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       「ユン、それ、ロン」 
       ヤンフェイの冷静な声がする。ギク、とユンが捨牌から手を引くとヤンフェイはパタン、と牌を倒した。 
      「リーチ、一発、チートイ、東でドラ3…あ、裏ドラついたわね、ドラ4」 
      「ヤンフェイ、親の時に一人勝ちするなよ!」 
       ぶーたれるユンファに苦笑するヤン。 
      「俺も弱い方じゃないけど、今日のヤンフェイのツモの良さにはかなわないな」 
       因みに、現在の順位はヤンフェイ・ヤン・ユンファ・ユン。ユンファは一度も上がっていない…が当りもせず、精々流局で点を稼ぐか、ツモで取られたかの2択である。ヤンはそこそこ。それなりに上がってはいるが、その後ヤンフェイにすぐ当てられてしまったり当て返したり……まぁ、対した点は取られないが。そして、最高峰にツモも悪いし読みも良くないのがユンであった。勘と運に全てを任せるユンはツモが悪いとガタガタなのだ。ヤンフェイとヤンには散々当てられ、親の時にはツモられ、そろそろ得点ピンが底を尽こうとしていた。 
      「あーっ!!もう嫌だ!ヤンフェイ少し点棒よこせ!」 
       暴れるユンを横からヤンが止める。 
      「やめろよ哥哥、みっともない。少しは捨牌から相手の待牌を読んだらどうなんだ?」 
      「フフッ、ユンは少し勘に頼りすぎよ。場の流れを見るのも大事よ、組手だってそうでしょ?」 
       読みの深いヤンとヤンフェイに言われると、直感型のユン&ユンファには返す言葉がない…何しろ、今は組手でも試合でもない、麻雀の最中だから。 
      「へへ〜ん、ユンは馬鹿だからな」 
      「何言ってるの、姐姐だって単に当てられてないだけで、全然配牌読んでないじゃない。もう、次の場に入るわよ」 
       そう言いながら4人で牌を混ぜる…やはり麻雀はこの"ジャラジャラ"感なしでは語れないのだ。そして横1列を上にぽん、と乗せるやつ…失敗するとバラバラと落ちるんだよな、これ。 
       さて、牌が配られ、北場・2局目。まず配牌を見たユンは目を見張った。 
      …げ、ピンズ一色で1・1・2・3・4・5・6・7・8・9・9・イーソウ、北2…俺、一色いけんじゃねーか…?! 
       因みにヤンフェイの隣に座っているので風は北。最悪でも混一色、成功すれば…!目の前のユンファは難しい顔をしているし、ヤンとヤンフェイは冷静に牌を見ている… 
      「いくら何でも、ユンが可哀そうかしら。オープンリーチでもしてあげよっか?」 
      「なら、俺が逆転してやるぜ、ヤンフェイ」 
      「そううまくいくかしらね…」 
       対面同志、ヤンとヤンフェイは言い合う。ユンファはといえば 
      「む〜〜〜…」と唸っていた。 
       そんなこんなで場は順調に進み、現在ユンの牌はピンズの1・1・1・2・3・4・5・6・7・8・9・9・9・サンソウ 
      …これで、ピンズが来たら夢の役満"九連宝燈"だ…! 
       ユンは震える手でサンソウを掴む。ヤンもヤンフェイも顔色変えずにしている……そしてサンソウを置いた瞬間 
      「リーチ!」 
      「…あ…俺、ロン」 
       ユンファの声がする。ヤンがユンファの牌を覗き込んだ。 
      「え、どれどれ?」 
      「ホラ、チートイだけど」 
       ユンの顔色がリトマス試験紙の様に変わってゆく… 
      「うわぁ〜〜〜!ユンファのばかやろぉ〜〜〜!!!」 
      「な、何だよ哥哥!」 
      「どうしたのよ!ユン!」 
      「お前なんか大っ嫌いだぁ〜〜〜!」 
       いきなり暴れ出すユンを慌ててヤンとヤンフェイが取り押さえる!ユンファだけが只、呆然としていた。 
      「な…何だよ…俺が何したってんだよ…」 
        
      「……………」 
       一人、ぽつねんと路地裏の階段に座り込むユン。ぼーっとしていると、ヤンフェイが来て隣に座る。因みにヤンは訳も分からず怒鳴られて機嫌の悪いユンファを宥めていたりする。 
      「一体どうしたのよ、ユン。たかが麻雀でしょう?」 
      「……俺の九連宝燈……」 
      「え?」 
       きょとんとしてユンを覗き込み、クスっと笑ってヤンフェイは胸にユンを抱いて子供をあやすかの様に頭を撫でる。 
      「だから、たかがゲームでしょ?それ位でスネないの」 
      「………う……俺の……」 
      ヤンフェイに頭を撫でられながら 
      「俺の九連宝燈〜〜〜!」 
      力一杯ヤンフェイに抱き付いていじけるユンであった…
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