ある日の昼下がり。姉妹の近所にある淋飛(リンフェイ)くんの家の菜館にて。 彼の作った点心で飲茶等にしている双龍・鳳凰二喬。 芸花(ユンファ):ユン達は、自分の爺々に拳法を教わったんだろ? 陽(ヤン):ああ。俺達の両親は俺達がまだ赤ん坊の頃に二人とも他界してるからな。 芸(ユン):俺達の爺々…つまり、師匠に引き取られてみっちりガキの頃から鍛えられたぜ! 陽妃(ヤンフェイ):そう言う時って、やっぱり血縁者でも祖父・孫の縁って切るものなのね。 (注・考え方が日本式ですみません…本来中国拳法の場合は血縁者でなくとも肉身の様に、が正解でしたよね…出典・『拳児』小学館サンデーコミックス・松田隆智・藤原芳秀) 芸:当り前だろ! 陽妃:でも、やっぱり血縁者だもん、功夫の時以外では、祖父と孫、よね。 芸:何言ってんだ?ヤンフェイ? 芸花:ちょっとさ、羨ましいと思っただけだよ。俺達、本当の血縁者なんてお互いだけだからな。 陽:って、どう言う意味だ? 陽妃:この世界の大半の人口を抱える中国で、人口問題は必至。一人っ子政策が取られている現代社会で双子の、しかも女なんか産まれてごらんなさいよ………捨て子になるのが、オチでしょう? 芸:……お前等…?! 芸花:そ、俺達は産まれたと同時に捨てられたのさ。拾ってくれたのは俺達の育ての親である師匠老夫婦だよ。 陽妃:師匠の姓が"李"だから、私達は李姓を名乗ってるけどね。本当の処は、判らないわ。 芸花:14になるまで…そう、姥々が死ぬまで知らなかったよ。その時、初めて知った。けどさ、師匠も姥々も俺達の事、本当の孫みたいに可愛がってくれたからな。 芸:だったら羨ましいの何もねぇだろ。 陽:血が繋がってないとはいえな、お前等には姥々が居たんだから。何時頃から師弟の契りをしたか知らないが、それまではごく普通の円満家族を送ってたんだしな。 芸花:む〜〜〜……そう言う考え方もあったか。ま、どのみち今の自分の不満はねぇからな!下手したらこうして拳法すらやれなかったかもしれねぇし。 陽:女で八極拳なんて、まずそう簡単に入門出来そうもないしな… 陽妃:何か、差別だわ。でも師匠は教えてくれた。表演だけじゃなくて、散打もね。みだりに弟子をとらない門派だけに弟子は私達だけだけど。 芸:(肘でヤンを突つく) 陽:何だよ、哥哥。 芸:(小声で)別に、ヤンフェイ達は裏社会とは無縁みたいだな。 陽:(同じく小声で)どうして? 芸:(まだ小声で)ボス達の事だ……ヤンフェイ位の子だったら、きっと…… 陽:(更に小声で)……ユンファなら……どう考えても…… (二人共いけな〜い想像をしてしまった様である) 芸&陽:(いきなり声を揃えて絶叫)許せん! 芸:絶対に反対! 陽:誰がやるか! 芸花:お前等、何の話してんだよ。 芸&陽:(ぎく!) 陽:なッ…何でもないよ!(冷や汗) 芸花:ポーカーフェイスのヤンが動揺してやがる…怪しい…… 陽:い、良いだろ!別に!(顔真っ赤) 陽妃:その顔は何か隠してる顔よ、ユン、正直に言いなさい! 芸:か、隠してない!(もう汗たじたじ) 陽妃:何よ、二人共私達に言えない様な事でもやってるって言うの? 芸:ピーピーピー…(口笛を吹く) 陽妃:誤魔化してる!何か怪しい… 芸花:何だよぉ!俺達に言えない、何かヤバい事したってーのかよぉ!(スネる) 陽:そう言う訳じゃないってば!(弁解) 陽妃:顔、真っ赤よ、ユン……ねぇ、何の話?(脅迫) 芸:だーかーらー。べーつーにー対した事じゃないって、な、ヤン。 陽:あ、ああ、そうそう。だから、ホラ、月餅でも食べて、気を取り直して。 芸花:ひっでぇ!そうやって食いもんで誤魔化す気だな! 陽妃:正直に言いなさい!何の話?! 芸:ヤンフェイちゃん、落ち着いて、落ち着こう!な! 陽妃:もう!言い加減にしないと!私怒るわよ!(殺気) 芸:わ、バカそんな事で切れるな! 芸花:言わないお前等が悪いんだろ! 陽:だから、今のままで良かっただけだって、それだけだって。落ち着けよユンファ、ヤンフェイ。 陽妃:信用ならないわね…(睨み付ける) 芸:ホラ、すねないヤンフェイちゃん。 陽:ユンファ、ホラ、良い子良い子。(頭を撫でる) 芸花&陽妃:誤魔化されてる……絶対……… |