無題〜3rdについて〜


 ……そういえばあいつが別行動をとりはじめてからどれ位経ったんだろう……?
 ……別行動って訳じゃないんだけど、何時も俺の後ろで俺の戦いを見ていたあいつが、数日前から姿を見せなくなった。あいつ自身が、俺の様に野試合をしている姿を、そう言えばずっと見ていない。俺の試合を後ろで見ていた頃も、そう考えてみればいきなりいなくなっていたことがあった。そして何時の間にか帰ってきていて、平然と何事もなかったのように過ごしていた……その頃は、あいつが何をしているかなんて考えもしてなかったけど。

 

 

 雨降りしきる、夜の繁華街を見下ろせる廃ビル(と言ってもの小さなものだが…)の屋上に行った。俺に挑戦状を叩き付けた輩を拝みに、そして戦いに。
 しかし、俺の目の前にいたのは、俺と似て異なる姿の、あいつだった。
「……何だよ、いきなりいなくなったかと思ったら、この挑戦状は、お前からか」
 わざわざこんなもの(しかも御丁寧に英語で書いてくれている)を俺に叩きつけて、何様のつもりなんだよ。そう聞こうと思う前にあいつが口を開いた。
「此処数日の間、身に付けた功夫の成果を、哥哥(あにき)に見せたくてな」
「わざわざ俺に内緒で、する程の事か?」
 何時だって俺達は一緒だった。修行も、学校も、野試合の旅も、全て。街を守ることも、大切なものを守る事も、双児の兄弟としてこの世界に生を受けた俺達は、何時も一緒にしてきたことだ。
 なのに、あいつは、何故俺に黙って一人で……そう思うと、どことなく腹ただしい感情がふつふつと湧いてくる。
「別に、俺が居なくたって何も問題はなかったんだろ?だったら理由なんか言う必要ないだろ?」
……そういえば、あいつがいなくなったのは、みょーにやさぐれた細っこいフランス人がこの街に来て、俺に戦いを挑んできたあとだ。妙に腹ただしかった記憶がある……『遊びで格闘をやっている輩が憎いんだ』とか言いやがって……あの野郎……
「だからって、お前が勝手に一人でいなくなる理由はならないぜ」
 あいつがいなくなってから、やたらと喧騒の後に文句を言い寄って来る鬱陶しい輩が付け回してきたり、警察に職務質問をされたり、面倒くさい事が多かった。喧嘩はともかく、弱いのが何度も鬱陶しく来ることと、警察官が来るのはやってられない。
「哥哥も俺も、もうそんな子供じゃないんだぜ。いちいち何で哥哥に断わって出かけなきゃならないんだ?」
 冷静に、俺に言いながら、既にあいつは虚歩の構えに入っている。
「ふつー心配するだろ!たった一人の、血を分けた兄弟だぜ?!」
「居なくなっても、別に支障はなかったんだろ?邪魔そうだったしさ、哥哥」
 ふと、構えを解いて、叫ぶ俺に冷静に言い返す。その声が寂しげな響きを帯びていたのは、その時俺は気が付かなかった。
「誰が邪魔だって?そんなこと、何時言った!」
「確かに言った。それに何時も…俺が修行に出る直前だって」
あいつの言葉を聞く前に、更に声を荒々しくして叫んだ。
「嘘を言うな!幾らお前でも、許さねぇぞ!」
 聞きながら拳を握り締めて震えていた…即、絶招歩法に入ろうとした瞬間。
「あの時、あのフランス人に向かってこう言ったの、聞こえたよ…『口煩いだけで邪魔なもう一人が居なくたって、この街をたった一人で支えている俺一人居なくなったらこの街を守る全てがなくなる』って……」
 瞬間、あいつはものすごい目つきで俺を睨み返した。確かあのフランス人と戦う直前、下の騒動を取り押さえた直後で、何かあいつに煩く文句を言われてイライラしていたんだ。余計に、あのフランス人に対して腹を立てて、ハライセに決めた揚炮で骨砕けたんじゃないかって思った位…あの時何叫んだなんていちいち覚えてない。
「だから消えてやったんだよ。『所詮弟は兄には勝てない』なんて良く言ってたな。試してみるか?」
 自信過剰な言い草に、俺は怒りを抑えられなかった。
「前言撤回させてやる!こい!」
 お互いが構えに入り、俺は即様大きく飛び上がり、踵を向けてあいつに雷撃蹴を放った…しかし、気が付くともうあいつの姿が視界にない。
「遅い!」
 物凄いスピードで前に走ったあいつは、俺の背後をとってそのまま後掃腿から蟷螂斬3発を決めてきた。何とか受け身をとって起き上がってあいつの姿を確認する前に、また素早い走りで俺の背後をとっている。破れかぶれで出した俺の底蹴腿を受け流すと、俺の両肩を掴んで前方転身で更に背後をとられた。そのまま裡門頂肘・切掌・白虎双掌打と立て続けに連携を食らい、そのまま転身穿弓腿まで食らった。起き上がりに更に撃崩捶を出して来るのを何とか二翔脚で返し、蛇形手・旋脚・裡門頂肘と連携を立てたが、その連携は防がれ、更に鉄山靠で体当りをしたのを受け流されて、あいつは俺の両肩を掴んでそのまま水月に連続の膝蹴りをかましてきた……立て続けにあいつの攻撃を食らった俺は、その場に臥してしまった。
「く……」
 何とか膝を立てたが、立ち上がる事が出来ない。顎に食らわせた俺の二翔脚はそこまで響いていなかったのか、あいつは俺の目の前に歩み寄ってきた。
「勝負あったな……」
 認めたくはない。悔しいが、現実に俺はそれ以上身を起こせない。次第に身体の力が抜けて目の前がぼやけてきた…
……駄目だ……俺は………
 再びビルの屋上が近くなってきてから先、俺はそれ以上のことは覚えていなかった。

