『引っ越し』

このところ、移住計画を本気で考えている。東京にやってきたのが4年前。前の会社での配属先が、ここ東京だったというわけだ。僕はそれまで東京だけには行きたくないと思っていた。人ゴミが嫌いな僕にとって、これほど合わない環境はないと思っていたからだ。その気持ちに逆らうかのように、配属に関する面接で、いきなり出された条件が、「東京でやってみない?」だった。ここでイヤだと言うこともできたのだが、それは逆効果だろうと勝手に判断。面接官だった人事課長のウラをかくつもりで、「おまかせします」などと言ってしまった結果、いとも簡単に東京勤務が決定。当時は、なんでイヤだと言わなかったのだろうかと、随分後悔した。でも、既に面接の時には、東京配属になることは決まっていたのだろう。そんな訳で、嫌々ながらもやってきて、さっさと京都へ帰ろうと考えていた。

去年、前の仕事を辞める時も、京都へ帰るつもりでいた。仕事を辞める以上、東京に居る必要はどこにもなかったからだ。しかし、ギリギリになって東京に残る決意をした。色々な理由があるのだが、ここで帰ってしまったら、2度と「外」へ出ることはないだろうと考えたのが一番の理由だった。親には帰ると言っていたので、東京に残ることを告げた時には、随分と驚いていた。あれだけ東京を嫌っていたのだから、驚くのも当然だろう。友達にもそんな風に驚かれた。そうして、それまで会社名義で借りていた部屋を、自分名義にて再契約。だから、東京に来てから、ずっと同じ環境で過ごしてきたことになる。その時に引っ越すことも考えたのだが、安くて、広くて、静かなこの部屋は、僕にとっては最高の環境にある。あえて引っ越しする必要もなかった。

4年もいると、いろんな思い出ができるものだ。その中でも一番の思い出になっているのが、昨年仕事を辞めてから過ごした、5ヶ月間の無職の時のことである。ほとんど何もすることがなかったその期間に、自分自身について、いろいろと考えることができたからだ。そのことで、それまでの自分を整理することができた。ものすごく辛いことではあったが、自分の内面をゆっくり見つめられることは、それまでなかったことだった。

そこで最近思うのが、ここに居続けることは良くないのではないか、ということである。かつて東京に出てきた時に、京都のことを振り返ったことがあった。そうすることで、東京での新しい自分に気がついた部分が多々あったように思う。それと同じように、そろそろこの場所を過去のものにしないと、僕は前へ進めないような気がする。直接的に過去に束縛されている訳ではないのだが、この場所で考え事をすると、必ず過去がオーバーラップしてくる。ここには、良くも悪くも、思い出がありすぎるのである。辛かった時を過ごしても、楽しかった時を過ごしても、最後にはここに一人でいたからだろう。そういった意味で、この部屋での生活も整理しなければならないような気がしている。そう考えれば、まだ僕自身の整理は終わっていなかったのかもしれない。

ここは実家ではない。その感覚で居続けてしまうと、何のために東京に残ったのかわからなくなってしまうような気がする。来年契約更新ということを考えても、ちょうどいい機会なのかもしれない。ちょっといろんな街をふらついて、次なる基地を探してみようか・・・。しばらく、このことで悩んでしまいそうだ。

まぁ、ちょうどいいか。秋なんだから。



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