管理人より

今回のこの文は、なべをさんから頂きました。なべをさん、ありがとうございました。

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錬金術について

 

@錬金術とは

最近のファンタジーにもよく登場する錬金術でありますが、そもそもいったい何を目的としているのかといいますと、名前から連想して鉛などの卑金属から金を作る研究だと思われるかもしれませんが、実はそれは錬金術師にとっては通過点に過ぎませんでした。

彼らの真の目的は自然界の秘密を解明する事(これに関してはあとで説明します)でしたが、そんな事にパトロンが出資してくれるわけもなく、自分たちも研究で手一杯なので、他に仕事をして儲ける余裕もありません。ですから、金を作る事で研究費用を稼ぐ、あるいは金を作る研究でパトロンに出資してもらうしかなかったわけなんです。

 

A錬金術の夜明け

記録に残っている中での最初の錬金術師はA.D100頃、アレクサンドリアのマリアという女性だそうです。彼女は研究の過程で蒸留器を発明しており、この発明は現代においてもとても役に立っているものです。もちろん後の錬金術師の研究にもかかせない器具となりました。
その5〜600年後、錬金術の父と呼ばれるアラビア人ゲーベルが残した書物が、その科学原理の組織化の過程で、
よい精霊と悪い精霊についての考察を混ぜた事が後の錬金術の方向性を決定したといっても過言ではありません。これより錬金術師はすべての物質には精霊が宿っていると考えるようになったのです。それが今ファンタジーでおなじみの火のサラマンダー、風のシルフ、水のウンディーネ、土のノームです。

 

B錬金術の目的

というわけで彼らの考える自然界の秘密とは、それぞれの物質に隠れている精霊を取り出す事でした。彼らはその精さえ取り出す事ができれば、それに触れたものは全てその精のつかさどる物に変わってしまうのだと考えました。もうおわかりですね。そうです、つまり金の精を取り出せばどんなものでも金に変えることができるというわけなんです。この精の事を錬金術師は「哲学者の試金石」「万能加速者」「投射の粉末」などと呼んでいたようです。

彼らはあといくつかの目的を持っていましたが、その一つが「万能溶剤」の発明です。これは宇宙に存在するあらゆる物質を溶かす事ができる物質です。溶かすといっても水に溶けるようなことではなくて、その物質自体を分離分解してしまうものです。つまりこれを使うと、その物質に宿る精を抽出できるのです。よってこの「万能溶剤」は錬金術師とっては求めてやまないものでした。

あと一つは、これもおなじみ万能治療薬「生命のエリクシル」の発見です。某有名RPGで「エリクサー」として登場していますね。ただし錬金術で求められていたのは、永遠の生命を提供する力だったので、かなり強力なものだったようです。

 

C錬金術師の苦悩

彼らの研究はただでさえ前途多難であったのですが、さらに教会から弾圧を受けた事で、ますます自分の研究室にこもってひっそりと研究を続けなくてはならなくなりました。
それは彼らの「真理」への追求が、疑う事なき「信仰」と相容れないものだったからです。そんなわけで彼らは自分の研究成果さえも自分やごく近しい人以外にはわからないように
暗号や記号で書き記すようになりました。さすがに教会の関係者にもそれは何の事だかわかりませんでしたが、後の世の錬金術師にとってもそれは同じで、彼らの研究が遅々として進まない理由がそこにもあったのです。

というわけで、彼らの努力は往々にして報われなかったのですが、(わずかに残った文献には「あと一息で成功する」「あとわずかな問題を残すのみだ」という記述であふれています。そのわずかな問題が解決する事は決してなかったのですが…)それでも彼らの意図しないところで、先の蒸留器の例にあるように現代の科学に多くの貢献を残しているのです。今我々がこうしてインターネットをやっていられるのももしかしたら錬金術のおかげなのかもしれませんね。

 


 

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