北海道の活火山

2012.3.26加筆修正)

 

気象庁は2003年に活火山の定義を国際的な標準に準拠して“過去1万年以内に噴火したか現在噴気活動が認められる火山”と改定し、108の火山を活火山と指定しました。その後2011年に2火山を追加指定されたので現在は110の活火山があります。従来は“過去2000年以内に噴火したか現在噴気活動が認められる火山”を活火山としていました。110火山の中で20火山が北方領土を除く北海道にあります。地形あるいは地質学的な情報から完新世に噴火履歴があると推定できても、最新噴火年代が特定でなかったという理由で活火山に指定されなかった火山もあり、将来指定変更の可能性があります。

気象庁は火山活動の監視の都合により活火山の範囲を決めるため、純粋に学術的な視点にそぐわないケースが見られます。例えば八丈島には西山(八丈富士)と東山(三原山)と呼ばれる2つの活火山がありますが、気象庁の指定では一括して八丈島となっています。北海道では風不死岳が樽前山に含められています。なお、地図帳などで昭和新山を有珠山とは独立の活火山としている場合が見られますが、昭和新山は有珠山の山麓噴火の産物であり、火山学的見地のみならず防災対策上からも有珠山に一括されるべきです。

 以下に示す23火山のうち、20番目までは現在活火山として指定されています。21番目以降は定量的な年代測定データがないため活火山に指定されていません。

 なお、日本列島のような島弧で最大級の火砕流噴火をおこす大型のカルデラ火山(北海道では屈斜路、阿寒、支笏、洞爺)については噴火の再来周期が数万年以上であるため、現在使われている活火山の認定基準は適用できず、活火山になっていませんが、。大型のカルデラ火山は数万年を経て同様の火砕流噴火を繰り返した事例が知られています。


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1 知床硫黄山

知床硫黄山は約24万年前から活動を開始した成層火山である。数千年前に山体崩壊を起こして堆積物が山麓に起伏に富む地形を生み、知床五湖となった。その後溶岩流、溶岩ドームや爆裂火口を作る噴火が繰り返された。1936年の噴火では溶融硫黄が流れ出した。

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2 羅臼岳

羅臼岳は知床峠の北東側に接する成層火山である。活動開始時期は判明していないが原型をよく保った溶岩流や火砕流堆積物の地形があり、山頂部には溶岩ドームがある。最新の噴火は摩周及び北海道駒ケ岳起源の火山灰との上下関係から500-700年前と判明している。

 

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3 摩周

摩周成層火山で発生した約7,000年前の大規模火砕流噴火によって摩周カルデラが形成され摩周湖となった。3,500年前以降に湖中のカムイシュ島溶岩ドームと南東岸のカムイヌプリ成層火山が出来た。1,000年前の軽石噴火でカムイヌプリの頂上部に大きな火口が出来たがその後は火山活動を休止している。

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4 アトサヌプリ

屈斜路カルデラの中央部では2万年前以降に多数の溶岩ドームが相次いで生まれている。その中でアトサヌプリは1,000年以上前に誕生した最新の溶岩ドームで、山頂部に水蒸気爆発で生じた熊落とし火口がある。現在噴気活動が活発である。

 

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5 雌阿寒岳

雌阿寒岳は数万年前から活動を開始し、12,000年前には周囲に火砕流を流出した。その後溶岩流や溶岩ドームを主体とするナカマチネシリ、ポンマチネシリ、北山、阿寒富士が出来た。ポンマチネシリ山頂火口は約700年前、その中の赤沼火口は約400年前に出来た。20世紀以降は小規模な水蒸気爆発しか起こっていない。

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6 丸山

噴火年代未詳の溶岩流や溶岩ドームからなる丸山の北西山腹に延長2.5kmにわたって水蒸気爆発によりできた火口列がある。この火口列の噴火年代は約3,000年前、600年前と泥流発生の記録がある1898年である。現在は噴気活動が見られる。

 

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7 大雪山

大雪山は多数の成層火山や溶岩ドームからなる複合火山群で約100万年前から活動を開始した。大雪山の山頂部にあるお鉢平は約3万年前の火砕流噴火で生じた小型のカルデラであり、現在は噴気活動が見られる。旭岳は成層火山でその西側が崩壊し、その中に地獄谷の爆裂火口群があって噴気活動が見られる。

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8 十勝岳

十勝岳の活動は約10-20万年前から始まった。約3000年前から始まった最新期の活動はグラウンド火口を形成して火砕流を白金温泉付近まで流出した。その後も次々と火口を作っては火砕流や溶岩流などを山麓に流下し、積雪期の噴火では泥流の発生を繰り返した。

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9 利尻山

利尻山は13-20万年前に活動を開始した成層火山で、活動の最盛期は4-5万年前であった。山体は現在は侵食が進みマグマの供給路である岩脈が露出している。北山麓や南東山麓には8,000年前までに出来た沼浦などの側火山群がある。今後火山活動が発生する可能性は低い。

 

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10 倶多楽(クッタラ)

