『雪のように』

頭の整理がつき始めていた矢先に、また一つ問題が生じてしまった。ここ数ヵ月間、自分が走り続けてきたのは、一体何だったのだろうと疑ってしまうような「事件」だった。僕の気持ち一つで、その「事件」が解決しないことはわかっているが、いともあっけなく、ことが終わってしまうことに不信感を抱かずにはいられなかった。単純に僕が頭を切り替えればいいだけのことなのかもしれないが、ようやく動き始めたことを、「はい、終わりです」って言われても、「わかりました」とは絶対言えない。相変わらず不器用。

どうやら結果的には、僕が携わってきたこと自体は終わらないらしいのだが、今以上は追及しない体制になっていくらしい。しかし、全体を通して見ても、普段あれだけかっこいいことを言ってた割には、どうしてこうも簡単に、ことを終わらせられるのか不思議で仕方がない。とはいえ、最初からある程度ポーズだろうとの予測はついていたのだが、あまりにもこだわりなく白旗を上げたことに、少し腹立たしさを感じた。きっと、頭の中であれこれと浮かんだことをタラタラとしゃべっていることが楽しかっただけなのだろう。そんな中で、必死になってやってきた自分に、虚しさを感じずにはいられなかった。

人間、いくらでもかっこいいことは言える。でも、それを実りあるものをしていくためには、それなりに泥臭いことだってやっていかなければならないのだ。今までそれをやってこなかったツケが回ってきたのだと、笑いとばしてやりたい気もするのだが、その一部に自分が関わっていただけに、笑いごとで済まされないのである。

僕がもう少し「大人」であれば、ことは全て丸く収まるのだと思う。「仕方ないよね」って思えれば、どれだけ楽になれることか。でもそんな風に考えられないから、僕なのだ。そこが自分の欠点であり、大好きなところだったりもする。そんな僕という存在は、組織からすれば、きっとかなりの厄介者なのだろう。「わがまま」「子供」と言われれば最後。でも、嫌なことばかりを腹にためてやっていくくらいなら、はっきり言って、つまみ出されるほうが気が楽だ。

頭が重い。ことが起こってから時間が経っていないせいか、頭の中がどうしようもなく中途半端な色で染められている。またまた訳のわからない状態へと進むのか・・・。そんな不安を感じた。

何だか酒に頼らざるを得なかった。以前なら酔えない量でも、今なら充分酔うことは可能だ。少し飲んでから、自分が酔い始めていることに気付く。酔ったところで、どうなるわけでもないのだが・・・。

いつの間にか眠ってしまっていた。3時くらいまでは記憶が残っているが、そのまま横になって眠ってしまったようだ。目が覚めてから、昨夜の自分に何が起きたのかを思い出すまでに、少し時間がかかった。寒い。風呂に入ってから寝たとはいえ、布団も掛けずに長い時間寝るのはよくない。多分、風邪にはならないだろうが、頭の活動は睡眠不足のように鈍い。

夕方カーテンを開けてみたら、雪が積もっていた。部屋に閉じこもっていたので、いつから降り始めたのかなんて、全く知らなかった。

雪を見て、急に外へ出たくなった。寒いのは苦手だが、雪の時だけは別だ。少しみぞれ混じりの雪が、まだパラパラと降っていた。足元にはうっすらと、民家の屋根や線路には、そこそこ雪が積もっている。雪景色とまではいかないにせよ、今年始めての積雪に、少しだけワクワクしてしまった。
「もっと降らないかな。」
ふと、そんな思いがよぎった。

真っ白になりたい。どこか遠くの山に行きたいと思った。晴れた日の誰もいないスキー場でもいい。自然の音と、においと、真っ白な雪の中で、しばしボ〜ッとしたい気分だ。

はっきり言って、訳のわからない連立方程式の中にいるのはゴメンだ。見せかけとか、まやかしだとか、そんなもの必要ないのに・・・。とはいえ、この世の中、その存在を認めないと、やっていけないことは充分承知しているし、その存在そのものが、いろんなことのバランスを維持させていることもわかっているつもりだ。しかし、あまりにも多すぎる。だから、何だかとても視界が悪い。

今にはじまったことではないけれど、今まで鬱積されてきた想いが噴出したような気がした。



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