『7年振りの再会』

一週間くらい前から、カウントダウンは始まっていた。XTCとの約7年振りの再会。きっとまた、僕の想像を裏切るくらいに素敵なプレゼントを届けてくれるのだろうと思っていた。ラジオで時折流れるニューシングル。しかし、たった一曲聴いただけでは、何もわからない。アルバムに盛り込まれる他の曲と交わり合ってこそ、彼等の作品はその輝きを増す。

今日は朝から落ち着かない。つい先日作ったプライベートベスト盤MDを聴きつつ、時が来るのを待つ。まるで、フォークとナイフを持って、皿がでてくるのを待つかのような心境だった。

昼休み。飯のことは無視して、アルバムを求めて出発。ところが、最寄りの店は休み。そんなことをしているうちに、休み時間は無くなってしまう。多少の怒りもあったが、まだ夜という時間があることに期待する。絶対に今日、店頭に並ぶはずだと信じて・・・。

帰宅途中、近隣のレコード店に立ち寄る。さぞかし派手なコーナーでも作ってやっているのかと思い。飾られたポップを目印に探す。しかし、どこにもない。
「あ〜、やはり明日か・・・。」
そんな矢先、こじんまりと飾られた新作コーナーの一角で発見する。「7年振りの新作!!」ってポップに書いてあるだけだったが、それもまた「らしい」などと思いつつ、心の中でバンザイ三唱。ついに、この時が訪れたのだ。

会計を済ませてからというもの、もう子供のようにワクワクする。初めから視聴盤は聴かず、家でじっくりと聴くことに決めていた。というよりも、久々の感動を家でじっくりと味わいたかった。駅へ向かう足取りも自然と軽くなる。心臓は楽しみで、少しドキドキしている。もう頭の中はその新作に対する期待でいっぱいだった。

ろくすっぽ昼飯も食べていないにも関わらず、手軽に晩飯となる弁当を買う。まずいのはわかっていたが、晩飯をのんびり食べている暇があったら、すこしでもゆっくりと新作が聴きたい。そんな気持ちしかなかった。

全ての体制が整い、いざプレイヤーへ。のっけから完全なXTCワールドだ。美しいストリング系の音、スケールの大きいオーケストラサウンド・・・。美しく、清らかでいて、彼等らしさは全く損なわれていない。

曲が進むにつれて、心が洗われていく。思わず目を閉じて聴いてしまう。今まで、頭を悩ませていたことや、考えこんでいたことが全てすっとんでいく。決して派手ではないし、時代にマッチした作品だとも思わないが、ここには間違いなく1999年のXTCの姿が生き生きと存在している。そう、僕はこの瞬間をずっと待っていたのだ。

先日、友人とROCKとPOPについての話しをしたことがあった。どこまでがROCKなんだとか、そんなことを話したのだが、彼には彼なりの強い意見があり、僕にもゆずれない意見があった。しかし、このXTCの新作は、僕にこんなことを語りかけているかのように思えた。
「ねぇ、まだそんなこと言ってるの?」
ジャンルだとか、時代だとか、そんなこと、どうだってよくなるだけのものがこのアルバムにはあった。改めて、彼等の存在感の大きさに気付かされる思いだ。

XTCが、再び現在進行形として動き出した記念すべきアルバム。そして、秋にはエレキな新作が・・・。でも、7年間も待ったのだから、そのくらい楽しませてくれてもいいよね。この1000年代最後の年に、何とも贅沢なプレゼントだ。

最後に、このアルバムのジャケットに記された言葉を紹介しておきたいと思う。

「DO WHAT YOU WILL BUT HARM NONE」

ホント、そうだよね、Andy&Colin。



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