『CATS』大阪公演千秋楽

 22ヶ月のロングランを達成して、『キャッツ』の大阪公演が千秋楽。85年、92年に続いての三演目の大阪公演により、東京を抜いて最も上演回数の多い都市が大阪になったそうです。そんなに『キャッツ』を好きだったのか、関西人は…と思わなくもないけれど、大阪人としては何故か嬉しかったりする。場所のことはまぁ置いといて、日本での上演回数はなんと通算5400回を越えているんだとか。もうこうなりゃ大阪人がなんて言ってる場合ではなく、日本人が『キャッツ』好きなんですね。俺もなんだかんだで観た回数なんて、正直わかりません。もう総額いくらつぎ込んだかというほど。

 この作品を初めて観た時の印象は、「素晴らしい!」というものでは決してなかったのです。しかし何故にそんなに人気があるのかが知りたくて、2度3度と劇場に通いました。『キャッツ』に関する文献、新聞の記事も集められるだけ集めて読み漁りました。それでなんとなくこの作品の良さも見えてきたのですが、良さを知ろうとして知る面白さは感動にまでは繋がりません。そうこうしている内に92年の大阪公演は千秋楽を迎えたのです。
 一昨年に開幕した今回の大阪公演は、全く新しい演出の『キャッツ』でした。開幕早々から観始めたのですが、自分でもびっくりするくらい感動しました。ドラマ性が前面に押し出されていたことや、猫が猫らしく見える動きも、素晴らしかった。でも感動に結びついたのは、恐らく作品のビッグ・ナンバー「メモリー」の歌詞が理解できたからなのかもしれない。10年前には「いい歌だなぁ」としか思わなかったのが、10年間で年を取ったせいか?しみじみ身に染みたのです。もちろんこれは俺の個人的な見解に過ぎませんが、『キャッツ』のあってないような物語、ないようできっちりと語られている物語のテーマは、この「メモリー」にすべて集約されているのですね。猫の話でありながらも、つまりは人生讃歌なんだと。もっこりタイツがどうだとか、ある意味、作品を侮辱するようなクイズ企画を立てた者が言うのもナンですが(笑)、『キャッツ』を観ると「人生は素晴らしい」と思えて心が晴れ晴れします。本当に何度でも観たいミュージカル、それが『キャッツ』です。

 さて、千秋楽。俺は約8ヶ月ぶりに観たのですが、作品は最高レベルまで熟練されていました。歌もダンスも素晴らしい。どの役者ひとりとして、ケチのつけようがありません。ここまで成長したのかと驚くほどでした。こういう成長が見られるのも、ロングラン作品ならではですね。ところで千秋楽と言えば、特別カーテンコール。どんなものであったかを記憶の限り、ここで紹介しておきましょう。記憶違いがあったらごめんなさい。今回は通常のパターンをこなした後、代表的ナンバーの一部分がコラージュされた音楽(録音モノ)が流れる中、入れ替わり立ち代り猫たちが舞台上に登場します。そして劇団四季の特別カーテンコールではおなじみのレーザー光線が様々なメッセージを描き出したのち、順次猫たちが1匹ずつ名前と共に紹介されるというものでした。客電が点いた後も、2度3度とキャスト全員が舞台で挨拶をし、最後は「See you again」の文字を舞台に残して本当にジ・エンド。終演後の客席では泣いてる人たちやロビーで記念撮影する人などもいて、千秋楽に相応しい光景を目の当たりにしました。

 明日からはこのキャッツシアターも次の『CONTACT』に向かって改修作業が始まるだろうし、街のいたるところで見かけた看板やポスターももうありません。この「王子の雫」とほぼ同時期に始まった『キャッツ』大阪公演。皆さんには「そんな大層な!」と思われることですが、俺の中では密かに“共に歩んできた感”もあったりして、そう思うと寂しい限りです。
 猫たちが次に現れる場所は静岡。静岡市民文化会館大ホールにて4/29に開幕です。チケットは6/22公演分まで2/15に発売されるそうです(四季の会は2/8〜)。近くの方は是非ご覧なってみては?因みに通路側の席を購入すると、猫と握手できる確率が高いですよ(←100%ではありません…念のため)