 

 

 気が付くと、俺は包帯と薬膏だらけの姿で自分のベッドに横たわっていた。身体を起こすと、まだあいつに打たれた身体がキシキシと痛む。横を向けば、すぐ傍のテーブルに布をかけた何かが有り、その布をとると、汁錦薬包(固焼き肉まんみたいなもの)が数個と急須、そして電気ポットと湯飲みがある。俺が何時目を覚ましても良い様に準備をしてくれていた……こんな事をしてくれるのは、あいつ以外に居ない。
……何だってあんな事言ったんだろう……
 あいつが居なくなってから、少し街が荒んだ。勿論、派手な喧騒とかは俺が取り押さえるけど…細かい処で手入れが行き届いていない様な感じ。仕返しに来るチンピラは多いし、何かの騒ぎの後始末も何処か抜けてる…この家だって、掃除とかの生活的な事とかがいい加減になっている。そうこう考えているうち、あいつに凄く申し分けなくって、次にどう顔を合わせていいのかが判らなくなった。素直に謝るにしても、どう切り出したら良いんだろう……
 カチャ…
 部屋の扉が開いた。入って来たのは……やっぱりあいつだ。
「ようやく気が付いたんだな。まぁ、あれだけ派手に食らえば、倒れないでもないか…」
「ヤン。俺……」
 どう切り出していいか判らなくて、呼びかけた言葉を遮られた。
「例の変な組織の噂、総ボスを叩いてきたから、暫くは平気だと思う」
「………………」
 俺が潜入しようとしていた組織。あいつ…ヤンはあっさり倒してきたっていうのか?
「哥哥が怪我して動けない間は、俺が哥哥の代りに動くしかないもんな。これでも、俺は邪魔だっていいたいのか?」
「ヤン、ごめん!俺……」
 言いたい言葉が頭のなかで渦を巻いて言葉に出来ない。只、ベッドの上で身を起こしたまま、俺は頭を下げるしか出来なくて…
「……老師から、最近の哥哥がかなり有頂天になってるって言われてた。俺も確かに感じていたし、俺自身哥哥が調子に乗っていることに苛立っていたからな」
……街の中では俺より強い奴は居ない、弟のヤンは絶対俺より出しゃばらない、喧嘩は無敗、挑まれたファイトもほぼ負けなし……確かに俺は有頂天になってた…やかましくヤンに言われなくたって、俺一人で何と出もなるって思っていた……
「哥哥が前を見るなら、俺は哥哥の後ろに居て、哥哥の見えない後ろを守る。そうしてこの街を守ってきたんだろ?」
 そう言われた時、何故だか俺の眸から一筋の流れが滴り落ちた……
「ごめん、本当……俺……」
「判ってくれれば良いんだ。俺だって、あの時の哥哥の言葉にはグサっと来たけど…俺一人じゃ、この街を守りきれる自信はないよ……」
 俺が陽ならあいつは陰、あいつが陽なら俺が陰。俺達の役割は表裏一体なんだ……何で俺はつけあがっていたんだろう。そう思ったら自分が情けなくなってきた…まだ頬を伝う流れを放っておくと、ヤンがタオルを差し出した。
「ほら、そんなことで泣くなよ。当り前のことを言っただけなんだぜ?」
「……ん………」
 このまま俺がつけあがってたら、きっと壮大な大喧嘩になっていたかもしれない…今度の事で、俺は一つ学んだ様な気がした。俺達は、常にお互いを必要としていて、一人だけの成果ではないっている事を……



…滅茶尻切れな上、何も意味のない話ですが、強いて言えば「3rdユンに対して、一時期本気で腹を立てた理由を解明」だと思う……つーか、何が「越えられない壁」だぁ〜〜つけあがるなこん畜生!という事で。まるで****みたいなあの双龍は絶対に違う!という事です……
…主に星影を愛用している僕ですが、CPUユン大抵槍雷で来るんで「ひよるな〜〜〜」って思ってしまいます…こっちは一撃必殺じゃないのにさ。ユン使用時の場合、ヤン色んなSA来ますね。何故でしょ?
…未だにタイトル募集中です。詳しくは静流さんHPにて。ああ、復活しないかな、彼女……ワンピも良いけど、ストに帰っといで〜〜〜〜(泣)

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