双龍&鳳凰二喬学園編 GROWLY DAYS 其の2

「ヤンフェイ!ヤンフェイ!俺の制服がないんだ!何処しまったんだよ!」
 朝、起き抜けの姿…タンクトップにトランクス姿で食卓まで飛び出してきたユンファ。手には三つ編みを結うためのブラシとゴムをもっている。
「姐姐何言ってるの?制服ならあるでしょう?」
 既に着替えを済ませ、エプロンを付けて朝食の準備をしているヤンフェイ。卓についている彼女等の育ての親で中国拳法の師匠でもある爺々が『またやってるか…』と頭を抱えつつも新聞を読んで口を出さないようにしている。
「だから!俺の学ランがないんだよ!」
 慌てた様子で叫ぶユンファにヤンフェイは冷たく言い返した。
「姐姐、うちの学校の女子の制服は学ランじゃないのよ」
 …つまり、ユンファが朝起きると何時ものクローゼットの中に自分の学ランが入っておらず、代りにセーラー服がかかっていたのだ。
「今日こそはきちんとセーラー服着てってちょうだい。さもないと姐姐、減点よ」
「ぐ……そのテで来やがったか……」
 言葉につまるユンファ。が、しかし
「ジャージあったな!俺、制服なくなったからそれで登校する!」
「こらぁ!姐姐!そうはさせないから!」
 朝っぱらから騒々しい李姉妹の家の朝。

 一方、李兄弟の方はといえば……
「ぐああぁぁぁぁッッ!もうこんな時間!ヤンの野郎…今日も起こしてくんなかったな!」
 しっかり寝坊していたユンは机の上にヤンが用意しておいてくれたトーストをかじりながら慌てて制服に着替え、鞄とスケボーを抱えて家を飛び出した。彼等の爺々は既に菜館の開店準備をしていた。
 スケボーを走らせ、学校に突進するユン。しかし、校門の前数十メートルでユンは止った。
「ゲッ!」
 校門前で風紀検査をしていたのだ。風紀委員であるヤンは既に登校して、教員のチェックをクリップボードに書き込んでいた。それ故にヤンはユンをおいて先に行ってしまっていたのだ。
………ヤバい……
 ユンの格好はといえばハデに違反をしている訳ではないが、きちんと縛っているのに文句を言われる長髪とハデな色のTシャツ位だ。しかし、遅刻の回数が多いユンはそっち方面で突っ込まれてしまい、点をなくしているので結構キツい。ふと、ユンは校門とは逆の壁の方へ向かい壁を飛び越えて校内に入ろうと試みた。遅刻した時こっそり入るところだ。バレない様裏に回り、鞄とスケボーを抱え軽業師の様に壁を飛び越え、着地した…と同時に。
「そんなこったろうと思ったぜ、哥哥」
 その声にギクリとして見上げると、チェックシートを抱えたヤンがいる。
「さ、哥哥の風紀検査させてもらうからな。まずは遅刻、それから……」
「ヤン!頼む!見逃してくれよ!」
 懇願するユンにヤンは冷たく言い返した。
「何時までもそのテが通じると思うなよ、俺だって責任が有るんだし、何よりユンファの事を考えると見逃す訳にはいかないからな」
「ユンファ?!何だよユンファは見逃がすのか?」
 ヤンがユンファの事……だから、じゃあ何で兄貴の俺は駄目なんだと言い返そうとした、が、その言葉よりも先にヤンが訳を話す。
「今日、ユンファはきちんとセーラー服で来たんだぜ」
「ユンファがぁ?!」

 長い黒髪を一つにまとめたおさげ、カンバッチの付いた帽子の……セーラー服を来た少女が、もう一人の少女の後に隠れながら校門を通過する。
「お、李芸花、きちんと制服で来たじゃないか」
 結局、ヤンフェイに負け、セーラー服での登校。風紀顧問の教員がにこやかにユンファに挨拶をする。
「姐姐、何で隠れるのよ、可愛いじゃない!」
「こんな格好、やだ!これじゃ側蹴腿も穿弓腿も出来……」
「出来なくて良いの!たまには大人しくしなさい!」
 別に学ランでも校則違反ではないが、やっぱりユンファは女生徒なのだから…と言う風紀顧問教員とヤン・ヤンフェイの意見は一致した。実は、ヤンとヤンフェイがグルになって立てた計画であったのだ。

「うわ、あのユンファがどう言う風の吹きまわしで……」
 ヤンに首根っこを掴まれて教員の前に連れて来られたユンは、指定の学校シャツを渡される。
「白いTシャツなら柄が派手でも文句は言われないのに、何で哥哥は迷彩とか紫とか、そんなの着たがるんだよ」
「良いだろぉ……別にぃ…」
 風紀検査週間が終るまで、"風雲の白龍"&"風雲大喬"は他の生徒に同化して全くと言って良い程、ぱっと見は目立たないのであった……勿論、その後はユンファも学ランを何処ぞから取り戻しはして以前に戻ってしまったが。

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