【観劇記】
ブロードウェイでは2003年に開幕して、今なおチケットの取りにくいミュージカルだという。日本では今年2007年6月に開幕して、やはりチケットは取りにくいらしい。つまり人気の作品である。しかし、俺には今ひとつ魅力に欠けるミュージカルであった。
『オズの魔法使い』の前史を描いているということで、とりわけ「何ゆえに“西の魔女”は悪者となってしまったか」を描いている。西の魔女・エルファバは賢くて正義感が強く魔法の力もあるが、生まれながらの緑の肌は奇異な目で見られ、また激しい気性ゆえに周りと軋轢を起こす。時の権力はそんな彼女を“仮想敵”にしつらえ、群集を統治する。物語としては結局「そんなわけで西の魔女(エルファバ)は悪い魔女となってしまったのでした」と結ばれるが、これではあまりにも救いがないというものだ。俺は冤罪被害を見るような気がしてしまい、感動よりもやりきれない気持ちになってしまった。しかし客席には感動して泣いている人もいたので、俺の理解が間違っているのかもしれない。もっともこのミュージカルには“女の友情”という、もうひとつの縦軸があるので、そちらが琴線に触れて泣いていたのかもしれないが…。
ストーリーは俺にとって「???」であったが、ミュージカルとしての骨格は正統派なもの。きらびやかなステージ、ミュージカルらしい音楽、ダンス。特に舞台美術と照明は美しく素晴らしい。役者はエルファバを演じた濱田めぐみが頭ひとつ抜きん出ている感じで、歌、芝居ともに申し分なし。もうひとりの主役・グリンダを演じた沼尾みゆきは美しいソプラノで魅了するが、芝居は劇団四季の独特の発声法が悪い方に転んでいる気がする。『オズの魔法使い』というやや子供的な世界観だけに、学芸会的な味わいを随所に感じてしまった。
今回は開幕して二ヶ月足らずでの観劇だったのだが、世間の評判と自分の感想があまりにも違うので(そんなことはよくあるが)、もういちど観劇して『ウィキッド』の世界を再度楽しんでみたいと思う。
|