2.陰謀 2−1

中央政府ビル

風間「ふむ……そうか……証拠品は消えたわけだ」
  「バウンサー?どこで取引がばれた……ハッサンがどうなったか確認しろ
もし生きていたら消さねばならん……我々のことが知られる前にな……」
警察本部

満開の桜
特別拘留室

ハッサン「ふむ……今一つだな……」
ティーカップを置き暇そうに部屋を眺めるハッサン
タカコの前でエンドウ警部が深い苛立ちを見せていた

エンドウ「なぁにが今一つだぁ!」
机を叩く

タカコ「机が壊れてよ、エンドウ警部」

エンドウ「うるさい」椅子を蹴る

沈んでしまった証拠品、貨物船の爆破により3週間湾岸が使えず警察には苦情の嵐
何より、唯一の戦果 ハッサンはまるで自分の家にいるようにくつろいでいる


エンドウ「あの密輸船が沈んじまったおかげで、三週間は桟橋が使えねぇんだ!」とタカコにやつあたり「苦情が掃いて捨てるほど市警本部に来てんだよ!」



タカコ「あら、沈めたのは私たちじゃなくて彼よ。」エンドウを軽くかわし

タカコ「それに彼らは対戦車ライフルからLMまでそろえていた。これが明らかに法律違反よ」

エンドウ「証拠があんのか、証拠は!」

「その替わり大物を捕まえたでしょう。アンダーグランドではメジャーリーグ級の武器商人
アリ・シャイーブハッサン」

船を沈めたのはハッサン、ハッサンを捕まえたのはAA
ベイシティー警察のメンツは丸つぶれだった
これでは、エンドウ警部でなくてもおもしろくない
しかし、そんな苛立ちも市長秘書であり元SWATで伝説の英雄とされるゴウマンが現れるまでだった

本部長「紹介しよう。市長の秘書官で、ミスターゴウマンだ」

エンドウ「SWAT時代からの英雄的なご活躍は本部長から聞かされております」

ゴウマン「やめてくれ、過去の話しだ」

マジックミラー越しにハッサンを見つめるゴウマン。また新しい厄介ごとがベイサイドシティーに持ち込まれたのだった。

ゴウマン「奴ですね」

逮捕劇から一夜明けて…

AAのメンバー達はそれぞれのオフを過ごしていた……

というより、

今回の3番埠頭破壊、証拠品未回収のためAAには報酬金が入ってこないばかりか一週間の営業停止を喰らっていたのだった。
浅い夕方……飲食街

シルヴィアはミシェルを付き合わせて、屋台にきていた

ミシェル「せっかくタカコがご馳走してくれるって言うのに、何で誰も行かないの?」
シルヴィア「イタメシみたいな気色のわるいもん、よ食わんわ。うちらの食べもんは、お好みやで」
ミシェル「……シルヴィアってどちらの出身なんですか?」

シルヴィア「生粋の琉球人やで。イラブもゴウヤも食うし」

いつまでもチーム打ち解けないアリサの態度にくだを巻くシルヴィア
シルヴィア「でもな、お前が悪がる必要ないで、悪いのは」箸を振った拍子にお好み焼きが飛ぶ「アリサや!」

お好み焼きをひっくる返しながら


シルヴィア「仕事の金入ってこんわ、一週間営業停止喰らうわ、全部あいつのせいやで」

全ての責任をアリサになすりつけるシルヴィア

シルヴィア「おかげでうちらの会社、赤字更新中や!」

ミシェル「だからって全部アリサのせいにするのも…」
シルヴィア「なにゆーてんねん!誰がなんて言うたかてみーんなアリサのせいや!」

食べながら、わめき散らす行儀の悪いシルヴィアの横でミシェルはチームにとけ込めていないアリサに思い悩む…


シルヴィア「ほんま腹立つ〜!」
「おっちゃん筋コンまだか!?」
廃ビル内

テロリストが飛び出し銃を向ける
マルシア、振り向いて倒す。すぐに向きを変えしゃがみ込んで、また一人倒す

警官を羽交い締めにしたテロリストが出てくる
記憶がフラッシュバックする…ドルチェに銃を向けるLM

しかし、マルシアは躊躇しなかった…倒れるテロリスト……

警官は無事だった…

突然世界の動きが止まる……

ヴァーチャル訓練が終了を告げる
息をつくマルシア自嘲気味に独り言「標的だと撃てるんだけどな……」
同時刻

無双輪業に乗り付けたケイはLMの取り扱いについて亮と言葉を交わす

ケイ「亮くん修理終わった」
AA社の個性的なLMを相手に一人格闘している

亮「ケイさん、もうちょっと……部品のすりあわせをしとかないと」

ケイ「いつまで待たせるのよ、今回は別だけど、アリサみたいに無理して乗る訳じゃないんだから」

亮「確かに部品の消耗は激しいけど、減り方にバランス取れてるし、ケイさんのほうがよっぽど癖が……」

LMの扱い方には搭乗者の癖が出る
メンテナンスを続けながらケイと話す亮

亮「ここっていうときにかなり酷使してますよ。アリサさんはどっちかって言うと、ドルチェと折り合い付けながら乗ってるって感じで……まあ、DIPシステムのっけた電脳型だからそういうところもあるんだろうけど……」

