作品タイトル 作者名 出版社
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「氷結の魂」 菅浩江 (徳間ノベルス 上下)
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作品ジャンル(管理人の独断で決定)
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本格ファンタジー (体の芯まで冷え冷え) |
あらすじ
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ストーリの序盤では氷の魔王の呪いを受けた王女ガレイラを救うために、隣国の王子であり、いいなずけのゼスが王女の呪いを解くために、魔王退治に出発します。そして、途中で仲間が増えてゆき…、とここまではわりとよくある話ですし、またこのパターンね、などと言われてしまいそうなほどですが、ここからがこの作者は違います。ゼスは単身乗り込むのではなく、同盟軍の旗印として大軍勢を率いて旅立ちます。そして氷の魔王の居城までは極寒の地を通り抜けなくてはなりません。軍勢は猛吹雪にさえぎられたり、豪雪の中を歩いていきます。もちろん寒さは並大抵のものではなく、ありとあらゆる水分が一瞬にして凍りつきます。 この過酷な旅の中で、まだまだ人間的に未熟なゼスは、人を信じられなくなったり、自分自身にも自信が無くなったりします。仲間割れもあり、信奉する神ですら信じられなくなってきます。自分が正しい、と思っていたゼスはいったい何が正しくて、間違っているのか、悩み苦しむことになるのです。 |
おすすめポイント
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これは本格的なファンタジーです。一見したところではごく普通のヒロイックファンタジーのように思えます。が、ストーリーはただ極寒の地を通りぬけるだけに終始します。魔王の手下は出てきますが、凶悪なモンスターや、派手派手しい魔法などは登場せず、ごく普通の人々が厳しい寒さを乗り越えるさまを描きつづけます。その寒さの描写ときたら、本当にこの作者はこんな旅をしたことがあるのではないか、ヒマラヤ登山でも経験しているのではないか、というくらいにリアリティーがあって、読んでいるだけで凍えてしまいそうなほどです。 ファンタジーは好きだけど、もうありきたりなのは読みたくない、という方にはぜひ読んで欲しい作品です。他にもこの作者はSFも素晴らしいものがたくさんあります。ぜひどうぞ。 |
心に残ったこの一言
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「ゼス王子、どうかそのまま鮮やかに輝いて、 光芒のごとく突き進んでいらして」 ――ガレイラ・リアチェリス |
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特になし |