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       Act・1 登校 
      
        がぁぁぁ〜〜〜っ! 
        「うっひょぉ〜〜〜〜〜!!」 
         スケボーで暴走しながらユン登校。後数分で校門が閉まり、遅刻。 
        「ヤンの奴、起してくれりゃあ良いのに!」 
         ヤンはしっかり先に起きて、朝御飯を用意して、先に学校に行っている。食卓には『晩飯は哥哥が作れ』と言うはり紙がしてあるだけであった。因みに、今日遅刻するとユン、減点対象。 
        「げ!先公がもう立っていやがる!」 
         校門の向こうの方で風紀主任の教員が時計を片手にカウントダウン! 
        「5!4!3!2!1!」 
         将に滑り込む様に! 
        「セーフ!」 
         ゼロの瞬間、ユンは校門を通り抜けた。 
        「お?李芸、今日は間にあったな」 
        「……はぁ〜〜〜………間にあったぁ〜〜………」 
         そのままボードを抱えて校舎に向かう。校内名物双子兄貴、ようやく登校。 
 
        「今日はきちんと起きれたのか?哥哥」 
         休み時間、ヤンがわざわざユンのクラスにまでやってきてユンの様子をうかがいに来た。手にはぶ厚い教科書と、アルミ製の銀色のペンケースを抱えている…兄と違い、弟のヤンはいわゆる理数系進学クラスに在籍している成績優等生なのだ。 
        「ヤン!起してくれたって良いだろ!もう少しで…」 
        「ぎりぎり間にあったってとこか。第一、何で俺より先に寝ておいて寝坊するんだ?」 
         ユンの言葉をさえぎってヤンは素朴な疑問を投げかけた。 
        「俺はヤンと違って、日々苦労してんだぜ」 
         そう言うユンに冷ややかな目つきを向けるヤン。 
        「苦労…ねぇ。毎日喧嘩に明け暮れては事後処理は俺任せ。祭騒ぎの調整は何時も俺がやってたな。それから哥哥の追試の為の勉強教えたり、晩飯は結局俺が作ったり……俺と哥哥、どっちの方が苦労してると思う?」 
         ……反論不可。 
        「……それだけの為にわざわざ来るなよ!」 
        「何言ってんだよ、俺だって一応心配してんだぜ…おっと、俺、次は移動教室だ。じゃあな、哥哥、放課後練習場で」そう言って物理実験室に向かうヤンだった。 
        「心配してるなら、もっと優しくしろよな、ヤン!」  
      Act・2 昼休み 
      
        「おーい、李芸!昼飯どうする?」 
         クラスメートが声をかける、と。 
        「先刻の授業で食っちまった。ちっと訳ありでな」 
         どうせ文学なんて暇なだけだし、と付け加えていうと 教室の外にはホイメイが居る。 
        「じゃな!」 
         と言って素早くドアの方に向かう。 
        「はい、ユン。今日の調理実習で作ったカップケーキ」 
         ホイメイは家政科なので、ほぼ毎回の様に調理実習がある。それでその時作ったものがお菓子だったりするとユンはおすそ分けをもらうにしている。ホイメイが差し出したケーキを取ろうとした手を引っぱたかれた。 
        「中庭にヤンも呼んでるから、その時までおあずけ!」 
         しぶしぶ付いて行くユン。中庭に行くと、ベンチに得に視力が悪い訳でもないが、ヤンが眼鏡をかけながら図書室から借りたハードカバーのぶ厚い本を読んで待っていた。ユン達が来たのに気が付いて顔を上げる。 
        「ホイメイ、俺の分有るのか?」 
         そんなヤンの近くに、似た様なものがいくつか……まだ手は付けていない様だが。 
        「……ヤン、どうしたの、それ?」 
         ホイメイに言われて気が付いたかの様に、ヤンが答えた。 
        「此処で哥哥達待ってたらホイメイのクラスの子が、俺に持って来てくれたけど、俺はホイメイが持って来てくれたのを一番に食べたいからな」 
         ヤンが珍しい事を言っている様にも聞こえるが、実の処ホイメイの作る料理に失敗がない事を差しているだけなのかも知れない。遂、ホイメイも照れてしまう。 
        「ヤ、ヤンったら……」 
        「………」 
         そういや、ユンには来なかったね。どうしてかな? 
        「そうだ哥哥。このケーキ、哥哥にも渡してくれって、皆言ってたぜ」 
        「だったら直接くれよなぁ?何でヤンばっか……」 
         文句を言いつつもホイメイの持って来てくれたケーキを食べる二人だった。  
      Act・3 放課後 
      
         国術部(中国拳法の部活の事)である二人が、練習場に向かおうと下駄箱の戸を開ける。何か喋りながら靴を取ろうとしたユンの足元に… 
        「あ…」 
         ひらひらと数通のお手紙が舞い落ちた。 
        「へぇ、俺って結構もてるんだな!」 
         それを持って外に行こうとすると、同じく練習場に向かおうとするヤンが下駄箱の戸を開けた。 
        ばさばさばさ! 
         溢れんばかりのお手紙。下級生にもてるヤンへの盛大なファンレターの山だった。 
        「………あ、哥哥、良い処に来た。こう言うのってどうすれば良いと思う?」 
         心から迷惑そうにお手紙の山を示すヤン。 
        「………………何でヤンばっか……」  
      Act・4 中間考査 
      
         今回も成績優秀者の名前が張り出されている。それを見たヤンは一つチッと舌打ちした。 
        「今回は、私の勝ちの様ね」 
        「1点差とはいえな…連勝とはいかなかったか」 
         ヤンの隣に前髪の長い、ワンレンセミロングヘアの少女がいる。李姉妹の妹、ヤンフェイ。因みに彼等は同じクラスである。 
        「結果きいてきたけど、倫理の論文以外に差はなかったらしいの」 
        「成程ね……論文題だけは個人差が出るからな」 
         とはいえ、二人共クラス順位10位以内。しかも彼等のクラスはいわゆる進学クラスである。ヤンも、ヤンフェイも成績優秀者、更に国術部四天王の一人。文武両道なのだ。そんな近く……… 
        「げぇ〜〜〜〜っ!またかぁ〜〜〜?!」 
        「…やっばぁ……やっちったぁ……」 
         ユンともう一人、黒絹の様な長い髪をおさげにしてカンバッチの付いた帽子を後に引いて被った少女…李姉妹の姉ユンファが一点凝視。そこは…… 
        『呼び出し』 
         つまり、またしても追試なのである。 
        「哥哥、また追試か?」 
         呆れ返った様に言うヤン。 
        「だぁ!あんなモン人間のやるモンじゃねぇよ!」 
         ムキになって言い返すユン。 
        「姐姐、今度は何がヤバかったの?」 
         腰に手を当ててヤンフェイが尋ねると、ユンファは言いにくそうに前回と同じ教科名を上げた。 
        「……えーと、数学と、後はぁ〜…多分、英語」 
        「「全く、何時もこんなでこっちの身になったらどうなんだ?」」 
         両弟妹の声がハモった(実際ヤンフェイの語尾は『どうなの?』だけど)両兄姉、肩をすくませて立場無し。 
        「帰ったら徹夜だからな」 
        「いい加減、試験位一発で通ってちょうだい」 
         両弟妹に首根っこひっつかまれて職員室に向かう両兄姉だった………
        
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