『一本の電話から』

普段めったに鳴らない携帯に電話が入る。めずらしいこともあるものだと思いつつ、ディスプレイを見てみると、少し懐かしい友達の名前が表示されていた。話しをするのも約1年振りになるだろうか。

何度か電話でもしてみようかとは思ったのだが、またそのうちと延ばし延ばしにしているうちに1年近くが経っていた。もう電話番号だって変わってるかもしれないし、今さら電話しづらくもなっていた。最近どうしているかなと、ふと頭によぎったこともあったが、結局何の行動にも移さずにいた。そんな矢先に電話がかかってきたのである。ふと嬉しく思った。残業中であるにも関わらず、すこし長話しをする。

その友達とは3年ほど前に知り合った。夜な夜な遊んだことも何度かあったが、その友達が仕事を始め、その反対に僕が仕事を辞めた去年の夏頃を境にして、ほとんど連絡を取り合うこともなくなっていた。僕の記憶では、バイトながらも仕事が見つかったことを報告しようと昨年の暮れに電話したのが最後だったと思う。

「何度か電話しようとは思ってたんだけどね。」
言い訳がましく僕は言った。
すると、その友達はすかさず言い返す。
「みんなそう言うんだよね。ハッハッハ。」
ドキッとした。言われる通りだと思った。

最近感じていたことではあるのだが、随分と多くのことを先送りにしているように思う。そのうちそのうちと自分に言い訳をするかのように後回しにした結果、どれだけ多くのことを動き辛く、または動けなくしてしまったのだろうか。友達への電話、手紙・・・。思い当たるケースがわんさかと頭に浮かんでくる。

残念ながら、一日に与えられた時間は限られているし、当然一日にできることにも限界がある。すべてやりたいことをやり尽くせれば、それほど幸せなこともないのだが、世の中そうはいかない。できない結果、いろんなことが先送りされていく(できないということ自体、言い訳だったりすることもあるのだが)。そうこうしているうちに、先送りされてきたことが山積みになってしまって、動くどころではなくなってしまうのだろう。その結果、後悔することが結構あったようにも思う。そう考えると、何だか淋しい気もするが、この悪循環が人生の中で何度も繰り返されているのだろう。しかし、先送りされていることほど、自分の足元にある小さくもとても大切なことであるように思うのは僕だけだろうか。

そういえば最近こんな電話をもらったこともあった。
「近々って言ってるだけじゃ、そのままになってしまうような気がするんだ。」
きっとそういうことなんだろう。

特に人の気持ち、感情が関わってくることに関しては、その新鮮さがある時にこそ伝えるべきなんだろうと思う。もちろん怒りや悲しみなんかは少し時間をおいてからのほうがよかったりするのだろうが・・・。なかなか難しいものである。



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