亮「アリサさんランドメイトのマスターとしてはたぶん一番上ですよ」

アリサを誉める亮
しかし、ケイは外を見るように目線を外し苦笑いしながら

ケイ「性格には問題があるけどね……」



そしてアリサはまどろみの中で、かつて自分が生身の体と愛するものを失った事件を思い浮かべていた。

ジャンリュックがアリサの髪をつかんで強引に引き寄せる
アリサ冷たい目で見つめる
ジャンリュックがニヤリと笑い強引にキス


ベイサイドシティー銀行の地下金庫

札束を詰める仲間達の先で、厚い外壁が爆破される

突入してきたのはSWATのLMだった…
激しい銃撃戦で倒れる仲間達
SWATのLMが激しく応戦

次々と銀行強盗を倒していく…
逃げるジャンリュックとアリサ

仲間が応戦しているが、うち倒される…

やがてアリサとジャンリュックは建物の屋上に追いつめられる

逃げる2人を三機のエアポリスが追いかける
ジャンリュックが手前のビルへ飛び移る
続けてアリサも…



しかし、銃弾がアリサを捕らえる…

落ちそうになるアリサを救うジャンリュック

ジャンリュックがアリサの右手首をつかむそして、アリサも腕時計の上からジャンリュックの手首をつかむ……

しかし絶体絶命の状況は変わらず


アリサ「手を離して。あんたが撃たれる!」

ジャンリュックが撃たれる
血が手を伝いアリサに…

アリサ「ジャンリュック!」

ジャンリュック「お前一人逝かせはしないぜ」

ジャンリュックが力つきる
アリサはジャンリュックの腕時計を握ったまま落ちていく……


ジャンリュック「アリサ!」

ジャンリュックは自ら手榴弾のピンを抜き……

ビルから落ちるアリサが見たのは爆風に消えるジャンリュック


そして、アリサの体は地上に止めてあったパトカーの屋根に打ち付けられた


「あ〜あこいつ」「つぶれちゃってますよ」SWAT隊員

死への誘いの途中アリサが最後に聞いたのは、誰かがサイバネティックオペを要請する声



深い夕方 アリサの部屋

アリサ「……!!」

ベットから飛び起きる

飾り気のない部屋
アリサの荒い息づかいだけが響く

記憶が交差する
SWAT隊員「あ〜あこいつ」「つぶれちゃってますよ」
ゴウマン「市警病院に連れていけ。サイバネティックオペの準備だ」

現実に戻る……



壁の小物入れから装置を取り出す

左手で髪を掻き上げると…
首筋のデータリンク端子が…そこに装置を突き刺す

アリサ「うっ……」

アリサ「ふー…」



装置をサイドテーブルに置く…

そこには、拳銃とジャンリュックの腕時計が…


MM21
夕焼けに染まる廃墟 ゴウマンとタカコ

タカコ「二度も震災があったのに、まだ市の再開発計画は進んでないようね」

ゴウマン「優先事項が多すぎる」

崩れかかったかつての繁栄の跡……

タカコ「密輸取引先を聞き出す代わりにハッサンの身柄を保護する。そこまでは判るわ。でもその取引先を徹底的に叩いてくれと言うのは……」

ゴウマン「ヤツも命が惜しいんだろ」

ゴウマンからAAにオーダーがかかる。密輸の陰に政府高官の関与を知ったウォン市長が、ハッサンの持っている情報と引き替えに彼の身柄の保護を命じたのだった。
そして護衛に当たるのはAA

ゴウマン「この件には中央政府の高官が絡んでいるらしい……」「『統制派』の有力政治家というところまでは突き止めてある」

ゴウマン「証拠がない。圧力は強い。裁判に掛けても無罪だ。」「だが君たちが敵機動部隊を壊滅させてくれれば、敵のトップは動きが取れなくなる」

ゴウマン「その隙に私が叩く」


タカコ「簡単に言ってくれるわね」「政治家のパワーゲームには付き合ってらんないわ」


背を向け冷たく言い放つ

ゴウマン「君のエンジェルチームを結成したのは誰だ」

それに対し嫌みったらしく
タカコ「あなたのボス。偉大なるベイサイドシティーの市長です」

タカコ「でも身体を張ってるのはうちの娘たちよ」

ゴウマン「判っている。だが指示には従ってもらう」

「あら、いい男」テロリストのリーダーの映像を見てタカコが冗談を言う

ゴウマン「パスポート名はアーサージョーンズ」「本名、ジャンリュック・スキナー」
ゴウマン「二年前に壊滅したテロリスト組織『セクンダディ』のリーダーだ」

ジャンリュック
ゴウマンからその名を聞いたタカコの表情が変わるジャンリュックかつてアリサの恋人…



ゴウマン「今は世界的なテロ請負屋だ。彼の仲間もこの街に潜り込んできている。ハッサンの事件を境にだ」

タカコ「つまりハッサンのボディーガードをやれってことね」

ゴウマン「こういうときのためのエンジェルだ。市長はベイサイド軍基地の警備隊にも応援を要請した。あれほど軍を毛嫌いしているのにな」

タカコ「アリサは外そうかしら……あの娘、まだみんなに溶けこめないでいるし……」

ゴウマン「ダメだ」

タカコ「迷いがある人間を入れるとミッションに支障をきたすわ」

ゴウマン「それくらいでがたついてちゃ、本当に使えるシステムにならんさ。五人でやらせるんだ。何があっても」

タカコ「高くつくわよ」

ゴウマン「だから観覧車が元通りにならないのさ」

ゴウマンの車がインターチェンジを降りていく…


続く 陰謀2−2     トップへ戻る