『BIRTHDAY』

今日は誕生日。とは言っても、僕の誕生日ではない。姉の誕生日である。しかし、ここでこんなことを言い始めたところで、インターネットを毛嫌いしている人だから、このメッセージは見ることはない。それがわかっていてるにも関わらず、こういったことを話し出してしまうのが少し不思議だ。

今思えば、本当にケンカばかりしていた。僕が中学校を卒業する頃まで、姉のほうが身長が高かったせいもあってか、小さい頃は随分と力づくで泣かされた。そうこうしている内に背丈が同じくらいになっていき、ほとんど口を効かないようになっていった。たまに話したと思ったら最後にはケンカ。両親もさぞかし呆れ返っていたことだろうと思う。

僕が高校に入ったくらいのことだろうか。お互いこれ以上ケンカし続けていても、体力と気力と時間の無駄遣いであることを悟ったのか、自然と終戦を迎えた。それどころか、一緒に映画を見に行ったり、買い物をしたりするようになっていた。まるで、それまでの冷戦状態がウソのようだった。

以前、こういう話しをすると、必ずシスターコンプレックスの話題を持ち出す人がいた。しかし、そういった感情は全くない。同じ血が流れている身近な人間として、こんな風に仲良くなっていくのは不思議ではないことであろう。一人の人間として考えた時に、一体何の問題があるというのだろうか。

もともと両親の評価は、じっくりコツコツ型の姉のほうが高く、「落ち着きがない」「集中力がない」と通知簿に書き続けられてきた僕は、いつも下に見られていた。いつの頃からかそれがくやしくなってきて、真面目に勉強し出したような気がする。最初は親に対するアピールみたいなところから始まったのだろうが、最後にはライバルとしての姉に対する挑戦のようになっていた。運よく3歳違いのため、中学以降は僕と入れ違いで卒業していったので、いい壁になっていたように思う。

その頃の一番の思い出になっているのが、進学がかかった試験期間中に、僕が熱を出して寝ていた時のことだ。僕は布団の中で、先生にいかにうまい言い訳をしようかと考えていた。そこに姉が突然やってきて、きつい口調でこんな風なことを言った。
「今頑張らなかったら、いつ頑張るの。熱があるかもしれないけど、今やらなかったら、絶対後悔するよ。今まで何のために頑張ってきたの。逃げ道を考えてたらだめだって。」
その一言で熱のことが頭からすっ飛んでいったのを今でも覚えている。家族の中で、あそこまできつく言ってくれるのは姉だけだった。事実、後になって、あの時頑張っていなかったら僕の進路が変わっていたことがわかった時にはゾッとした。そんなこともあって、今でもその言葉を思い出すことで頑張れる時がある。

今や、お互い全くといっていいくらい違った生き方をしている。姉の生き方に魅力は感じないし、考え方にも賛同できない部分は多い。しかし何かに取り組む姿勢に関しては、今でも見習うべきところが多々ある。やはりその点になると、僕はかなりの影響を受けているのだと思う。

そう言えば、去年の暮れに遊びに行って以来会っていない。

そうだ、これから電話でもしてみることにしよう。きっと、またケンカ口調の会話にでもなるのだろう。



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