大熊猫と僕

 

 これは、ユンたんのお気に入り、大熊猫(パンダ)のぬいぐるみの『ぱんだたん』のお話。
 『ぱんだたん』は、二人がまだ3〜4才の頃、爺々が日本・東京名所巡りツアーに行った時のお土産にユンたんと弟のヤンちゃん、それから二人を預かってくれていた近所のお店『昇龍軒』の娘で、二人の幼馴染みのホイメイちゃんに買ってきてくれたものです。
 でも、本当は大きいぬいぐるみをホイメイちゃん、二人には同じ大きさの小さなぬいぐるにみを買ってきたつもりだったのに、目敏くお土産を見つけたユンたんは一目で大きなパンダさんが気に入っちゃいました。袋から出して、自分と同じ位大きなパンダさんを両手でいっぱいに掲げます。
「うわぁー!おっきぃー!ぱんだたん!」
「ユン、それはホイメイちゃんにあげるものだよ。ユンとヤンのは、こっち」
 小さなぬいぐるみを取りだしてユンたんからぬいぐるみを取り上げようとすると、ユンたんはぬいぐるみを引き寄せて駄々をこねます。
「いやー!ユンたんこっちがいいのぉ!ちっちゃいのいやー!」
 大きなぬいぐるみを小さなおててでギュ、とだっこして、爺々を睨み付ける様に見ます。あらあら…ユンたん、大きな瞳いっぱいに涙をうかべちゃいました。
「ユンたんこっちぃ!うわぁぁ〜ん!」
 遂に大きな声を上げて泣きだしちゃった。大変!ユンたんは泣き出したら聞きません。困った爺々は、さっきから紙袋の中味を覗いていたヤンちゃんとホイメイちゃんに向かって申し訳なさそうに聞きました。
「ヤン、ホイメイちゃん…こっちの小さいパンダで良いかな?」
 そういって二人に小さなパンダさんを渡します。
「うん、ヤンたんこっちがいい」
「ホイメイもヤンたんとおそろい!李爺、謝々!」
 二人でお揃いの小さなパンダさんをだっこしています。これで大きなパンダさんはユンたんのものになりました。
「おっきーぱんだたん、ユンたんの!」
 さっきまで泣いていたのに、もうとびっきりの笑顔。良かったね、ユンたん。

「懐かしいなぁ、哥哥、大きいほうが欲しくて、びーびー泣き出したもんな。本当にあの頃から我が儘なの変わってないよな」 
 物置の奥から出てきた、あの時貰った小さなパンダのぬいぐるみを見つけたヤンは独語した。双児とは言え、兄に対して随分な言い草である。随分と埃だらけで、汚れている。
「ホイメイはきちんと今でも部屋に飾ってるし…そうだな、俺もたまには洗ってやらないとな」
 因みに、ユンは継ぎはぎだらけにしながらも、今でもあの時の『ぱんだたん』を大切にしている。自分だってこのパンダを今でも大切に思っているのだし……

戻る