4-8万年前に活動を繰り返して形成された倶多楽カルデラの西麓にある登別火山は地獄谷と大湯沼に集中する爆裂火口群及び日和山溶岩ドームからなる。水蒸気爆発は数百年ないし千数百年ごとに繰り返されており、最新の爆発は約200年前に起こり、噴石を放出し、泥流が紅葉谷を流下した。

 

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11 有珠山

2万年前から噴火を繰り返して成長した成層火山は7,000-8,000年前の南西方向への山体崩壊で一旦休止期に入った。1663年から再開した噴火活動では火砕流の放出や溶岩ドーム・潜在ドームの形成、水蒸気爆発による火口群の形成、顕著な地殻変動などが起こっている。噴火の間隔は20-50年程度で火口の位置は噴火の度に変わる。

 

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12 羊蹄山

5-10万年前から活動を開始した成層火山であり、45,000年前に南西方向に山体崩壊を起こし山麓に流れ山地形を作った。現在はその後成長した円錐形の山体に完全に覆われている。山頂部から北西山腹にかけて火口列があり、西山麓と北山麓に半月湖などの側火山がある。約6,000年前の山麓噴火以降噴火が起きていない。

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13 ニセコ

200万年前から繰り返されてきた火山活動で雷電山からニセコアンヌプリまでの火山群が形成された。この中でイワオヌプリは最も新しい溶岩ドーム群や爆裂火口で構成されている。最新のマグマ噴火は約6,000年前であり、現在は熱水活動が続いている。

 

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14 北海道駒ケ岳

北海道駒ケ岳は4-5万年前から活動を開始した成層火山で、火山体の崩壊とその後の火砕流を流出する軽石噴火、そして数千年間の活動休止を繰り返してきた。1640年の山体崩壊では噴火湾周辺で津波が発生し軽石噴火に移行した。1694年、1856年と1929年にも軽石噴火と火砕流発生を繰り返した。

 

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15 恵山

5万年前から活動を開始した。火砕流の発生と溶岩ドームの形成、その後水蒸気爆発を繰り返して休止期に至るというサイクルを繰り返している。恵山溶岩ドームと南及び北東の火砕流台地は約1万年前の噴火で出来た。1846年と1874年に起きた水蒸気爆発と泥流の発生以降噴火がなく、噴気活動が続いている。

 

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16 渡島大島

渡島大島は約10万年前以降に水深1,000mを越える海底から成長した成層火山である。1741年の噴火では海底部分も含めて北側に山体崩壊を引き起こし北海道西岸から津軽で2,000名を越える犠牲者がでる津波災害が起こった。引き続いた噴火で溶岩流と火砕丘の寛保岳ができた。

 

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17 恵庭岳

恵庭岳は2万年以上前に活動を開始した。初期には大きな軽石噴火があったが、その後は溶岩の流出や溶岩ドームの形成を繰り返し、山麓にはオコタンペ湖などの堰止湖ができた。17世紀には小規模な山体崩壊が起こり支笏湖に崩壊物が流入した。崩壊で生じた火口内では噴気活動が続いている。

 

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18 樽前山

9,000年前に支笏カルデラの南縁に誕生した若い活火山である。火砕流を伴う大きな軽石噴火の後、溶岩ドームの形成や破壊、水蒸気爆発を繰り返して活動が衰退し休止期に入るというサイクルを繰り返している。1667年に3回目の活動サイクルが始まった。山頂部の溶岩ドームは1909年噴火で出来た。2011年に隣接する風不死岳も樽前山の一部という扱いで活火山に含められた。

 

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19 雄阿寒岳

雄阿寒岳は阿寒カルデラの中で1万数千年前の爆発的な噴火の後溶岩流の流出を繰り返した成層火山である。阿寒湖やパンケトーの湖岸には山頂部から流下した溶岩流の先端の地形が侵食を受けずに残っている。5,000年前から1,000年前までに頻繁に溶岩流出を繰り返したことが判明した。2011年に追加指定された。

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20 天頂山

知床峠を挟んで羅臼岳と反対側にある天頂山の南側に延長1.5km余りにわたって水蒸気爆発によって形成された複数の火口列がある。最新の噴火年代が約2,000年前と判明した。2011年に追加指定された。

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21 然別火山群

然別火山群は溶岩ドームが主体の火山群である。山麓の平野部には火砕流堆積物や山体崩壊による堆積物がある。土壌の被覆が少ない溶岩ドームがあり形成年代が1万年より若い可能性があるが、噴火年代データが得られていない。

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22 トムラウシ

トムラウシは20-30万年前から活動を開始した火山で20以上の火口から噴出した分厚い溶岩流や溶岩ドームから構成されている。溶岩流の中には表面の微地形が極めて生々しいものがあり、1万年以内に噴出した可能性がある。

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23 濁川

濁川は12,000年前に火砕流を噴出して出来た直径4kmの小型のカルデラである。カルデラ内には温泉があり、地熱活動を利用した地熱発電所がある。

 

この頁の記述と画像は北海道白老町に作られた樽前山火山対策防災拠点施設の展示用に著者が提出した原稿を加筆修正したものです。

 

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