。それを聞いたエンキドゥは恐れる。彼は野の獣たちと暮らしている時、フンババの森に行ったことがあったのだ。彼はギルガメシュに言う。
「香柏の森の広さは1万ベール。
フンババは香柏の森を守るため、エンリル神により遣わされている。
その叫び声は洪水、
その口は火、
その息は死。
その耳は60ベール(600Km)先のざわめきも聞きつける。
誰が森に入って行けるだろうか」
しかしギルガメシュはエンキドゥを説得する。
「永遠の命を持つのは神のみ。人間の日々には限りがある。人間の成し遂げることは風にすぎない。だのに、あなたは死を恐れるのか。あなたはわたしについてきて、後ろから応援してくれるだけで良い。もしわたしが倒れれば、わたしの名は高められる。『ギルガメシュはかの恐ろしいフンババと戦いを交えたのだ』と、我が子孫の後々まで伝えられるだろう」
エンキドゥはギルガメシュの意志が堅いことを知ってついに折れ、二人は刀鍛冶のところへ行って大斧と太刀を鋳造してもらい、身につけた。

人々はこの事を聞きつけると広場へと集まり、歓声を上げた。ギルガメシュは人々の前に姿をあらわし、みずからの計画を皆に告げる。ウルクの長老たちが思いとどまるように言うが、今更聞く耳を持つギルガメシュではなかった。長老たちはギルガメシュの無事を祈る。彼は太陽神シャマシュの加護を祈り、神託を乞うが、内容はかんばしいものではなかった。


森の守護者の名は、アッシリア語版ではフンババだが、それより古い古バビロニア語版ではフワワとなっている。


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