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        『疾風の青龍』リー・ヤンと言ったら、『冷静沈着・深慮遠謀・冷徹無比・冷酷無情・無表情・無愛想』などといった怖いイメージが結構浮かびますが(…うちのヤンだけかも……)実は、意外な過去があったりするのです。 
       それはまだ二人が本当に小さい頃。小さな二人を先に寝かせて、二人の爺々は近所の家で麻雀などをやりに行くことが暫しあります。大体、二人はぐっすり寝込んでいる時なので大丈夫なのですが、たまーにヤンちゃんは夜中に目を覚ましちゃうんです。そう、おしっこにいきたくなっちゃうんです。2段ベッドの上に寝ている双児のお兄ちゃんのユンたんは、まず夜中に起きちゃう事はありません。毎日ヤンちゃん以上に動きまわって、暴れて、疲れてぐっすり寝ちゃうんです。そんなユンたんに気を使って、ヤンちゃんはユンたんを起したりする事はありません、が…… 
      「こ、こわくないもん……」 
       一人でトイレまで暗い中を行くのにはもう慣れっこになった、つもりだったんだけど、やっぱりちょっと怖いんです。トイレまでの真っ暗で、何も聞こえない静かな廊下の先から、何かが出てきそう…… 
      かたん…… 
      「……う……」 
       向こうのほうから何か物音がします。ヤンちゃんはちょっとだけこわくなって、目をつぶってトイレの前まで走り出しました。 
      「は、はやくもどってねよう……」 
       手に届く、トイレの電気を付けると、何だか安心します。用をすませて、きちんとおててを洗って、電気を消した後…… 
      がさがさがさ…… 
      「!」 
       ヤンちゃんの後ろのほうから、何かの物音が!前の方にぽうっと光が見えて、何かの物影が動いています。 
      お化けかもしれない! 
      とん、とん、とん。 
       何かの足音のようなものが近づいてきます! 
      「う……ひっく………」 
      突然、誰かがヤンちゃんの後ろから肩を掴みました。 
      「……う……うわぁぁ〜〜〜ん!にーたぁ〜〜〜ん!」 
       大声を上げて、逃げようとすると、 
      「こら、ヤン。こんな時間にどうしたんじゃ?」 
      急にぱっ、と回りが明るくなりました。おそるおそる振り向いて見ると、そこには爺々が立っていました。近所の麻雀から帰って来た処だったんです。 
      「.おば、おばけかとおもって……ひっく……」 
       大声にびっくりして、ユンたんまで起きてきちゃいました。 
      「……あ、爺々。なにかあったのぉ?ヤンたんなんで泣いてるのぉ?」 
       眠い目をこすって出てきたユンたんと、泣いているヤンちゃんを嗜めながら、二人をもう一度寝かせてあげた爺々。でもヤンちゃんはまださっきの事が怖かったみたいです。 
      「にーたん……きょうはいっしょにねようよぉ〜〜……」 
      「で、さー!大笑いだぜ!ヤンの奴!」 
       笑い過ぎて腹を抱えながら語るユンと、顔を真っ赤にして、珍しく表情を露に怒るヤン。 
      「しっっつこい!哥哥!それしか反撃ネタがないからって!言い加減にしろ!」
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