【観劇記】
最近は見る回数が減ったものの、いわゆる“小劇場の芝居”が俺の観劇の原点。400人規模の劇場で役者たちが見せる芝居は濃厚で、見る側がハマれば強烈に面白い。一時期は足が遠のいた小劇場だが、今は面白そうな演目を探し出して、時々劇場に足を運んでいる。
今回観劇した“る・ぱる”は、松金よね子、岡本麗、田岡美也子の三人からなるユニット。「ユニット」という語感からはほど遠いオバさん三人組だが、彼女たちを見始めた20年前から何ら変わらずエネルギッシュな芝居を見せてくれた。大いに笑わせしんみりともさせ、小劇場モノとはいえ、さすがに20年のキャリア。見ごたえ十分であった。
そもそも『八百屋のお告げ』というタイトルに惹かれたこの芝居。物語は、熟年離婚して子供も独立してしまったひとり暮らしの主婦・多佳子(松金よね子)が、当たると評判の八百屋に「今夜の12時で死ぬ」と予言されたところから始まる。そこへ学生時代の親友で賑やかな真知子(田岡美也子)が訪ねてくる。また同じく親友の邦江(岡本麗)が、不倫相手の男が死んだと悲しみにくれて、やはり多佳子のもとに訪れる。いきなり「死」というものが現実味を帯びるなか、イケメンのセールスマンや、多佳子と同じく死を予言された男、また多佳子たちの学生時代の憧れの男の長男までもが多佳子の家に集まってくる。そして時は刻々と12時に向かって進み、その瞬間を迎える。
死を予言された人間がどんな心理状態で時を過ごすか?といった大層なものではなく、そのジタバタばたふりが馬鹿馬鹿しく、でもその中にも人間の本心が見え隠れしていて、それはさすがに鈴木裕美の演出の上手さだなぁーと感心した。
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