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       「おう、ヤン。ケン・マスターズが持ってきた変なアンケート見たか?」 
       ユンがヤンに差しだしたる1枚の紙。 
      「ああ。ジャッジメントガールの人気投票だってな。何を考えてるんだか…」 
       面倒くさそうにヤンが答える。 
      「で、どうする?」 
       月餅をくわえながら用紙を広げるユン。ヤンは茉莉花茶を入れ、ユンに湯のみを差しだす。 
      「決まってる、冬花」 
       そう書き込もうとするとユンが用紙を奪った。 
      「何言ってんだよ、理花に決まってんだろ!用紙は1枚しかないんだぜ!理花な!」 
      「何だと!勝手に決めるな!冬花だ、絶対に冬花!」 
      「何を!」 
       しょうもないが、こんな事で言い争いを始める双龍兄弟……… 
      「リンフェイも凄いな、今度は月餅かよ!」 
       篭一杯に月餅を入れて歩くユンファの横に、新茶の入った袋と小さな蒸篭を抱えて歩くヤンフェイ。 
      「ホイメイ、凄く喜んでたね。ユン達も喜んでくれると嬉しいな」 
       彼女等の家の近くの菜館の長男・幼馴染みのリンフェイが手作りの月餅とマーラーカオ、それと茉莉花茶の新茶をくれた。先程ホイメイちゃんの家に持っていったら非常に喜んで、半分近く彼女と妹にあげたのだった。そして、双龍兄弟にもおすそ分け…とやって来た訳である。 
      「ユン、彼のマーラーカオ好きだったわね」 
       ユンの喜ぶ顔が目に浮かんで微笑むヤンフェイ。 
      「一緒にお茶にしようか」 
      「良いわね、ヤンが茉莉花茶好きだったし」 
       そして彼等の家に来て、部屋の前に来た……時。 
      「ぜぇったいに!理花だ!清純・聡明、それにすげー大人しくて良い女だ!」 
      「否、冬花!理花なんかと違って大人しくて女らしくて可愛い!」 
       一度言い出すと無理に貫き通そうとすぐ無気になる二人。既に取っ組み合いを始めていた。それにこの大声…家に来て、彼等の爺々に挨拶をしていた二喬姉妹の耳にも聞こえてくる。何ごとかと思い、彼等の部屋の前まで二喬姉妹が来ているとも知らず…… 
      「理花みたいなお嬢さんタイプで優しくて可愛い女はいねぇんだよ!だから理花だ!」 
      「お嬢さんタイプで大人しくて可愛いのは冬花!だから冬花だ!解ったか馬鹿哥哥!」 
       顔を真っ赤にしてヤンの胸倉を掴む。そしてヤンも同じ動作をとる。何時お互いの発けいが放たれるか、もう時間の問題だ。 
      「ンだとぉ!もう一辺言ってみろ!」 
      「女は清楚で大人しいのが一番なんだよ!だから冬花だってのが解ってないんだよ!」 
      「ふざけんな!絶対に理花だ!清純清楚なのは理花!お前こそ解ってねぇよ!」 
      ガシャン! 
       ドアの向こうから何かが落ちる音がして、ピタリと双龍の動きが止る。更にガタン!という音がして、二人はドアの方へ歩き、ドアを開ける。見ると、鳳凰二喬が立ち尽くしていた。 
      「ヤンフェイ?」 
      「ユンファ?どうした?」 
       ヤンがユンファに手を差し伸べようとすると、その手を思い切り強く払ってユンファが涙声で絶叫する。 
      「悪かったな!どうせ俺は冬花みたく大人しくねぇよ!」 
       両の拳を握り締め、その瞳から大粒の雫をボロボロとこぼしている。 
      「先刻から理花理花って!そんなに理花が良いなら理花と居れば良いじゃない!」 
       大粒の雫を止めどなく溢れさせながら、ヤンフェイが叫んだ。 
      「な、何言ってんだよ、ユンファ……」 
      「勘違いするなよぉ、ヤンフェイ……」 
      「「言い訳なんか聞きたくない!」」 
       二人の声が揃う。 
      「ヤンの馬鹿!」 
      「ユンなんか大嫌い!」 
       二人はそのまま走りだす。 
      「お、おい!」 
      「待てよ!二人共!」 
       慌てて追い掛けようとした二人に、ユンファは崩拳、ヤンフェイは側蹴腿をお見舞すると、泣きながら走り去った。二人の足元には篭一杯の月餅と、お茶と蒸篭……中は、ユンの好物のマーラーカオ。 
      「まずいな、哥哥。勘違いされてる…」 
      「お前があんな事言い出すから!」 
      「哥哥だって言ってただろ!……ったく!どうにか誤解を解かなきゃ……ユンファ……」 
      「どうしよう……ヤンフェイ……言ったら聞かねぇし……」 
       二人は足元の差し入れを拾い、机の上に並べると鳳凰二喬を追い掛ける。
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