作品タイトル   作者名   出版社

「ダレカガナカニイル…」     井上夢人

 (新潮文庫)
作品ジャンル(管理人の独断で決定)
 ミステリアスSF (あるいは極甘ラブロマンス)
あらすじ
 警備会社に勤めるごく普通の青年西岡悟郎は、仕事で、ある新興宗教団体の警備をする事になります。その団体は地元の住人ともめごとが起きていたため、教祖の身を守るために派遣されたのです。しかし悟郎が警備をしている真っ只中で、教祖は火事で焼け死んでしまいます。そして、その時から、悟郎は異変を感じ始めます。自分の頭の中で誰かが話しているような気がするのです。最初は幻聴か、と思われたのですが、頭の中の声はまるでテレパシーで誰かと話しているかのように、現実的で、しかもちゃんと悟郎と会話が成立するのでした。そしてその声は、自分は火事の時に死んだ教祖ではないか、死んだ瞬間にその精神だけが、悟郎の身体に入ってしまったのではないか、と言い出します。悟郎は自分がおかしくなってしまったのでは、と気に病むのですが…。
おすすめポイント
 これはミステリーとなっていますが、きっとSFだと思います。でも謎めいた物語、という意味だとしたら、やはりミステリーかもしれません。どこかに分類するのが難しい作品と言えるでしょう。読んだ人それぞれが違う感想を持つ作品ではないでしょうか。
 いったい悟郎の中には誰が住んでいるのか、それとも本当に悟郎の方がおかしくなってしまったのか。霧の中をさまよっているかのように、何が真実で、現実なのか分からなくなってしまいます。そして驚きの結末が待っているのでした。
 この作品は実はせつないラブストーリーでもあります。ミステリーが苦手な方にもおすすめです。
心に残ったこの一言
   「心のほうが外側で、身体は内側にあるんです。
     あたしたちは心に包まれているんです」 ――葉山晶子
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