そうしてしばらく立ちすくんだまま泣いていると、やっと誰かか通りかかりました。でも、やんたんはそのことにも気づかず、涙を振り飛ばして泣いています。 "なんだ、迷子…か?" その日とはやんたんにはわからない言葉で、何か言いました。それを聞いて、やんたんはもっと怖くなりました。いつも「知らない人には気をつけるように」と大爺に言われていましたから。 そんな人にあったとき、どうすればいいかということもちゃあんと教わっていたのですけれど、やんたんはそんなこともすっかり忘れ、ただただ、泣いているしかできませんでした。 "困ったな…" また、何か言いました。雨と涙で、見上げるように背の高いその人は、どんな人なのかやんたんからはよく見えません。その人はやんたんの前にしゃがみ込むと、 「君の名前は?」 と英語で聞いてきました。 一単語ずつ区切るような、ぎこちない"What is your name?"という言い方。この人は、あまり英語は得意ではないようです。 「やんたん」 「家はどこ?」 短い質問に、やんたんはわからない、と言うつもりで首を横に振りました。 「どっちの方にあるかも?」 今度は首をたてに振ります。その人の声を聞いていたら、少しづつだけど涙がおさまってきたみたいです。 "本当に困ったな" くしゅんくしゅんと鼻をすすり上げていると、その人は苦笑いをしながら頭を掻いていました。 "どこかで電話でも探して、警察に連絡するしかないか" 困り切った表情で何か呟いたその人は、おまわりさんに頼んで君のお家を探してもらうから、とたどたどしい英語でやんたんに言いました。 『こわいひとじゃぁ、ないみたい』 やんたんはちょっと考えていましたが、こっくりとうなずきました。その人はほっとしたように笑うとやんたんの傘を手にとってたたみ、 "よっと" とおんぶしてくれました。いままで見たことのない白い服を着ている、とても広い背中でした。おでこに赤くて長い布を巻いていることもわかりました。器用に左手でやんたんのお尻を支え、右手でビニール傘をさしています。その傘の柄には、やんたんの傘を引っかけてあります。 『てぃえのせなかも、こんなにおっきいのかな…』 あったこともないお父さんのことをおもい、またやんたんは泣きたくなりました。ぐっとこらえて太い首にぎゅっとしがみつくと、短くて固い黒髪がほっペにちくちくします。 ざあざあと雨の降る音。ぼつぼつとしずくが傘に当る音。ぴたぴたと濡れた地面を歩く音。ずっと同じ音のくりかえしとその人の背中のあったかさと泣きつかれたのとで、やんたんはちょっぴり眠たくなってしまいました。 ほんのちょっとだけ、うとうとしたとき、 『…やんたん…!』 ゆんたんの声がしたように思いました。やんたんははっとして、耳を澄ませてきょろきょろと回りを見渡しました。 『やんたん、どこ!?』 声は、もう一度聞こえました。さっきよりも、はっきりと。 「ゆんたん!」 "うわっ!?" 耳元でいきなり大きな声を出したので、その人はびっくりしたみたいです。 「おねがい、あっちにいってみて!」 背中をよじ登るように、ほっペとほっペがくっつくくらい身を乗りだし、声の聞こえてきたほうを小さな指で示します。 "…向こうに行けってことかな…" すべり落ちそうになっているやんたんを揺すり上げ、確認するように同じほうを指さします。やんたんは大きくうなずきました。 |
うげつさんコメント こっから先は一緒。謎の人(笑)にどう立ち去ってもらおうか悩んだんでやめた。でもここまで書いてもったいなかったのとお互いの反応が何げに可愛かったんでおまけに使った。 それにしてもわし、子供と隆の取り合わせ好きだよなぁ…何でかなぁ。 つーか、まじ可愛いッス!一応うちではスト3.1stでユン&ヤン16歳という設定。で、その段階で隆33歳ですからユン&ヤン5歳くらいだと隆22歳。スト2よりちょっと前って辺りでしょ?(でもって、ZEROより後)3rdユン&ヤンはそれから2〜3年程経っているという事で18〜19歳。あくまで僕の思う年齢設定ですので、その辺の苦情一切お断りです…すみませぬ。 |