(プレイステーション2) 「φなる・あぷろーち」は、恋愛物のテキストアドベンチャーゲームです。 選択肢によってストーリーが分岐していき、様々な結末を迎えます。 制作、リリースともプリンセスソフト。 担当は企画。 具体的には、全シナリオを担当したのをはじめ、内容面全般に渡って監修しています。 実はこのお話、「トライアル・トライアングル」の企画中に考えた候補作の1つだったりします。 そのときは、「ドラマCDというメディアに、より相応しい作品」ということで、「トライアル・トライアングル」が選ばれたのですが、その後プリンセスソフトさんから声をかけていただいた際、「なにか温めている企画はありませんか」と聞かれ、「それならば」と提案させていただいたのが本作です。 なにからなにまで自分でやったので、「φなる・あぷろーち」の評判に関する私の責任は極めて重大。 発売日が近づくにつれ、胃の痛い思いをしました。(^^; 幸い、今のところ平謝りという状況ではなさそうで、めちゃくちゃ重たかった肩の荷が、やっと下りた思いです。 なにかとツッコミの入ることの多い「φなる・あぷろーち」というタイトルですが、最初は全然違う仮題がついていました。 今の「φなる・あぷろーち」というタイトルがついたのは、百合佳シナリオを書いている途中。 百合佳は4番目だったので、かなり後になって決まったことになります。 百合佳の受験に関する会話のなかで、「やらなきゃゼロ」とかって涼が言いますね。 「そう言えば、明鐘シナリオでもセリフのなかで『0%』がどうこうって言わせたなぁ」と思い出し、その「ゼロ」をキーワードにすることを思いつきます。 が、どうも「ゼロ」という音は響きがきついので、違う言葉で置き換えられないかと考えるうち、空集合を表す「φ」の字に連想が及びました。 で、「ファイ」という音を含む単語・熟語…と考え、「φなる・あぷろーち」というタイトルが浮かんだわけです。 プリンセスソフトさんにおうかがいを立てたところ、「それで行きましょう」と即決。 めでたくタイトルが決まりました。 同じくツッコミが入りやすいのが、キャラの名前。 西守歌は、「Memories Off 2nd」のキャラに「巴」という名前をつけたので、「じゃぁ、今度は『しずか』にしようかな」と、安直に決めました。 読みが平凡なので字はひねろうと思ったんですが、ひねりすぎてまず普通は読めませんね。(^^; 明鐘は、なにかの拍子に「『明鐘』と書いて『あかね』と読ませよう」と思いついたのを、今回使ってみました。 で、この2人がかなり突拍子もない字面なので、あとの3人のヒロインは割とおとなしめの命名で我慢(?)したわけです。 名前と言えば、1つ予想外だったのが、お嬢の名前の読み方。 私自身は「---」と平板に読んでいたのですが、収録のときは笑穂役のたかはし智秋さんを筆頭に、皆さん迷いなく「-__」と「え」にアクセントを置いて読まれました。 ちょっと自分の言語感覚に自信をなくしてみたり。(笑) 一方、名字については、「益田」は超のつくお金持ちというところからの連想で。 主人公は、性格が性格なので、なんとなく骨のありそうな名前を…と考えて「水原涼」と決まっていました。 で、「ますだ」「みずはら」と来たので、残りの名字は「む・め・も」で始まるものにしてマ行で統一してみました。 それから今回、久々に作詞も担当させていただきました。 私は専門家ではありませんのでその道のプロには及びませんが、作品世界に関する理解は他の誰にも負けないわけですから、その点を武器に「φなる・あぷろーち」という作品「らしさ」を出そうと心がけたつもりです。 それだけでやめておけばいいのに、余計なことまで考えるものだから、いらん苦労を背負いこんだりもするわけですが…。(^^; CDをお持ちの方、歌詞カードをよ〜く眺めると、私のシャレに気づくかもしれません。 それから、このページをご覧になるほどの方ならご存知でしょうけれど、ゲームリリースと前後してアニメの放映も始まっています。 こちらも大変素晴らしいスタッフさん達に恵まれたおかげで、好評を博しているようです。 正直、アニメ化されるという話をうかがったときは「タイトルとキャラだけ借りた別物になるんだろうな」と、半ば諦めにも似た思いだったのですが…。 後日送られてきたシリーズ構成、脚本等を拝見してびっくり。 とてもゲーム版のシナリオを尊重してくださっていて、ありがたいやら申し訳ないやら。 打ち合わせの際にも、監督の山本さんや脚本の長谷川さんが、シナリオを本当によく理解してくださっているのが話の端々から伝わってきて、シナリオ屋として冥利に尽きる思いでした。 第3話でハルと西守歌が対決する場面なんかは、ゲーム版シナリオで没にしたイベントCGで、そういうものがあったんです。 恐らく、それを目に留められて、ああいう形で生かしてくださったのでしょう。 また、設定資料なんかも見せていただいたのですが、第1話のウサ耳カチューシャの機能をチビ西守歌が解説していたりして、しかもその解説がちゃんと西守歌口調になってるんです。 そんな感じで、アニメの制作に関しては、嬉しいことの連続。 本当に、感謝、感謝です。 イベントCGと言えば、「こんな感じの絵」と大まかな内容を伝えて描いていただくのですが、時折こちらの思いもよらないような絵が出てきたりして、これも嬉しい驚きがありましたね。 筆頭は、お嬢が教室の窓から外を眺めるシーン。 ちょっと私のなかからああいう構図は出てきません。 「本当、プロってすごいなぁ」と思わされた一瞬でした。 1本全部のシナリオを担当したり、アニメ化されたり…。 シナリオを書き上げてから実際にリリースされるまでに1年半以上が経過するっていうのも、多分、最初で最後じゃないかなぁ。(笑) 「初めて」づくしの、いろいろな意味で思い出深い作品であることは間違いありません。 追記 その後、ドラマCDの脚本や、ノベライズも担当させていただきました。 「φ」キャラ達の面倒を最後まで見てやれて、シナリオライターとして本当に幸せを感じています。 なお、小説版「φなる・あぷろーち」2巻のp.165-p.166にて、印刷抜けがありました。 正しくは、こちらをご覧ください。 |