パナマ・ハッティー

 
音楽=コール・ポーター
作詞=コール・ポーター
ルビ吉観劇記録=2002年(東京)
【このミュージカルについて】
日本ではほとんど知られていなかったミュージカルと言っていいでしょう。音楽資料も乏しいらしく、パンフレットなどにも、1940年に初演ということ以外にこれといった解説がない。専門誌にかろうじて初演はエセル・マーマンが主役を務めたことや、劇中歌の「レッツ・ビー・バディ」がヒットしてエラ・フィッツジェラルドなどがレコーディングしたことが記されています。
【物語と見どころ】
舞台は南米パナマ。そこに住むハッティー(大地真央)は、皆から人気の、底抜けに明るいショー・ガール。彼女が突然、仕事を辞めると言い出したから大騒ぎ。理由は「恋をしたから」。恋の相手はパナマ運河で働く血筋のいい、しかし子持ちのニック(今井清隆)。結婚を前に、ハッティーは娘・ジェリーを紹介されることに。娘に気に入られなければと張り切り、ドレスを新調して会いに行く。しかしジェリーの第一声は「ヘンな服」。しかもジェリーを連れてきた執事(草刈正雄)までが「罰ゲームかなにかですか?」と。そう、彼女は美人で性格も明るく人気者だが、唯一欠点があった。服のセンスが最悪なのだ。子供相手にマジ切れしてしまったハッティー。いきなり前途多難の気配。
ふたりの結婚の妨げになるのはジェリーだけではない。ニックに猛烈なアタックを繰り返すリーラ(堀内敬子)も、ハッティーの悩みの種。リーラは良家の子女で、常識すら欠ける無教養なハッティーとは大違い。しかもこのリーラ、根性がかなり悪く、あの手この手でハッティーとニックの間を裂く策略を仕掛けてくる。
ふたりの手ごわい女を相手に、ハッティーは果たしてニックと結婚できるのか??パナマの町ではハッティーがジェリーとリーラを相手に今日も大騒ぎ!!

と、まぁ、こんなストーリー。最初から最後までバカ騒ぎの連続で、それはもうウンザリするほど(笑)。ミュージカル界きってのコメディエンヌ・大地真央だからこそ、かろうじて最後まで見られるというもの。内外問わず、主演のハッティー役はかなり限られた女優しか出来ない作品と見ました。
見終わった後に決して満足感が得られないワケではないが、「何を見せられたんだろう?」という疑問が残るミュージカルです。が、そこは制作者もよく考えたものです。本編の上演が終わった後に、なんと大地真央のレビューが始まるのです。そんなタカラヅカじゃあるまいし(笑)。南国ムード溢れるショーは、どこか海外のリゾート地の大型ホテルで毎夜上演してそうな“トロピカル・ショー”といった感じ。もちろん羽飾りは必デス(笑)。また音楽などはオリジナル曲だけでは満足させられないと踏んだのか、コール・ポーターの他の作品のヒット曲「ビギン・ザ・ビギン」「ナイト・アンド・デイ」を無理矢理加えてます。レビューといい音楽といい、このやり方ってテレショップで何か買ったらオマケでもう一品ついてくる…っていう方式ですな。俺もよくわからんけど「12,000円分の何かを見せてもらった」というギリギリの満足感だけは得られました。そんなことで、見どころは「なし」!敢えて言うなら「全部」。
【ルビ吉の好きなシーン、好きなナンバー】
■♪来たれ、パナマへ
原題は不明。劇中繰り返し使われる曲で、唯一印象に残った曲。
■ハッティーがジェリーと初めて会うシーン
この作品で、俺が気に入ってる設定があるとすれば、ハッティーが史上最悪のファッション・センスとしているところ。服装のセンスが悪いということが、ストーリーを引っ張るなどとは思ってもみませんでした(笑)。
■ハッティーとジェリーが仲良くなっていくシーン
もともとジェリーはハッティーのことが嫌いというわけではない上にジェリーの方が精神的に年上なので、この2人は割とすぐに仲良くなる。で、このシーンは、ジェリーがハッティーの服をセンスよく改造してあげたり、挨拶の仕方を教えてあげるという、母娘の立場を逆にしたやり取りがほのぼのとした笑いを誘う。
【ルビ吉の俳優雑感】
大地真央(ハッティー・マロニー)…言う事ありません。彼女なくしてこの作品はあり得ない。というか大地真央が出演していなければ、このミュージカルは成立しない。コメディー・センスも抜群。なんと言っても「間」の取り方が、そこいらの芸人よりはるかに上手い。ただ歌はまったくダメです(笑)。雰囲気のある歌唱なんだけど、上手くはない。まぁ、それでも大地真央が歌うというだけで、許されるような気もしますが…。
草刈正雄(ヴィヴィアン・バド)…チラシの写真では2番目の大きさで写ってたから、役もそれなりに大きいのかと思えば…。「出てたっけ?」という印象の無さ。ボソボソとした喋りは健在で、独特の歌い方は何を言ってるのかさっぱりわからん。しかしそれも今回は、ストーリーに影響を及ぼさない役どころなので問題はない。
今井清隆(ニック・バレット)…抜群の歌唱力。しかし印象は薄し!
堀内敬子(リーラ・トゥリー)…良家の子女で根性悪という役柄。ぴったりじゃないですか!(笑) 劇団四季にいた頃から、ロリコン好みの幼い顔立ちの下に隠されているであろう計算高さのようなものを俺は感じていました(笑)。

※おまけ…最近とみにカッコよくなった吉野圭吾クン。ルビ吉の割とお気に入り(笑)。